花も葉の香りも楽しめるオージープランツ|【レプトスペルマム】の育て方のコツをプロの庭師が伝授します
人気のオージープランツ(オーストラリアンプランツ)のひとつ、「レプトスペルマム」。
実はレプトスペルマムと言っても、鮮やかな花が魅力のギョリュウバイ、良い香りのするティーツリー、マヌカハニーの蜜源であるマヌカの木など、さまざまな品種と名称があります。ここでは基本の育て方や剪定のコツとともに、混同されがちなレプトスペルマムの種類や名称の違いもまとめてみました。どれも丈夫で育てやすく、さまざまに楽しめる魅力があっておすすめです。
目次
レプトスペルマムの基本情報
レプトスペルマムの特徴
レプトスペルマムの名前と分類
↳レプトスペルマムの和名
↳ティーツリーという名称
レプトスペルマムの主な品種
↳レプトスペルマム・スコパリウム(Leptospermum scoparium)/マヌカ
↳レプトスペルマム・スコパリウム(Leptospermum scoparium)/ギョリュウバ
↳シルバーティーツリー(Leptospermum brachyandrum)
↳レモンティーツリー(Leptospermum petersonii)
レプトスペルマムの育て方
レプトスペルマムの病気と害虫
レプトスペルマムの剪定方法
レプトスペルマムの増やし方
まとめ
レプトスペルマムの基本情報
分類:フトモモ科レプトスペルマム(レプトスペルムム/ギョリュウバイ)属
学名:Leptospermum
英名:Leptospermum
和名:ギョリュウバイ
別名:ネズモドキ、ティーツリー、ニュージーランドティーツリー、マヌカ
原産地:ニュージーランド、オーストラリア南東部、マレー半島
樹高:1〜3m(品種による)
葉張り:1〜2m前後(品種による)
常落区分:常緑低木
耐寒性:-5〜0℃前後(品種による)
耐暑性:強い
開花期:11〜6月(品種による)
花色:白、ピンク、紅など
用途:庭木、ハーブ
剪定時期:5〜6月
花言葉:蜜月、華やいだ生活、素朴な強さなど
レプトスペルマムの特徴
ニュージーランドの国花でもあるレプトスペルマムは、フトモモ科の常緑低木で、マヌカハニーの蜜源としても有名です。種類も50種ほどあり、古くから多様に利用されてきたために呼称や名称がさまざまで、他の植物と混同されたりもします。原産地は、オーストラリアの中でも比較的日本の気候と近い南東部のため、日本でもなじみやすく丈夫で育てやすい特徴があります。
耐寒性と耐暑性
暑さには比較的強いのですが、日本の多湿にはやや弱く、枝葉が密集しやすいので蒸れには注意が必要です。耐寒性は−5℃前後で、地植えは関東以南がおすすめです。霜が降りる日が続くような地域では、鉢植えで管理し、冬は室内や軒下に取り込みます。また品種によっては耐寒温度が0℃前後のものもあり、関東でも鉢植えでの管理がおすすめです。
レプトスペルマムの名前と分類
レプトスペルマムの和名
日本では、主にレプトスペルマムの品種のひとつである「レプトスペルマム・スコパリウム(Leptospermum scoparium)」を指して「ギョリュウバイ」と呼びます。
中国北部を原産とする落葉小高木「ギョリュウ(Tamarix chinensis)」に似た葉と、ウメのような花を持つことからつけられました。レプトスペルマム全体の和名もギョリュウバイで、属名はギョリュウバイ属と表記されることも多いです。
また、葉がヒノキ科の「ネズ(Juniperus rigida)」に似ていることから、「ネズモドキ」という和名もあり、ネズモドキ属と表記されることもあります。
ティーツリーという名称
イギリスの探検家・キャプテンクック一行により「先住民のアボリジニがその葉を煎じて飲んでいるのを見て飲んでみた」という話が有名な「ティーツリー」という名称ですが、現在の日本ではティーツリーというとフトモモ科メラレウカ属の総称として用いられ、その中でも特に「メディカルティーツリー(Melaleuca alternifolia)」のことを指します。抗菌作用があり、主に精油などに用いられます。
ですが、メディカルティーツリーがお茶として飲用されることは現在ではほとんどありません。クック一行の話に登場する「ティーツリー」には数種類あって、お茶にされたのはレプトスペルマムの仲間だったのではないかと言われています。そのため、レプトスペルマムの仲間にも「ティーツリー」という名称がつく品種がみられます。メラレウカ属とレプトスペルマム属は細い葉が似ていますが、花の形や含まれる成分などに違いがあります。
レプトスペルマムの主な品種
レプトスペルマム・スコパリウム(Leptospermum scoparium)/マヌカ
原産地ではレプトスペルマム・スコパリウムというと、白色の一重咲きが主流です。葉が細く、先端が尖っているのが特徴的です。原産地でマヌカハニーの蜜源となっている原種の白花一重咲き品種は、マヌカ、マヌカの木などと表記されて出回ります。耐寒性は−5℃前後と、比較的耐えます。香りは強くありませんが、葉はハーブティーにも利用できます。
レプトスペルマム・スコパリウム(Leptospermum scoparium)/ギョリュウバイ
日本では明るい紅色やピンクの八重咲きなどのスコパリウムの園芸品種が、主にギョリュウバイという表記で販売されます。流通量も多く、早春にホームセンターなどによく並びます。11月~5月頃まで長く花が楽しめ、花つきもよく華やかです。ブロンズ葉の品種などもあります。耐寒性も−5℃と比較的強く、暖地では丈夫で重宝する庭木です。園芸種は主に花を鑑賞し、香りはあまりなく、ハーブティーなどにはあまり利用されません。
シルバーティーツリー(Leptospermum brachyandrum)
枝が柔らかく伸びるので、シルバーウィーピング(しだれる)ティーツリーとも呼ばれます。手触りも色合いも柔らかいシルバーリーフで、5〜6月頃に小さめの白い一重の花が咲きます。耐寒性は-5℃程度とやや強く、ある程度の霜や雪に耐えられ、半日陰にも耐えます。幹が太くなりにくく、そよそよと涼しげな樹姿が魅力です。成長が早く、樹高が2〜3mと高くなってシンボルツリーにも向いています。香りがあり、ハーブティーにもできます。
レモンティーツリー(Leptospermum petersonii)
葉を揉むとレモンの香りがするレプトスペルマムです。レモンセンテッドティーツリーとも呼ばれます。精油として利用されるほか、ハーブティーとしても楽しめます。この香りには蚊の嫌がるシトラールという成分を含むので、蚊除け成分として用いられることもあります。こちらも成長が早く、樹高が2mほどと高くなるのでシンボルツリーにもおすすめです。ただしレプトスペルマム・スコパリウムやシルバーティーツリーの品種よりやや寒さに弱く、0℃前後です。暖地以外では鉢植えでの管理が良いでしょう。
レプトスペルマムの育て方
水やり
オージープランツ(オーストラリアンプランツ)は乾燥に強いとは言いますが、レプトスペルマム属はオーストラリアの中でも湿潤な東部原産が多く、水が好きです。
特に開花中は水をたくさん欲しがります。鉢植えを持ち上げて軽くなってきていたら、鉢の下から水が出てくるまでたっぷりと水やりします。夏は暑くなる前の朝・涼しくなった晩の2回、冬は土の乾き具合を観察しながら1〜3日に1回、暖かい午前中に水やりしましょう。
日当たりと置き場所
日当たりが良い場所を好みます。夏の西日が当たらない場所が適しています。
またオージープランツ(オーストラリアンプランツ)は日本の高温多湿に弱いので、風通しの良さも大切です。
レプトスペルマムは葉が細かく密集しがちなので、蒸れには特に弱い性質があります。冬などに室内に取り込む場合やベランダなどで育てる場合、サーキュレーターなどで空気を循環させるのも効果的です。
肥料
基本的にあまり肥料を必要としません。あげる場合は、真夏を避けた春~秋の生育期に薄めた液肥を施します。多肥を好まないので、様子を見ながら少しずつ与えてみてください。
植え付けと植え替え
花が終わって剪定する春〜梅雨頃が適期です。根を触られるのが苦手で、植え替えたら枯れてしまったというケースも多くみられます。できるだけ根鉢を崩さないようにしましょう。ですがどうしても根を多少触ってしまうので、一緒に地上部も少し剪定してあげると株の負担を減らせます。
ただ成長が早く、鉢植えでは根詰まりを起こすことも多いため、根の様子をみながら植え替えをしましょう。
レプトスペルマムの病気と害虫
目立った病害虫はなく、丈夫です。特にレモンティーツリーはむしろ蚊を寄せつけないともされています。ギョリュウバイにはミノムシがつくことがあるので注意しましょう。また、どの種も枝が混み合うとカイガラムシなどがつくことがあります。
レプトスペルマムの剪定方法
適期は花後の春〜梅雨頃です。夏には花芽をつけるので、8月以降はなるべく剪定しないようにしましょう。萌芽力が強く、剪定しやすい植物です。
レプトスペルマムはどれも枝が混み合いやすいので、透かし剪定を行います。蒸れると内側から枯れ込むことがあり、夏前に風通しをよくする透かし剪定を行っておくことで暑さ対策にもなります。
透かし剪定のコツ
まず内側に向いた枝や、交差している枝などを根本からカットします。株の中にも風が通るようなイメージで、重なり合った枝や混み合った枝を切り取りましょう。このとき、株全体が同じような太さの枝になるように選んで剪定すると、バランスの良い形になります。極端に太い枝や、特に勢いのよく伸びている枝などもカットしましょう。
切り戻し剪定のコツ
大きくしたくない場合は、1/3ほどの大きさに切り戻すと良いでしょう。
また、若木で枝数が少ない場合にも、切り戻しは有効です。新芽が出て枝数が増え、樹形もよくなり育てやすくなります。特にシルバーティーツリーやレモンティーツリーは枝が柔らかく細めなので、切り戻すことで主幹を太くさせる効果もあります。
レプトスペルマムの増やし方
どの種類も挿し木で増やせます。暖かくなってくる春が適期です。その年に出た枝を15cmほどにカットし、下の葉を取り除いて挿し穂を作ります。切り口に発根剤などを塗り、鹿沼土などの用土に挿します。発根するまでは土を湿らせた状態に保ちます。
まとめ
名前や種類がいっぱいある「レプトスペルマム」ですが、その魅力もいろいろ。どの種も常緑で、香りのある美しい葉が一年中楽しめ、花も長く鑑賞できるというスグレモノです。
ここでご紹介した以外のレプトスペルマムもまれに園芸店やオージープランツ(オーストラリアンプランツ)を扱うオンラインショップなどに出回ることがあります。ぜひ用途や鑑賞目的に合わせて、お気に入りのレプトスペルマムを見つけてみてくださいね。
2024年1月26日
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎