庭木の王様モッコク!美観を整えるシンプルな剪定方法
江戸時代から庭木として注目されてきた「モッコク」は、三大庭木や江戸五木のひとつに数えられています。また「庭木の王様」として、古くから私たちの庭に根付いてきた樹木です。
成長が緩慢なモッコクは剪定する箇所も少なく、さほど時間を要しません。ところが、タイミングや方法を間違えると、樹形が崩れて美観が損なわれてしまうでしょう。
この記事では、モッコクの剪定方法やベストなタイミングを紹介します。NGな剪定方法も紹介するので、ぜひチェックしてくださいね。
目次
モッコクの基本情報
モッコクの特徴
モッコクの剪定のタイミング
モッコクの剪定道具
モッコクの剪定メリット
モッコクの剪定方法
モッコクの育て方
モッコクの病害虫
↳カイガラムシ
↳ハマキムシ
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
モッコクの基本情報
属名:モッコク属
科名:モッコク科
学名:Ternstroemia gymnanthera
英名:Mokkoku tree
和名:木斛
別名:イイク
原産地:日本、中国、台湾、朝鮮半島南部、東南アジア、インドなど
樹高:約6~15m前後
区分:常緑広葉樹
耐暑性:強い
耐寒性:やや弱い
開花期:6月下旬~7月頃
花色:白色
果実期:10~11月頃
剪定時期:6月~7月、11月~12月
用途:庭木、公園樹など
花言葉:「人情家」
モッコクの特徴
遠くまで漂うほど甘い香りがするモッコクは「庭木の王様」として、古くから人気があります。
6月から7月頃にかけて、小さな可愛らしい花を咲かせ、その香りはランの一種「セッコク」の香りに似ていることが名前の由来になっています。
モッコクの葉はツヤのある美しい緑色。放射状に伸びやかな葉を茂らせます。
また、庭木三大銘木のひとつ「モチノキ」に姿が似ているので、間違えられることもしばしばあります。
成長スピードが緩慢で、秋には赤い実をつける点など、類似するところも豊富です。
ただし、モチノキの剪定適期とは少し異なるため、注意が必要です。
モッコクは「江戸五木」のひとつとして数えられていることから、古くから日本人の生活の傍らに存在していたことが窺えます。
一年を通して、四季折々の表情を楽しませてくれる庭木として「王様」と呼ばれるにふさわしい樹木といえますよね。
モッコクの剪定のタイミング
モッコクの剪定適期は年2回あります。
6~7月の剪定は、花が散った後のタイミングで行いましょう。
密集しているところや、徒長し伸びきった枝を見つけて剪定していきます。
ジメジメとした梅雨のシーズンに、少しでも風通しがよくなるイメージで間引いていきましょう。
モッコクが休眠期に入る前の11~12月は、古い枝や枯れている枝を剪定します。
ただし、剪定の必要がないようなら、無理に行わないでくださいね。
モッコクは成長が緩慢なので、剪定をしすぎると樹形が崩れてしまうからです。
また、真夏の剪定と3月の剪定もNG。
直射日光が強すぎて枯れてしまったり、花芽を落としてしまったりと、リスクがあるので避けましょう。
■モッコクを含めた、樹木別剪定時期年間カレンダーを作成しました。興味がある方は、ぜひご覧ください。
モッコクの剪定道具
樹高5~15mにもなるモッコクの剪定は、道具選びも大切な作業です。
剪定に入るまえに、使いやすい剪定道具を揃えておきましょう。
基本の道具は下記の通りです。
・軍手
・剪定バサミ
・刈り込みバサミ
・ノコギリ
・脚立
・癒合剤
道具の刃先から病気が感染してしまわないよう、事前にアルコールで消毒を済ませておきます。
また、剪定した枝から細菌感染を防ぐには、癒合剤の準備も必須です。
モッコクを弱らせないよう、殺菌と乾燥を防ぐ、アフターフォローを忘れずに行います。
剪定道具は、自分の使いやすいものを選び、安全に行うようにしましょう。
モッコクの剪定メリット
モッコクの剪定メリットは、病害虫の発生を防ぎやすくする点です。
小枝が密集して茂るので、日当たりや風通しが悪くなりがち。そうなると、病害虫が好む環境となってしまうでしょう。
適度なタイミングでモッコクの剪定を行い、病害虫の発生を未然に防ぐようにしましょう。
モッコクの剪定方法
モッコクの剪定方法は「透かし剪定」または「三枚透かし剪定」で行います。
透かし剪定
小枝や葉が内側に向かって茂りやすいモッコクは、風の通りやすい隙間を作る、透かし剪定を行いましょう。
6~7月の花が終わった後の剪定は、密集しているところを見つけ、不要な枝を剪定してスッキリとさせましょう。
不要な枝とは、徒長して伸びすぎている枝、交差して絡み合っている枝、下へ向かって成長している枝などです。
そして、11~12月は、古い枝や枯れている枝などを剪定します。無駄な枝へ栄養が奪われない状態にして、冬の休眠期を迎えさせてあげましょう。
三枚透かし剪定
三枚透かし剪定は、時間と手間が少しかかります。その分、モッコクの美観が整い、成長を緩やかに抑えられる剪定方法です。
枝に三枚だけ葉を残す方法なので、芽吹くのが遅くなります。そのため、緩慢な成長がさらにスローダウンします。
モッコクの成長を抑えたいと思っている方は、ぜひこの三枚透かし剪定を試してみましょう。
また、剪定を行う際のコツは「上の枝から、太い枝を、左右のバランスを見ながら」がポイントですよ。
モッコクのNG剪定方法
モッコクの剪定で避けたい方法が3つあります。
1.強剪定
2.刈り込み剪定
3.切り詰め剪定
モッコクの幹は垂直に成長するので、極端に切り落としてしまうと樹形が崩れてしまいます。
また、剪定に一度失敗してしまうと、成長するまでの長い間、バランスの悪い状態が続くでしょう。不格好な庭木は、お庭全体のバランスも損ねてしまいます。
モッコクを剪定する際には、透かし剪定を繰り返す程度にしておくのが適していますよ。
■剪定方法をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
モッコクの育て方
モッコクは「江戸五木」 にも数えられる庭木なので、日本の風土によく馴染んでいます。
これから植え付けを考えている方は、ぜひ育て方の参考にしてくださいね。
日当たり
モッコクは、日当たりと風通しのよい場所を好みます。ただし、直射日光や強い西日があたる環境は苦手。
また、モッコクは寒さにあまり強くありません。寒風があたる場所への植え付けは避けましょう。
水やり
モッコクの水やりは、基本的に必要ありません。
乾燥した日や真夏日が続き、土が乾いている場合は水をあたえてください。
肥料
モッコクへ肥料をあたえる際は、2~3月頃を目安に行います。
寒肥として、緩効性化成肥料や有機質肥料などを株元近くへ施しましょう。
植え付け
モッコクの植え付けは、真夏をのぞいた春から秋にかけて行います。
とくに、新芽が芽吹くまえの3~4月はおすすめ。しっかりと根を張って成長してくれるでしょう。
秋に植え付けをする際は、あまり寒くならない初秋の頃にしてください。
寒さが苦手なので、根付くまえに枯れてしまうリスクがあります。
モッコクは、やや湿り気のある肥沃な土壌を好みます。
適した植え付け場所を見つけて穴を掘り、腐葉土・元肥などをすき込んでおきましょう。
固まった根鉢は、根を張りやすいように軽く崩します。根を傷つけないように、水で洗い流すのがおすすめですよ。
モッコクの病害虫
モッコクの剪定を行わないままでいると、病害虫が発生しやすくなるので要注意です。
まずは、気をつけたい病害虫を知り、対処法をチェックしておきましょう。
小枝が密集しやすいモッコクは、風通しが悪くなると「すす病」や「うどんこ病」が発生しやすくなります。
黒いすすのような粉や白い粉を目にしたら、カビによる病気が発症しているでしょう。
被害が広がるまえに薬剤散布を行い、発症している場所はすべて取りのぞいてください。
害虫で気をつけたいのが「カイガラムシ」、「ハマキムシ」でしょう。
カイガラムシ
カイガラムシは、葉や枝に大量発生し、樹液を吸って弱らせてしまいます。
幼虫には、牛乳を薄めたスプレーや薬剤散布で対処します。成虫には薬剤があまり効かないので、歯ブラシやヘラを使ってこすり落とす方法がおすすめです。
ハマキムシ
ハマキムシは、モッコクの葉を食害するので要注意です。
モッコクの葉を2~3枚巻き込んで巣を作るので見つけにくいのが難点。
食い荒らされている葉に気づいたら、早めに薬剤散布をしましょう。また、丸まった葉はハマキムシの巣の可能性があるので、剪定して焼却してください。
■害虫対策をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
まとめ
「庭木の王様」と呼ばれるモッコクは、威風堂々たる姿で庭や公園を演出しています。
初夏になると香木としての存在感をひときわ放つので、甘い香りに癒やされている方もいるかもしれません。
常緑樹のモッコクは、年間を通してツヤのある葉を楽しませてくれる庭木ですが、密に茂りやすいので、剪定は必須です。しかし、コツを掴めば剪定の作業は難しくありません。ぜひ、今回の記事を参考に剪定を行ってみましょう!
もしモッコクのお手入れで困った場合は、庭のプロ集団『庭.pro』へご相談ください。
皆様のお庭づくりのお手伝いができれば幸いです。
2024年1月26日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎