生垣や仕立てに人気の庭木!
細い葉が密集してつき、枝が横に広がって育つキャラボク(伽羅木)。その性質から、生垣や玉仕立てに複雑なトピアリーなど、刈り込んで使われることも多い低木です。暑さや寒さにも強く育てやすいので、日本では定番の庭木でもあります。成長も遅く、1年に一度表面を刈り込むだけでも見栄えがよくなるキャラボクですが、実は刈り込みだけでなく剪定もとても大切です。この記事では、キャラボクの刈り込みや剪定のコツ、基本の育て方を解説します。
目次
キャラボク(伽羅木)の基本情報
キャラボク(伽羅木)の特徴
キャラボク(伽羅木)の主な品種
↳キンキャラボク
キャラボク(伽羅木)を刈り込み・剪定する時期
キャラボク(伽羅木)を刈り込み・剪定するメリット
キャラボク(伽羅木)の刈り込み・剪定方法
↳剪定のポイント
↳刈り込みのコツ
↳透かし剪定のコツ
キャラボク(伽羅木)の育て方
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
キャラボク(伽羅木)の基本情報
科名:イチイ科
属名:イチイ属
学名:Taxus cuspidata var. nana
英名:Dwarf Japanese yew
和名:伽羅木(きゃらぼく)
別名:キャラ、オンコ、オッコ
原産地:日本海側の山地
樹高:1〜2m
常落区分:常緑針葉樹 低木
日照:日向〜半日陰
耐寒性:強い
耐暑性:強い
開花期:3月〜5月
花色:淡紅色
果実色:赤
植え付け時期:春・秋
剪定時期:5月~6月(年1回)、10月~12月(年2回)
花言葉:慰め、哀しみ、高尚
キャラボク(伽羅木)の特徴
キャラボクはイチイの変種で、秋田や鳥取など日本海側の山地に自生する常緑針葉樹です。イチイは主幹が太く樹高も10〜20mと大きくなりますが、キャラボクは主幹が直立せずに下部から枝分かれし、横に広がる低木です。積雪にも耐える耐寒性に加え、イチイよりも耐暑性があるため人気の庭木です。剪定にも強く、玉散らしなどに仕立てたり、生垣や縁取りなどに利用されます。
雌雄異株で、雌株には秋に赤い実がなります。多肉質の赤い部分は甘くて食べられますが、中の種子は有毒で、誤飲すると呼吸困難や痙攣などを引き起こします。またキャラボクという名前は、インド原産の香木である伽羅(キャラ)に似ていることから名付けられたとされています。微かに似た香りがしますが、キャラとは別の植物です。
キャラボク(伽羅木)の主な品種
キンキャラボク
新芽が美しい金色のキャラボクです。新芽が金色のキャラボクは、キンメキャラボクとオウゴンキャラボクがありますが、どちらもキンキャラなどと呼ばれて性質も似ており、区別は少し難しいです。キャラボクよりも樹高が低く、グラウンドカバーやロックガーデンなどにも利用されます。耐陰性もあり、日向〜半日陰で育てられます。パッと明るい黄金葉が庭にメリハリをつけてくれる上、扱いやすくて人気の庭木です。
キャラボク(伽羅木)を刈り込み・剪定する時期
キャラボクは3〜4月頃に新芽が出ます。刈り込み・透かし剪定は新芽の伸びが落ち着いた5〜6月頃がおすすめです。柔らかい新芽のうちに刈り込みを行うと、枝の断面が目立ちにくく、次の芽が出てきてカバーしてくれます。新芽が柔らかい春を過ぎると芽が固くなり、枝の茶色い断面も目立ちやすくなります。また日差しが強い時期は焼けて赤くなりやすいので、5〜6月のうちに済ませておくと良いでしょう。
また、余裕があれば10〜12月にもう一度、刈り込みと剪定を行います。秋は前の剪定後に伸びた芽が落ち着く頃で、混み合った枝や伸びすぎた枝などを整理しやすくなります。
このように適期は春と秋ではありますが、基本的には通年剪定はできます。ただし真夏は避けましょう。
剪定の適期
・年1回行う場合:新芽の伸びが落ち着いた5〜6月
・年2回行う場合:春の剪定から伸びた枝が落ち着いた10〜12月
キャラボクを含めた、樹木別剪定時期年間カレンダーを作成しました。興味がある方は、ぜひご覧ください。
キャラボク(伽羅木)を刈り込み・剪定するメリット
刈り込み:樹木の枝葉の先端を切り、見た目を整えるために切り揃えること。
剪定:樹木の成長や樹形を調整し、樹木の健康状態を維持するために、不要な枝葉を切り落とすこと。
キャラボクの基本のお手入れは、年に一、二度の刈り込みです。仕立てたり、生垣や縁取りにしているキャラボクは、伸びてきた芽を刈り込むことで輪郭をはっきりさせます。しかしこのとき、表面の刈り込みだけでなく、全体の透かし剪定を行うのがおすすめです。
キャラボクは成長が遅いため、玉仕立てや生垣、トピアリーにしても大きく形は崩れません。枝も暴れにくいので、表面を数cm刈り込むだけでスッキリします。しかし毎年刈り込みだけを行っていると、表面だけに葉が茂り、内部に日光が届かなくなってきます。すると、内部に葉がなくなりスカスカになってしまうのです。特にキャラボクは葉を残さないと枝が枯れ込むことがあるため、一度スカスカになると深く剪定しにくくなって、樹形を少しずつ大きくせざるをえなくなります。毎年透かし剪定も行うことで内部にも日光が届いて葉が茂り、見栄えもよくなり、株も元気になります。
透かし剪定と刈り込みを行うメリット
・大きさをキープする
・内部がスカスカになるのを防ぐ
・樹勢が良くなる
以上のことが、キャラボクを剪定するメリットとしてあげられます。
キャラボク(伽羅木)の刈り込み・剪定方法
剪定のポイント
キャラボクは、葉がなくなった枝から新芽が出ることがほぼありません。葉がなくなった枝は枯れ込んでしまうので、必ず葉を残してカットします。緑色の枝先を残して剪定すると、そこから新芽が伸びてきます。固くなった茶色の枝部分だけを残してカットすると、枝は伸びず残った葉も枯れやすくなるので、できるだけ成長する緑色の部分を残しましょう。
刈り込みのコツ
刈り込みをしてから透かし剪定をすると、切るべき枝が見えやすくなります。剪定に慣れない人は、まずは軽く刈り込みをしてから透かし剪定をするという手順がおすすめです。
生垣は日の当たる上側を強く剪定し、日の当たりにくい下側はあまり剪定しないようにします。上を薄く下は厚みを持たせ、真横から見ると台形になるように刈り込みましょう。そうすることで内部にも日光が届きやすくなります。下部を刈り込みすぎないよう、上部から刈り込むと失敗しにくいです。
玉仕立てやトピアリーは、まず頭頂部のラインを決めてから、肩を落としていくように刈り込みます。刈り込みハサミは刃が少し斜めになっていて、平面は刃を上になるように持ち、曲線を切るときは刃を下に向けて持つのが基本です。また、左手を固定して右手だけを動かして使うようにするとブレにくくなります。上部は新芽が伸びやすいので強めに剪定し、株の内部に日光を届きやすくなるようにしましょう。
透かし剪定のコツ
透かし剪定するときは、株の内部まで風が通り日光が当たるようなイメージで行います。
まずは枯れている枝をカットして掃除します。次に、内側に伸びる枝・真上に強く伸びる枝など、樹形を乱すような枝は枝の分岐点で落とします。できるだけ枝の太さを均一にするように、他と比べて太すぎる枝などはカットしましょう。
■剪定方法をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
キャラボク(伽羅木)の育て方
日当たりと置き場所
日当たりの良い場所を好みますが耐陰性もあり、半日だけ日が当たるような半日陰の場所でも育ちます。ただし日照が足りないと樹勢が弱くなったり、葉のツヤにも影響が出ます。また、日陰すぎるとより内部に日光が届かず、中の枝がスカスカになりがちです。
成長が遅いので、狭いスペースにもおすすめです。ただし移植が苦手なので、植えるときは場所をよく考えましょう。
用土と肥料
肥沃で水はけの良い用土を好みますが、適応力は高くあまり土は選びません。ただ多湿を嫌うので、高植えを行うと効果的です。根付けば降雨で十分ですが根が弱い性質があり、植え付け後は給水力が弱くなっていることがあります。植え付けてから1〜2年は地植えでも水の管理をしっかりしましょう。最初の夏は水切れに注意してください。植え付けや植え替え時は根を傷つけないように気をつけましょう。
肥料は12〜2月頃に、油粕などの有機肥料や化成肥料をやります。
病害虫や注意点
強健で虫もつきにくく、目立った病害虫はありません。ですが、まれに6〜10月頃カイガラムシやハダニ、ヒバノキクイムシ、ナガチャコガネなどの被害に遭うことがあります。見つけたら駆除します。
寒さには強く枯れることはありませんが、寒冷地では葉が茶色くなることがあります。暖かくなって新芽が出る春になれば、緑色になります。
■害虫対策をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
まとめ
キャラボクは赤い実をつけることから縁起が良い木とも言われ、定番の庭木でもありました。大きくなりにくく枝が暴れにくいので、境界線の生垣にも向いています。また、成長が遅いため狭い庭でも扱いやすく、室内から覗く小さな植栽スペースなどにもおすすめです。透かし剪定を年に1回してあげることで、充実した元気な株に育ってくれます。刈り込み作業は、初心者でもやってみると夢中になれますよ。ぜひ挑戦してみてください。
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見積もりやご相談は無料ですので、お気軽にご相談下さい。皆様のお庭づくりのお手伝いをさせていただければ幸いです。
2024年1月26日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎