「ドライガーデン」とはその名の通り、サボテンや多肉植物の様に乾燥に強い植物で統一したガーデニングスタイルのことで、砂利や石をあしらって植栽した今人気のガーデンスタイルです。この記事では、「ドライガーデン」の説明の前に、「高木」などの木の高さの区分や、そもそも日本のお庭に植えることは可能なのかなども解説。そしてドライガーデンにぴったりな「高木」を15種類選んでご紹介します。高木を効果的に活かせれば、ほれぼれするドライガーデンになること間違いなしです!
高木と低木はあまり変わらない?
それはプロのチョイスと剪定のたまもの!
ドライガーデンにぴったりな高木15選
①オリーブ
②カナリーヤシ
③イタリアンサイプレス(細糸杉)
④ユッカ・ロストラータ
⑤ブラシノキ(カリステモン)
⑥わい性タイサンボク「リトルジェム」
⑦ギンヨウアカシア(ミモザ)
⑧シュロ(棕櫚)
⑨モンキーパズルツリー(チリマツ)
⑩ワシントンヤシモドキ
⑪ナツメヤシ
⑫ココスヤシ
⑬鬼面角(柱サボテン)
⑭ユーカリ・ポポラス
⑮ユーカリ・グニー
ドライガーデンにぴったりな高木をシンボルツリーにしよう!
ドライガーデンにぴったりな高木とは?
まず「ドライガーデンにぴったりな高木」の「高木」とは、どういう定義の植物のことでしょうか?
樹高により一般的に「高中木(3~5m)」「中低木(1~3m)」「低木(~1m)」と区分されることが多くあります。
これに照らし合わせて「ドライガーデンにぴったりな高木」というのは、
高さが3m以上に生長するもの
乾燥に強く、基本的に水管理が不要
日本の気温(特に最低気温)や湿度に耐えられる
ということになります。
植物選びは大変重要で、慎重に行わねばなりません。
高木と低木はあまり変わらない?
「雪ツバキ」や「マルバノキ」などの樹木は「低木」に分類されます。1~2mといえば、人間から見たら「低木」でさえ大きく見えます。それなら「高木」は、いったいどれほど大きいのでしょう?身近な高木を例に挙げると、皆さんがよく知っている「梅」や「ヤマボウシ」などが高木の区分です。「あれ?高木と言ってもあまり高さが変わらないような…」と思いませんか?
それはプロのチョイスと剪定のたまもの!
本来、自然に自生する「ウメ(梅)」や「ヤマボウシ」などは、放っておくと10mにも大きくなります。10mを例えると、大きな電信柱や、マンションの4階の床くらいの高さです。そんなに大きな樹木は、公園かよほど広い庭でないと植栽できませんよね。
しかし、一般住宅のシンボルツリーとして「ウメ(梅)」や「ヤマボウシ」を庭でよく見かけるのはなぜでしょう。そんなに大きく成長したシンボルツリーは滅多にみかけませんよね。それは、もともと程よいサイズの「若い個体」をチョイスして植栽しているからです。あまり伸び過ぎない種類を選んだ上で、年に1~2回の適切な剪定を行えば、低木と同じくらいの大きさを保つことが可能なのです。
ドライガーデンにぴったりな高木15選
樹木のチョイスや剪定などの手入れ次第で「高木」でも一般の庭に植えられることが分かったところで、「ドライガーデンにぴったりな高木」を紹介します。「うちの庭は狭いから…」と諦めてしまわないでくださいね。適切な管理をすれば憧れのシンボルツリーも叶わない夢ではありません。
①オリーブ
■学名:Olea europaea
■科属名:モクセイ科オリーブ属(常緑樹)
■開花時期:初夏
■収穫:10~11月(雌雄同株・他家受粉のほうがよい)
■樹高:5~10m
■原産地:地中海沿岸、小アジア
■耐寒性:-3℃
■耐陰性:日向を好みます
「オリーブ」は、なめし皮のような質感の細長いシルバーリーフの雰囲気が良く、異国情緒を感じるような樹木。オリーブの寿命はなんと1千年以上と言われています。アルカリよりの土壌を好むので、植え付け前に苦土石灰(くどせっかい)という土のアルカリ性を強める肥料を施します。オリーブといえば「オリーブオイル」や「塩漬け」にできる楕円形の実ですが、オリーブはもう一本植えないと実がならない(自家不結実性)ので、シンボルツリーとして一本だけ植栽する場合は実の収穫は期待しないほうがよさそうです。
②カナリーヤシ
■学名:Phoenix canariensis
■科属名:ヤシ科フェニックス属(常緑樹)
■開花時期:5~6月
■樹高:3~15m
■原産地:アフリカ カナリア諸島
■耐寒性:-6.5℃
■耐陰性:日向を好む
「カナリーヤシ」は、カナリア諸島原産の南国ムード満点のヤシの木ですが、関東の寒い冬にも耐え、地植えも可能な種類でドライガーデンのシンボルツリーによく合います。春か秋に植え付けた後、数ヶ月は水やりをしますが、一旦根付けば雨水だけで十分育ちます。秋には実がなりますが食べられません。熟した実が下に落ちてくるので、周辺に車などを置かないよう、配慮が必要かもしれません。
③イタリアンサイプレス(細糸杉)
■学名:Cupressus sempervirens
■科属名:ヒノキ科ホソイトスギ属(常緑針葉樹)
■開花時期:3~6月
■樹高:10~45m
■原産地:南ヨーロッパ、中近東、地中海沿岸
■耐寒性:-15℃
■耐陰性:日向を好む
細長いロケット形の樹形と、青味がかった細葉が美しい「イタリアンサイプレス」は常緑針葉樹です。針葉樹らしいスーッとした森林の香りがします。ゴッホの絵画「糸杉」のモデルでもあり、ノアの箱舟を造るのに使われたという伝説もあるそうです。ドライガーデンのシンボルツリーにするとロマンチックですよね。わい性品種の「グラウカ」や、黄金葉の「スウェンズゴールド」などが人気の種類です。
④ユッカ・ロストラータ
■学名:Yucca elephantipes
■科属名:リュウゼツラン科ユッカ属(常緑樹)
■開花時期:5~10月(滅多に咲かない)
■樹高:5~6m
■原産地:メキシコとアメリカ南部
■耐寒性:-10℃
■耐陰性:半日陰~日向を好む
「ユッカ・ロストラータ」はユッカ類の中でも葉が細く、丸いフサフサの葉っぱはシルバー掛かってクールなのが特徴です。ユッカ・ロストラータは「エレファンティペス(青年の木)」同様、風水的にも縁起が良く、「仕事運」や「成功運」が上がるため、新築祝いや開業祝などに贈られることがあります。室内で育てる観葉植物のイメージですが、寒さに強いので日本の屋外でも十分育ち、本来は10m以上にもなる高木です。ユッカの中でも耐寒性が高く、雪が降っても平気なのがうれしいですね。安心して日本の冬を越せそうです。
⑤ブラシノキ(カリステモン)
■学名:Callistemon
■科属名: フトモモ科ブラシノキ属(常緑樹)
■開花時期: 5~6月
■樹高:3~5m
■原産地: オーストラリア東部
■耐寒性: -10℃
■耐陰性: 半日陰~日向を好む
「ブラシノキ(カリステモン)」はオーストラリア原産のカリステモンは、花の形が、ボトルの中を洗うブラシに似ていることから「ボトルブラッシュ」と名付けられ世界で愛されています。オーストラリア出身なので寒さにそんなに強いわけではありませんが、関東以西であれば、地植えも可能です。ブラシノキ(カリステモン)の仲間は3~5mが一般的ですが、クリーム色の花を咲かせる「シロバナブラシノキ」は5~12mにもなる高木です。
⑥わい性タイサンボク「リトルジェム」
■学名:Magnolia grandiflora ‘Little Gem’
■科属名:モクレン科モクレン属(常緑樹)
■開花時期: 6~11月
■樹高:10~20m(リトルジェムは3~5m)
■原産地: 北アメリカ
■耐寒性:-7℃
■耐陰性:半日陰~日向を好む
タイザンボクは本来20mにも成長する高木ですが、そのわい性品種「リトルジェム」は、3~5mくらいに成長する樹種で、耐寒性、耐暑性に優れていることから日本の一般的なお庭でも育てやすい品種です。またタイザンボクよりも小さい若木のうちから花を咲かせるので、庭木にぴったりの品種です。よい香りのする白い花は四季咲き性で、6月頃から晩秋まで返り咲きします。この香りは「マグノリア」の香水の原料にもなっています。ただし成長は早いので庭木にするならこまめな剪定が必要です。
⑦ギンヨウアカシア(ミモザ)
■学名:Acacia baileyana
■科属名:マメ科アカシア属(常緑樹)
■開花時期:2月~4月
■樹高:3~10m
■原産地:オーストラリア南東部
■耐寒性:-5℃
■耐陰性:日向を好む
「ギンヨウアカシア」はその名の通り、銀色の小さな羽根のような葉と、小さくてふわふわした優しいイエローの花を無数に咲かせるアカシアの一種です。通称の「ミモザ」のほうが馴染みのある名前かもしれませんが、正式名称はギンヨウアカシアと言います。オーストラリア原産なので乾燥に強く、荒地でも良く育ちます。根付いたら水やりは必要ありませんので、ドライガーデンにもぴったりです。ただし強風に弱いので、台風の前などには養生をしてください。
⑧シュロ(棕櫚)
■学名:Trachycarpus fortunei
■科属名:ヤシ科シュロ属(常緑樹)
■開花時期:5~6月
■樹高:3~7m
■原産地:日本、中国南部
■耐寒性:-15℃
■耐陰性:半日陰を好む
「シュロ」は日本にも自生しているヤシの木なので、耐寒性に優れ、地植えも可能です。皮の繊維はたわしやシュロ縄などに利用されます。日本原産の「ワジュロ」と、中国原産の「トウジュロ」は違うものなのですが、混同されてどちらも「シュロ」の名前で販売されている場合があります。見分け方は、ワジュロは葉の部分が長く柔らかに垂れ下がり、トウジュロは葉がコンパクトで固く上に向かって伸びているのが特徴です。シュロは、若木(庭に植えられるサイズ)のうちは直射日光を嫌います。北側の庭など、日陰や半日陰の場所に植えましょう。
⑨モンキーパズルツリー(チリマツ)
■学名:Araucaria araucana
■科属名:ナンヨウスギ科アローカリア属(常緑針葉樹)
■開花時期:不明
■収穫時期:4月~6月(雌雄異株)
■樹高:30~40m
■原産地:ブラジル、チリ、アルゼンチン
■耐寒性:-15℃
■耐陰性:日向を好む
「モンキーパズルツリー」は、イチョウ等と同様に生きた化石のひとつです。学名の「アローカリア・アローカーナ」で販売されることもあります。幹や枝に針葉樹らしい針状の葉を張り巡らせた、個性的な姿で枝を横に伸ばして分岐するので、まるでサボテンのような風貌。若いうちは円錐形の樹形ですが、成長するにつれ傘状に生長します。樹齢30年を超えると実がなり、松の実として食用になるユニークな高木です。
⑩ワシントンヤシモドキ
画像出典:Flickr(Photo by:J Brew)
■学名: Washingtonia robusta
■科属名:ヤシ科ワシントンヤシ属(常緑樹)
■樹高:20~30m以上
■開花時期:7~9月
■原産地:アメリカ南西部,メキシコ
■耐寒性:-6℃
■耐陰性:日向を好む
「ワシントンヤシモドキ」という名前を聞いて、なぜ「ワシントンヤシ」じゃだめなの?と思う方もいるかもしれません。今回「ワシントンヤシ(フィリエラ)」の「もどきの方(ロブスタ)」をおすすめする理由は、以下の点にあります。まず、「モドキ(ロブスタ)」のほうが、幹が細くて、株元の基部が膨らんでいる姿をしているので、見栄えがしておしゃれです。そして葉が落ちるときに葉柄の基部を残して落ちるので、幹が斜めの格子状のレリーフになるのも素敵。耐寒性はワシントンヤシのほうがやや寒さに強いようです。
⑪ナツメヤシ
■学名:Phoenix dactylifera
■科属名:ヤシ科ナツメヤシ属(常緑樹)
■開花時期:3~6月
■収穫時期:10月(雌雄異株)
■樹高:15~30m
■原産地: 北アフリカ、西南アジア。ペルシャ湾沿岸
■耐寒性:-9.4℃
■耐陰性:日向を好む
「ナツメヤシ」は不死鳥が羽を広げたような姿のムードのあるヤシの気です。実は「デーツ」と呼ばれ栄養価が高いのが特徴です。ナツメヤシは「雌雄異株」なので雄木と雌木がないと実はなりませんが、植える場所に余裕があれば収穫も夢ではありません。生食でも食べられますが、スムージーにしたり、刻んでパウンドケーキに入れたりと、レシピは豊富なのでお試しあれ。
⑫ココスヤシ
■学名:Butia yatay
■科属名:ヤシ科ブラジルヤシ属(常緑樹)
■開花時期:7~8月
■収穫:9月(雌雄同株)
■樹高:5~6m
■原産地:アフリカ西海岸、カナリア諸島
■耐寒性:-9℃
■耐陰性:日向を好む
「ココスヤシ」は別名「ブラジルヤシ」または「ヤタイヤシ」と呼ばれます。比較的小ぶりなヤシなのでおすすめです。名前は似ていますが、リゾート地で見かけるラグビーボールのようなヤシの実がなる「ココヤシ」とは違う種類です。秋には小ぶりな丸い実がなります。気になるお味は、酸味がありパイナップルのよう。生食やジャムにして楽しめるそうです。育ててみないと分からない味覚ですね。
⑬鬼面角(柱サボテン)
■学名:Cereus hildmannianus
■科属名:サボテン科ケレウス属(常緑樹)
■開花時期:7~10月
■樹高:最大10m
■原産地:ブラジル、アルゼンチン
■耐寒性:‐6.6℃
■耐陰性:日向を好む
まるで西部劇の世界のような「柱サボテン」の中でも「鬼面角」は日本でも比較的入手しやすいのでドライガーデンに取り入れやすい植物です。小さな鉢植えの観葉植物で販売されていますが地植えで生長すれば10mにもなる高木で、インパクトがあります。トゲがあるので人の動線から離して植えるとよいでしょう。
⑭ユーカリ・ポポラス
■学名:Eucalyptus polyanthemos
■科属名:フトモモ科ユーカリ属(常緑樹)
■開花時期:4~5月
■樹高:5~20m
■原産地:オーストラリア
■耐寒性:-6℃
■耐陰性:日向を好む
「ユーカリ・ポポラス」の特徴は、何といってもシルバー掛かったかわいらしい「丸い葉っぱ」です。ほかのユーカリは葉が細めなのですぐに見分けがつきます。そのほかにも、葉の香りが穏やかなことや、葉の付き方がランダムで、葉が規則的に生える他のユーカリとは雰囲気がだいぶ違います。そして、まるで果実のように見えるつぼみは「ポポラズベリー」と呼ばれ、かわいらしい印象に。ユーカリ・ポポラスは、男性的になりがちなドライガーデンに、優しい雰囲気をプラスできる樹木ではないでしょうか。
⑮ユーカリ・グニー(グニユーカリ)
■学名:Eucalyptus gunnii
■科属名:フトモモ科ユーカリ属(常緑樹)
■開花時期:9~10月
■樹高:5~20m
■原産地:オーストラリア、ニュージーランドなど南半球
■耐寒性:-10℃
■耐陰性:日向を好む
ユーカリ・グニ―はユーカリポポラスと同じくシルバーがかった丸い葉が優しい印象で、清涼感のある香りの強い樹種で、庭木としても人気の樹種です。夏の日差しにも強く、ユーカリの中では湿度にも強い方ですが、基本的には日当たりよく水はけの良い場所で育てましょう。地植えの場合は水やりはほとんど必要ありません。
またユーカリ・グニーは非常に成長の早い樹種なので、定期的に剪定することで樹形と樹高を保つ様心がけましょう。
ドライガーデンにぴったりな高木をシンボルツリーにしよう!
ドライガーデンにぴったりな高木をご紹介しました。「サボテン」や「ヤシ」のほか、近年人気が高まっている「オージープランツ(オーストリアンプランツ)」もありましたね。生長すると10m以上になる「高木」に分類されるものでも、樹齢サイズの選び方や、剪定などの維持管理次第で「高木」でも庭木に利用できることが分かったので、一般住宅でも心配はいりません。
ご紹介したドライ系の植物は基本的に関東以西の暖地なら耐えられる耐寒性を持ち、乾燥に強い種類が多いので、一度根付いてしまえば雨水だけで生きていけるのでメンテナンスも楽なことから人気の理由もうなずけますね。
なお、高木の植栽は、小さな苗を買って植える方法もありますが、ある程度の見栄えのよいサイズを植えるならクレーン車などでの作業となります。
また維持管理のための定期的なメンテナンスも含めて、植物に精通した信頼できる庭エクステリア専門のスタッフとしっかり話し合い、お気に入りの樹種を選んで素敵なドライガーデンライフを叶えてくださいね。
2024年1月26日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎