日本各地で見かけられ、庭木としても人気の高いイチイの木。
「イチイの木ってどうやって剪定するのだろう」
「少し伸びてきた枝があるけど切っても大丈夫かな」
など、イチイの剪定方法がわからずお困りではありませんか。切った枝は元には戻らないので、できれば失敗はしたくないものですよね。
そこでこの記事では、イチイの木の剪定の時期や剪定方法、育て方のコツなどを、プロの庭師が伝授いたします。
剪定を正しくおこなえば、元気なイチイが姿を見せてくれるでしょう。ぜひこの記事を読んで、剪定をする際の参考にしてくださいね。
目次
イチイ(一位)の木の基礎知識
イチイ(一位)の木の特徴
イチイ(一位)の木を剪定する時期は?
イチイ(一位)の木の剪定方法
↳樹形と高さを決める
↳道具と服装を準備する
↳小透かし剪定を行う
イチイ(一位)の木を剪定するコツ
イチイ(一位)の木を剪定するときの注意点
イチイ(一位)の木の育て方
イチイ(一位)の木の増やし方
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
イチイ(一位)の木の基礎知識
イチイは、イチイ科イチイ属の常緑針葉樹です。名前の由来は、神官が使う「しゃく」にイチイの木が使われていることからきているとされています。別名が豊富で、なかでもオンコ・アララギが有名です。また、分布範囲は広く、北海道から沖縄まで日本全国で見られます。
学名:Taxus cuspidata
和名:イチイ(一位)
英名:Japanese Yew
樹高:高木
耐寒性:あり
開花期:3~4月
花期:9~10月
花言葉:高尚
イチイ(一位)の木の特徴
イチイの木は、果肉を除く樹木全体に有毒成分があるのが特徴です。剪定の際には、誤って口に入らないよう、気をつけなければいけません。
種には毒がありますが、野鳥たちは好んで食べます。そのため、お庭に鳥を誘う役目を果たす「誘鳥木」としても期待できます。誘鳥木についてくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
イチイは緑の樹木と真っ赤な実のコントラストが綺麗な、鑑賞価値の高い樹木です。剪定方法に配慮して樹形を整え、お庭の主役として活躍してもらいましょう。
イチイ(一位)の木を剪定する時期は?
イチイの木の剪定時期は、2~3月がおすすめです。芽吹き前に剪定をすることで芽が出てくるのを促せるからです。
しかしイチイは丈夫で、いつでも剪定可能な側面があります。そのため樹形を整えたいときは、日頃から少しずつ剪定します。ただし、気温が高く、雨が降り続いていないときなどは、剪定を控えた方が良いでしょう。
イチイ(一位)の木の剪定方法
イチイの木の剪定方法は、以下の順番で進めます。
1.樹形と高さを決める
2.道具と服装を準備する
3.小透かし剪定を行う
剪定の際は準備が大切です。それぞれについてくわしく解説します。
樹形と高さを決める
イチイの樹形は、不等辺三角形や扇形が一般的です。目指したい樹形をイメージし、形を決定しましょう。
また樹の高さを決めることも重要です。すでに目標の高さに達している場合は、芯を切って上に木が伸びるのを止める必要があります。目指す樹形や高さに応じて、必要な道具を揃えましょう。
道具と服装を準備する
イチイの剪定には、以下の道具を用意します。
・剪定ばさみ
・のごぎり
・脚立
・ほうきとちりとり
剪定ばさみ・ほうき・ちりとりは、剪定時に必ず使用します。のこぎりと脚立は、状況に応じて使用しましょう。
また、服装は以下のものを着用します。
・手袋
・フェイスガードネット
・長袖長ズボン
服装は、なるべく肌が出ないものを着用します。剪定時に枝などで体を傷つけないように、長袖長ズボンで体を守りましょう。
また、フェイスガードネットをかぶることをおすすめします。ネットを着用することで、有毒である葉の誤飲防止が可能です。
小透かし剪定を行う
少しずつ剪定するために、小透かし剪定を行います。小透かし剪定とは、枝の先端部の細い部分を剪定することを指します。イチイはゆっくり成長するので、剪定量を多くすると元の形に戻るまで時間が必要です。小透かし剪定によって、切り落とす葉の量を少なくし、樹形を整えられるでしょう。
剪定の切り方や切る場所、切り口の正しい方法は、下記の記事で詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。
イチイ(一位)の木を剪定するコツ
イチイの木は、一定期間を置いて剪定するのではなく、枝葉の量が多くなったタイミングで剪定しましょう。なぜなら剪定の目的は、日当たりと風通しを良くすることだからです。
回数にこだわってしまうと、必要以上に剪定してしまい、イチイの木を弱めてしまう可能性があります。また、大きな剪定を必要とする際は、以下のような枝を落とします。
・内側に伸びる枝
・ひとつだけ伸びてしまった枝
・他の枝と絡んでしまった枝
大きな剪定をすると、樹形が綺麗に外方向に整います。次回以降の剪定は、樹形を整えるための小透かし剪定を中心に行えるでしょう。
イチイ(一位)の木を剪定するときの注意点
イチイの木は、高木になるため注意が必要です。放っておくと20mを超える大きさに成長するため、自分では手入れがしにくくなります。高所での作業は危険が伴うため、業者へ相談することを検討しましょう。
また、イチイの種には毒があります。手入れの際は誤飲防止に努めましょう。小さいお子さんを近くに立ち入らせない工夫も必要です。
くわえて暖かい地域では、大きく刈り込むと樹形が戻りにくいことがあります。いきなり大きく剪定せず、小さく剪定して様子を見た方が良いでしょう。
イチイ(一位)の木の育て方
イチイの木の育て方は、以下のとおりです。
・日差しが強ければ日よけをする
・水やりは極度に土が乾いたときに行う
・2~3月に肥料を与える
・剪定して病害虫を予防する
それぞれについてくわしく解説しますので、イチイが元気に育つ方法を覚えましょう。
日差しが強ければ日よけをする
イチイの木は、西日が強く当たると葉焼けします。
葉焼けとは、葉が茶色くなったり白く色が抜けたりする、生理障害を指します。具体策は、遮光ネットをイチイの木にかけることです。風通しを悪くせず、日光をさえぎれます。
また、打ち水をして周囲の気温を下げることも、葉焼けには有効的です。ただし、排水の悪い場所だと、水のまきすぎで根腐れがおきることがあるので注意が必要です。
自分で葉焼けに対処するのが心配な方は、プロに相談してみてはいかがですか。
水やりは極度に土が乾いたときに行う
植えてから2~3年の若い木は、土が乾いたときに多めに水を与えると良いでしょう。基本的にイチイの木は、真夏の雨が全く降らないとき以外は水やりがいりません。自然の雨で十分成長してくれます。
2~3月頃に肥料を与える
2~3月頃に有機質の肥料を与えます。基本的にイチイの木は、肥料を多く必要としない樹木です。樹木が若いうちや、大きく成長させたいときに与えると良いでしょう。
剪定して病害虫を予防する
枝が混んでいると風通しが悪くなり、アブラムシやカイガラムシがついてしまいます。害虫が付くと、葉の食害によって成長が妨げられます。
また、すす病の原因は害虫の排泄物です。剪定することで風通しが良くなり、虫が寄り付きにくくなるでしょう。日頃からの手入れが、病害虫の予防には大切です。
イチイ(一位)の木を増やす方法
イチイの木を増やす方法には、以下の3つがあります。
・種を採取して育てる
・挿し木をして育てる
・取り木をして育てる
病気で元気がないときや、枯れてしまいそうなときには、イチイを増やしておくと安心できますね。もしものために増やし方を覚えておきましょう。
種を採取して育てる
9~10月頃に実が熟したあと、木から落ちる前の種を採取します。採取後は種が乾かないよう、細心の注意が必要です。身の部分を水で洗い、すぐに種をまいて完了です。
ただし、発芽には数年かかることがあることを覚えておきましょう。早めに増やす場合は、挿し木や取り木で増やすことを考えます。
挿し木をして育てる
挿し木は、以下の手順で行います。
1.前年に伸びた枝の先端を15cmほどの長さで切る
2.切り取った枝の下半分の葉を取り除く
3.1~2時間ほど水につけて水を吸わせる
4.清潔な土を入れた小さめの鉢に挿す
5.たっぷり水を与える
6.風通しの良い明るい日陰で育てる
7.土の表面が乾いたら水を与える
挿し木は3〜4月におこないます。鉢の底から根が出るくらいまで根が伸びてくれば、安心して植え替えられるでしょう。
取り木をして育てる
取り木は枝を地面に埋めて発根させる繁殖方法で、枝が地表近くから出ているときに作業できます。作業手順は以下のとおりです。
1.幹から生えている枝の一部を地中に埋める
2.U字の針金で地中に枝を固定する
3.土が乾かないよう水やりをする
取り木は2~3月におこないます。清潔なナイフを使用し、発根させる場所の枝の外皮を2~3cmはがすと、発根しやすくなります。また、はがした部分に発根促進剤を塗るとより発根しやすいでしょう。
作業から数カ月後に、根を傷つけないようにして幹と切り離し、予定の場所へ植え替えます。
まとめ
イチイは丈夫で扱いやすい樹木です。しかし管理が行き届かないと、高木になったり、害虫が付いたりして、自分で手入れをするのが難しくなるでしょう。
イチイの木の手入れが不安な方や、お庭に植える樹木選びから、剪定やお世話などまで、庭のプロ集団『庭.pro』までご相談ください。綺麗なお庭づくりのお手伝いをさせていただければ幸いです。
2024年1月30日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎