カキノキ(柿の木)の木の剪定
寒さにも暑さにも強く、日本の環境下で育てやすい家庭果樹としておすすめの、カキノキ(柿の木)の剪定に失敗しないために、庭.proの庭師が剪定方法をレクチャーいたします。
カキノキ(柿の木)は12月~2月頃が剪定時期です。カキノキ(柿の木)は環境によっては大木に育つため、脚立を使用せずに実を収穫したい場合には仕立て方を工夫し、毎年必ず剪定を行う必要があります。
この記事では、カキノキ(柿の木)の剪定方法や基本の育て方などをご紹介します。ぜひ参考にしてくださいね。
目次
カキノキ(柿の木)の基本情報
カキノキ(柿の木)の特長
カキノキ(柿の木)の剪定のタイミング
カキノキ(柿の木)を剪定をするメリット
カキノキ(柿の木)の剪定方法
カキノキ(柿の木)の育て方
カキノキ(柿の木)の病害虫
↳落葉病
↳炭そ病
↳カキノヘタムシガ
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
カキ(柿)の木の基礎知識
学名:Diospyros kaki
科名:カキノキ科
属名:カキノキ属
原産地:東アジア
和名:カキノキ(柿の木)
英名:Kaki Persimmon
剪定時期:12月~2月
樹高:中高木
常落区分:落葉性
日照:日なた
耐暑:強い
耐寒:強い
開花時期:5月
花色:白
剪定時期:12月~2月
記念樹:「新築・新居祝い」「帯祝い」に向いています。お金を「かき」集めると縁起が良いとされています。詳しくはこちらから
花言葉:「自然美」「優しさ」「恩恵」「優美」「恵み」
カキノキ(柿の木)の特長
カキノキ(柿の木)は果実を収穫しやすいように剪定をして樹高を抑えますが、本来は10メートル以上にもなる高木です。園芸品種は1,000種以上もあり、甘柿と渋柿に大別されます。甘柿の主要な品種には、「富有」、「次郎」、「伊豆」などがあります。一方、渋柿の主要な品種には、「平核無」、「西条」、「愛宕」などがあります。有名なのは、次郎柿(じろうがき)と富有柿(ふゆうがき)です。
次郎柿は、1844年に松本治郎吉氏が静岡県周智郡森町で見つけた幼木を持ち帰り育てたのがはじまりと云われています。見た目は四角く、4本の溝を境に起伏しているのが特徴的で甘みが強く熟期は11月上旬です。
富有柿は、1820年頃に岐阜県瑞穂市居倉に御所柿を植樹したところからはじまり、当初は名前が各地で違っていましたが、1898年に富有柿に統一されました。見た目は丸に近い四角で光沢があります。完全甘柿で甘みが強く、柔らかな食感です。主な産地は奈良県や福岡県で、熟期は11月中旬で日本で最も栽培の多い甘柿です。
カキノキ(柿の木)は雌雄異花という特性を持っており、雌花と雄花があります。ほとんどの品種は、雄花をつけませんが、受粉しなくても果実がなる単為結果性という性質を持っているので、1本でも実がなります。一般的には、渋柿は甘柿よりも単為結果性が強い傾向があり、受粉しなくても実がなります。また、注意をしたいのは、摘蕾(てきらい)と摘果です。剪定作業とともに、この作業は、隔年結果(なり年と不なり年が交互にくる現象)を防止し、品質のよい果実が収穫できるようになります。蕾がはっきり確認できるようになった5月に新梢1本につき蕾が1個になるよう数を制限します。新梢の長い枝で5~7個の蕾をつけますが、真ん中くらいの位置にあり、下向きで傷や虫の被害のない蕾を残して、葉が5枚以下の枝の蕾はすべて取り除きます。摘蕾で数を制限し、梅雨時期に生理落果を確認した後、7月~8月上旬に、葉の枚数が15~20枚につき実が1個になるよう摘果すると大きくて甘い柿ができ、来年の花芽の確保にもつながります。
カキノキ(柿の木)を剪定をするタイミング
カキノキ(柿の木)の剪定は、落葉期の12月~2月に行います。
落葉期の12月~2月の剪定では混みあった部分や不要枝を切り、樹冠を整えます。
また、落葉期に強剪定を行った場合は、新しい枝が多く生えて混みあいやすいので、花後の春~初夏にかけて枝葉の数を整理して樹形をすっきりと整えるとよいでしょう。
カキノキ(柿の木)を含めた、樹木別剪定時期年間カレンダーを作成しました。興味がある方は、ぜひご覧ください。
カキノキ(柿の木)を剪定をするメリット
(1)果実の量の調整
カキノキ(柿の木)に果実が実りすぎてしまうと、果実に届く栄養が分散されますので剪定によって果実の量を調整します。果実の量を調整することで果実に行き渡る栄養が増え、サイズも大きくなるという恩恵を受けられます。
(2)樹形の調整
カキノキ(柿の木)は、枝が横方向に伸びた横長の樹形が理想だとされています。横長の樹形にするためには、木が高く成長するのを抑えなければいけないので、主幹を切ります。主幹とは、文字通り木の幹から伸びている木の中でいちばん太い部分です。カキノキ(柿の木)がある程度成長した頃に主幹の上の部分を切ることで、カキノキ(柿の木)は全体を支える幹と枝分かれして横に伸びた枝のみになります。
こうして木が高く上に伸びるのを抑えて、めざす樹形に近づけることができるのです。剪定をすることで樹形を整えておけば、実の収穫が楽になったり、害虫予防の農薬の散布が楽だったりします。
(3)枝の調整
カキノキ(柿の木)の枝の密度が高すぎると、幹に太陽光が当たらなかったり果実に傷がついたりするおそれがあります。剪定により枝の密度を下げておくと、きれいな果実が収穫できます。
カキノキ(柿の木)の剪定方法
12月~2月の剪定
【長い枝を切る】
実をつけるのは30cmくらいまでの長さの枝です。30cm以上の長い枝はつけ根の2~3芽を残して切り、新しい枝を伸ばしましょう。
【不要枝を切る】
カキノキは1カ所から数本の枝が出る性質がありますので、その中の細い枝や立ち枝、内向きの枝などの不要枝は、つけ根から切り取り、混みあった枝を整理し1本だけを残すようにします。
【実のついた枝は切る】
今年実をつけた枝は翌年は実がつかないので、実の下の節の上で切って新しい枝を出させ枝を更新します。実をとるときに枝から切りとっておくと剪定作業が楽になります。
【立ち枝を切る】
上に向かって伸びている立ち枝は実がつきにくいので、つけ根で切り落としましょう。ふところの小枝や細い枝、内向きの枝などの不要枝もつけ根から切り取りましょう。
春~初夏の剪定
【不要枝を切る】
主幹から伸びた新しい枝、徒長枝や下向きの枝などの不要枝はつけ根で切り取りましょう。
【混みあっている枝を整理する】
葉が触れ合ってしまっているような混みあっている部分の枝は、細い枝を選んでつけ根から切り取り整理します。
【摘果をする】
ひとつの場所にたくさん実がなっていると、ひとつひとつの実が小さくなってしまうので、小さめの実や傷がついている実を切り落としましょう。ひとつの実のまわりに15~20枚ほどの葉がついているようにするのがポイントです。
カキノキの花芽はひとつの枝に1年おきにできます。今年実がつかなかった枝には翌年実がなる可能性があるので、切り落とさずに残すのがポイントです。また、大木になった木を小さく仕立て直す場合は、直径10cmくらいまでの太さの枝を毎年2~3mずつ切り戻し、好みの高さに仕立て直しましょう。
剪定後、実がつかなくなってしまった場合は、剪定で先端を全部切り揃えたことが原因だと考えられます。慣れてくるまでは、先端をいじらずに、混みあった枝を根元から抜いて透かす剪定を行うとよいでしょう。
■剪定方法をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
カキノキ(柿の木)の育て方
カキノキ(柿の木)は、寒さにも暑さにも強く、和風や和モダンのお庭のシンボルツリーとしておすすめです。
日当たり
日当たりのよい場所を好みます。
水やり
自然雨で育てることができます。
肥料
あまり必要としません。
植え付け
カキノキ(柿の木)の植え付けは1月~3月、11月~12月頃が適期です。
日当たり、水はけのよい肥沃な場所を好みます。
カキノキ(柿の木)の病害虫
カキノキ(柿の木)は、病気では「落葉病」「炭そ病」、害虫では「カキノヘタムシガ」に注意が必要です。
落葉病
梅雨時期から落葉時期まで発病が続きます。落葉病は葉に斑点が広がりやがて落葉します。落ち葉で菌が繁殖するので、病気にかかった落ち葉は必ず処理しましょう。
予防として、間引き剪定をしっかり行い、風通しをよくします。
炭そ病
6月~9月頃に若い枝や葉、実が黒くくぼみ、ひどい場合は落果します。
見つけ次第、被害を受けている部位を取り除きます。殺菌剤を散布すると効果的に予防できます。
カキノヘタムシガ
6~9月頃に発生します。芽、枝、果実に虫糞が見られ、果実内部に侵入されるとヘタを残して落果します。
幼虫を見つけ次第、捕殺します。12月~2月に主幹や主枝の樹皮を削って越冬幼虫を捕殺しましょう。
■害虫対策をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
まとめ
日本の秋を彩る代表的な家庭果樹「カキノキ(柿の木)」は、和風のお庭や和モダンのお庭におすすめの果樹です。古くから庭植えの果樹として親しまれていて、秋の味覚としてもおなじみです。丈夫で育てやすく、大きくなるのでシンボルツリーとしてお庭で育ててみたいという方もいらっしゃるでしょう。
カキノキ(柿の木)は、放っておくと高木になるので、定期的に枯れ枝や混みあった枝を整理し、樹冠を整える剪定が必要です。また、病害虫の被害にも注意が必要です。カキノキ(柿の木)の剪定や病害虫の予防や駆除は、高木になればなるほど自身での作業が難しくなります。ご自身での作業に不安を感じる場合には、プロの業者や庭師、剪定を行っている造園会社、造園業者にお願いするのも良いでしょう。
カキノキ(柿の木)の剪定やお手入れで困った場合は、ぜひ庭のプロ集団『庭.pro』へご相談くださいね。
2024年1月30日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎