生垣の剪定には、生垣にしている樹木毎の、基本のやり方と剪定に適した時期があります。生垣をキレイな形に整えるには、その木の切り方や刈り込み方に合わせた剪定方法で行う必要があります。また生垣は、通常の庭木とは異なり、外からの目隠しや、防風、防音、防火などの役目もあり、それに応じた切り方も必要になります。
このページでは生垣の剪定を行う際に、知っておいていただきたい手順やコツをプロの庭師が伝授いたします。
目次
生垣を剪定する時期
生垣に使われる樹木の種類
洋風の生垣におすすめの樹木
和風の生垣におすすめの樹木
塩害に強い生垣におすすめの樹木
1m以下生垣におすすめの樹木
2m以上生垣におすすめの樹木
手入れが楽な生垣におすすめの樹木
お花が美しい生垣におすすめの樹木
食べられる生垣におすすめの樹木
生長が早い生垣におすすめの樹木
生長が穏やかな生垣におすすめの樹木
防風に向く生垣におすすめの樹木
強風に弱い生垣に用いられる樹木
生垣・垣根の剪定方法
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
生垣を剪定する時期
生垣の剪定は、1年間の間に、強く刈り込む「強剪定」を1回と軽く整える「軽剪定」を1~2回程行うと、生垣の美しい樹形を保つことができます。樹種にもよりますが、自然樹形でお手間をかけなくとも自然に整う樹木もありますが、基本的には、最低でも1年に1回の強剪定は行っておきたいものです。
生垣の基本的な剪定時期は、生垣に用いられている庭木や花木などの種類により細かい剪定時期はそれぞれ異なりますが、基本的には発芽前の樹木の休眠中に行う冬期剪定と、木の生育中に行う夏期剪定が生垣剪定の基本時期となります。
冬季剪定
冬季剪定は、樹木が活動を始める春を迎える前に行います。新芽が育つのが5月頃の庭木の場合は、3月~4月の春に行う場合もあります。
夏季剪定
夏季剪定は、6月~8月頃に行う剪定で、樹木全体の形を整えることを目的とした剪定です。
また、生垣に用いられている樹木の種類による、剪定に適した時期は、常緑樹、落葉樹、花木によりそれぞれ異なっています。
常緑針葉樹の剪定時期
常緑針葉樹の剪定時期は、新芽が育つ前の3月~4月頃までが基本剪定におすすめの時期となります。
常緑広葉樹の剪定時期
常緑広葉樹の剪定時期は、冬が終わった暖かくなった頃から初夏までの間がが基本剪定に適しています。
落葉広葉樹の剪定時期
落葉広葉樹の剪定時期は、落葉後の木が休眠している寒い時期に基本剪定を行うのが基本となります。
花木の剪定時期
花木の剪定時期は、基本的に花が咲き終わった直後です。基本的に花木の剪定は花後すぐに行えば花芽を失うことがありませんが、その時期を逃してしまったら、11~2月の休眠期に剪定を行うのが良いですが、花芽を切り取ると翌年花を咲かせることはできないので、花芽を切り取らないように、花芽の上で剪定するようにしましょう。
樹木の詳しい剪定時期はこちらから

生垣に使われる樹木の種類
生垣に用いる樹種には、生垣の目的や設置場所などにより、樹種の特徴を生かした方法で用います。
1.生垣を作る目的は、目隠しなどの防犯目的の場合は葉が茂りやすい樹種を、強風を避ける防風目的の場合は根張りが良い樹種を、そして、お花や果実を楽しんだりという場合はお花の好みのある樹種などと、生垣の設置目的を果たせる樹種を選びましょう。
2.生垣の設置場所に合ったものを用いる必要があります。海風が当たる場合は、塩害に強い樹種を、日当たりが悪い場合は日陰でも耐えうる樹種を用いる必要があります。
3.生垣が見栄え良く保てるように、蒸れや日陰に強い樹種、刈り込みに強い樹種、葉が密生するなどの特徴を持った樹種を用いる必要があります。
「洋風」の生垣におすすめの樹木
常緑広葉樹 | 低木 | トキワマンサク |
常緑広葉樹 | 低木 | シルバープリペット |
常緑広葉樹 | 低木 | マサキ |
常緑広葉樹 | 低木 | ブラシノキ |
常緑コニファー | 高木 | ゴールドライダー |
常緑コニファー | 高木 | エメラルド |
常緑コニファー | 高木 | グリーンコーン |
落葉広葉樹 | 低木 | ムクゲ |
常緑広葉樹 | 低木 | ボックスウッド(西洋ツゲ) |
常緑広葉樹 | 小高木 | ソヨゴ |
常緑広葉樹 | 高木 | オリーブ |
常緑広葉樹 | つる性 | モッコウバラ |
常緑広葉樹 | 高木 | ユーカリ |
落葉広葉樹 | つる性 | クレマチス |
常緑針葉樹 | 高木 | ニオイヒバ |
常緑針葉樹 | 低木 | フィリフェラオーレア |
「和風」の生垣におすすめの樹木
常緑広葉樹 | 小高木 | レッドロビン(ベニカナメモチ) |
常緑広葉樹 | 中木 | キンモクセイ |
常緑広葉樹 | 中木 | ギンモクセイ |
常緑広葉樹 | 低木 | カラタネオガタマ |
常緑広葉樹 | 小高木 | イヌツゲ |
常緑広葉樹 | 低木 | キンメツゲ |
常緑コニファー | 低木 | スカイペンシル |
常緑コニファー | 低木 | キャラボク |
「塩害に強い」生垣におすすめの樹木
常緑広葉樹 | 高木 | ツバキ |
常緑広葉樹 | 高木 | サザンカ |
常緑広葉樹 | 高木 | サンゴジュ |
常緑広葉樹 | 高木 | ヒイラギモクセイ |
常緑針葉樹 | 高木 | カイヅカイブキ |
常緑広葉樹 | 高木 | ウバメガシ |
常緑広葉樹 | 低木 | シャリンバイ |
常緑広葉樹 | 低木 | トベラ |
常緑広葉樹 | 低木 | マサキ |
常緑広葉樹 | 低木 | イヌツゲ |
常緑広葉樹 | 高木 | モチノキ |
「1m以下」生垣におすすめの樹木
常緑広葉樹 | 低木 | ヒメシャリンバイ |
常緑広葉樹 | 低木 | サツキ |
常緑広葉樹 | 低木 | ヒラドツツジ |
落葉広葉樹 | 低木 | ドウダンツツジ |
常緑広葉樹 | 高木 | クリスマスホーリー (西洋ヒイラギ) |
常緑広葉樹 | 低木 | マメツゲ |
常緑広葉樹 | 低木 | ボックスウッド |
常緑広葉樹 | 低木 | ハマヒサカキ |
常緑広葉樹 | 低木 | アベリア |
落葉広葉樹 | 低木 | ユキヤナギ |
常緑広葉樹 | 高木 | マサキ |
常緑広葉樹 | 低木 | ナンテン |
落葉広葉樹 | 低木 | メギ |
常緑広葉樹 | 低木 | ローズマリー |
「2m以上」生垣におすすめの樹木
常緑広葉樹 | 高木 | シラカシ |
常緑広葉樹 | 高木 | アラカシ |
常緑針葉樹 | 高木 | イヌマキ |
常緑針葉樹 | 高木 | ラカンマキ |
常緑広葉樹 | 高木 | ヤマモモ |
常緑広葉樹 | 高木 | キンモクセイ |
常緑広葉樹 | 高木 | モチノキ |
常緑広葉樹 | 高木 | ゲッケイジュ |
常緑広葉樹 | 低木 | ナワシログミ |
常緑広葉樹 | 低木 | アベリア |
「手入れが楽な」生垣におすすめの樹木
「お花が美しい」生垣におすすめの樹木
常緑広葉樹 | 低木 | フェアリーマグノリア |
常緑広葉樹 | 高木 | トキワマンサク |
常緑広葉樹 | 低木 | アベリア |
落葉広葉樹 | 低木 | ドウダンツツジ |
常緑広葉樹 | 低木 | マートル(銀梅花) |
常緑広葉樹 | 低木 | シャリンバイ |
常緑広葉樹 | 高木 | サザンカ |
常緑広葉樹 | 低木 | ブラシノキ |
常緑広葉樹 | 高木 | キンモクセイ |
「食べられる」生垣におすすめの樹木
「成長が早い」生垣におすすめの樹木
「生長が穏やか」な生垣におすすめの樹木
「防風に向く」生垣におすすめの樹木
常緑広葉樹 | 高木 | クスノキ |
常緑広葉樹 | 高木 | シラカシ |
常緑広葉樹 | 高木 | スダジイ |
常緑広葉樹 | 高木 | マテバシイ |
常緑広葉樹 | 高木 | ヤマモモ |
常緑広葉樹 | 高木 | モッコク |
常緑針葉樹 | 高木 | イヌマキ |
常緑針葉樹 | 小高木 | カイヅカイブキ |
常緑針葉樹 | 高木 | ヒノキ |
常緑広葉樹 | 低木 | アオキ |
常緑広葉樹 | 高木 | イスノキ |
常緑広葉樹 | 高木 | キンモクセイ |
常緑広葉樹 | 高木 | クロガネモチ |
常緑広葉樹 | 高木 | モチノキ |
常緑広葉樹 | 高木 | タイサンボク |
常緑広葉樹 | 高木 | タブノキ |
常緑広葉樹 | 高木 | タラヨウ |
常緑広葉樹 | 高木 | ユズリハ |
「強風に弱い」生垣に用いられる樹木
生垣・垣根の剪定方法
1.生垣は側面から刈り込みましょう
生垣の刈り込みは側面から行います。木の下の部分から上へと刈り込んでいきましょう。木は一般的に下枝の方が上枝よりも萌芽力が弱いため、下枝を必要以上に深く刈ってしまったら、下枝が枯れてしまうこともあるため、極力、下枝を深く切り込まないようにするために、下から上へと刈っていきましょう。生長の早い上枝や横に広がっている部分などはしっかりと刈り込んでいきましょう。
2.上面を平らに刈り込みましょう
次に生垣の上面を刈り込みましょう。上面は水平にしたいので、慣れるまでは生垣の両端に杭を打ち、刈り込む高さに水糸などを水平に張り、この糸のレベルに合わせて平らに刈り揃えましょう。刈り込み鋏には表と裏があり、刃の反りが手前側に向くのが表です。生垣の側面は表を使って刈り込んでいきますが、上面は鋏を持つ手の位置が刃より低くなるため、裏返しで使用した方が水平に刈ることができます。
生垣の高さは、その生垣の目的にもよりますが、あまり高すぎる場合は、見通しが悪くなったり、樹木の生長で枝に手が届かなくなったりするため、目隠しとしての生垣の場合は、1.8m~2.0mを目安に剪定を行いましょう。
3.透かし剪定を行いましょう
枝が混みあっていると、風通しが悪くなり、日光が当たらなくなったり、害虫の原因にもなるので、枝を透いて風通しを良くしておきましょう。
4.角を取りましょう
煮物を作るときに野菜の角を取りますが、生垣の剪定も同じように生垣の角を取りましょう。お料理の下ごしらえでは面取りと呼ばれていますが、角を取るのになぜ面取りって言うのでしょうね?→面を作る=面を取るってことのようですね!納得しました。
5.出っ張りや曲がりを修正しましょう
1m~2m毎に剪定を行い、都度、全体を見渡して、出っ張りや曲がりの修正を行いましょう。
剪定のやり方の詳しい説明はこちらから

生垣の剪定を行うにも、剪定鋏で適当に枝を切ってしまっては、樹木への負担を増やしてしまい兼ねません。できるだけ樹木への負担を減らし、見栄えが良くなるように美しく剪定しておきたいものです。
剪定の切り方・切る場所・切り口の正しい方法はこちらから

剪定の手順は動画でご確認ください
まとめ
木を大切にすればするほど、大切な木を切るのは忍びないと言われる方があります。しかしながら、木を伸びるがまま放任してしまうと、枝葉が茂り過ぎて見栄えが悪くなったり、日当たりや風通しが悪くなり、病気や害虫に侵されたりしてしまいます。
そうならないために行う作業が「剪定」で、生長を妨げる余分な枝や見栄えの悪い不要な枝を取り除いたり、健やかに育つようにお手入れを行うことが樹木には必要です。
剪定を行う上で一番重要なことは、必要な枝と不要な枝を見極めることです。その枝がこれまでにどのように生長してきたかという点と、今後、その枝がどのように生長していくかを想像して、不要な枝は切り取り、大切な枝を残してというように作業をすすめていきます。
このような作業を繰り返し行い、いつまでも元気に美しい姿を見せてくれるように、枝を切っていきますが、我々庭師は、枝を「切る」という言葉は使わず、枝を「飛ばす」、枝を「下す」、「透かす」、「抜く」、「挟む」、「はずす」、「おろす」といいます。
従い、枝を切って木を弱らせるのではなく、古い枝を飛ばして、新しい枝の生長を促し、木を若返らせるために「剪定」を行い、いつまでも元気で美しい姿を保てる木として育って欲しいということを考えて「剪定」を行って欲しいものです。
お庭に植える樹木選びから、剪定やお世話などまで、庭のプロ集団『庭.pro』までご相談ください。綺麗な庭で皆様の暮らしが豊かになれば幸いです。
2024年1月31日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎













