花を咲かせるにはどうする?|【セルリア】の育て方のコツをプロの庭師が伝授します
透き通るような淡いピンクの美しい花が特徴の「セルリア」。その姿に魅了され挑戦してみたくなるガーデナーも多いはず。南アフリカ原産の常緑低木で、オーストラリアで生産されたものが多く流通しており、園芸品種としてはオージープランツ(オーストラリアンプランツ)やネイティブプランツとして扱われていることもあります。日本では栽培難易度が高い植物ながら、冬から春まで長く花を楽しめる世界でも人気の庭木です。ここではセルリアの基本の育て方や、毎年花を咲かせる管理のコツなどもご紹介します。
目次
セルリアの基本情報
セルリアの特徴
セルリアの主な品種
↳セルリア・フロリダ(ブラッシングブライド)
↳ジョーイセルリア
セルリアの育て方
セルリアの剪定方法
セルリアの花を咲かせる管理のコツ
セルリアの病気と害虫
セルリアの増やし方
まとめ
セルリアの基本情報
分類:ヤマモガシ科セルリア属
学名:Serruria
英名:Serruria
別名:ブラッシングブライド、ジョーイセルリア
原産地:南アフリカ
樹高:1〜2m
葉張り:1〜1.5m前後
常落区分:常緑低木
耐寒性:-5℃前後
耐暑性:弱い
開花期:11〜5月
花色:白、ピンク
用途:庭木、鉢植え、ドライガーデンなど
剪定時期:5〜6月
花言葉:ほのかな思慕、可憐な心、優れた知識
セルリアの特徴
ヤマモガシ科の植物で、南アフリカに40種類ほど自生しています。南アフリカ原産の植物とオーストラリア原産の植物は性質が似ており、オーストラリアでも生産されています。日本で出回るセルリアはオーストラリアで生産されたものが多いため、オージープランツ(オーストラリアンプランツ)やネイティブプランツ、ワイルドフラワーなどとして分類されていることも多くあります。
長く楽しめる花
冬から春にかけて花を咲かせます。花びらに見える部分は葉が変形した苞(ほう)と呼ばれる部分で、中央部分に集まっておしべのように見えるのが花です。
花にはふわふわの毛が生えており、花が開くにつれて綿毛がふんわりと膨らんで見えます。苞(ほう)の半透明でカサッとした硬い質感とのコントラストが美しく、切り花としても人気で、花は長持ちし、ドライフラワーにしても綺麗になります。
鉢植えでの管理がおすすめ
日本の高温多湿に弱く、耐寒性もあまりありません。関東以南の暖地では戸外での冬越しもできますが、夏の暑さでもダメージを受けやすいので、地植えはやや難しめ。日本では、移動できる鉢植えでの管理がおすすめです。
長雨や夏の西日に当たらないように適宜移動しながら管理し、冬に霜が降りるような場所では室内に取り込みます。
自生地ならではの性質
セルリアは南アフリカの南部にある灌木植生地域、フィンボスに自生しています。自生地の南アフリカや生産地のオーストラリアでは山火事が多いため、火事の刺激によって発芽するなど厳しい環境を生き抜く仕組みを持つ植物が多く存在しています。
セルリアも種子にアリが好きな成分を付着させ、地中の巣穴に運ばせることによって火事の被害から守り、そこから発芽して新しい株が育ちます。
昨今は、外来種の侵入や、定期的な山火事の頻発で親株はもとよりに若木まで成長する前に燃えてしまうなどの原因から、絶滅危惧種もしくは准絶滅危惧種に指定されている品種が多くあります。
セルリアの主な品種
日本でセルリアとして出回るものはほぼ後述の2種類で、花びらのような形の苞(ほう)を持つ種類です。セルリアには40種類以上の品種がありますが、その多くが、日本で出回る2種類のセルリアとはまた違った形をしています。
綿毛の生えた花が蜘蛛のようにも見えることから、原産地・南アフリカでは「スパイダーヘッド」という別名でも呼ばれています。甘い香りを持つ品種もあります。
セルリア・フロリダ(ブラッシングブライド)
「最も美しいセルリア」と呼ばれる「セルリア・フロリダ(Serruria florida)」。白〜淡ピンクの可憐で美しい花姿から「頬を染めた花嫁」という意味のブラッシングブライドという名前で呼ばれています。ダイアナ妃のウェディングブーケの花としても有名です。日本で出回る切り花や鉢植えのほとんどがセルリア・フロリダのため、セルリア全体の別名としてブラッシングブライドと表記されることがあります。
ジョーイセルリア
セルリア・フロリダと、セルリア・ロセア(Serruria rosea)という品種を交配させてオーストラリアで育成された品種が、ジョーイセルリアという名前で出回ります。
セルリア・カルメン(Serruria’Calmen’)はセルリア・ロセア由来のローズピンク色で、華やかな品種です。セルリア・プリティピンク(Serruria’Pretty n Pink’)はカルメンよりやや花が大きく、より華やかな印象を与えます。
セルリアの育て方
水やり
オージープランツ(オーストラリアンプランツ)やネイティブプランツは乾燥気味に育てるのが基本ですが、セルリアは根腐れしやすい性質であると同時に、水をたくさん欲しがる植物でもあります。
用土が乾いて水切れを起こしてしまうと、そのまま枯れてしまうことも。特に花芽をつけている時には冬でもたくさん水を欲しがるので、用土が乾いているのを確認してからたっぷりとお水をあげましょう。
日当たりと置き場所
1日中日当たりの良い場所が理想的です。ですが、夏の直射日光では葉焼けしてしまうことがあります。西日は避け、寒冷紗などで日除けするなどして対策しましょう。
また蒸れにも弱いので、風通しの良い場所に置きます。暖地以外で管理する場合、冬は暖房の効いていない室内に取り込みます。
肥料
痩せ地でも育つヤマモガシ科の植物は、少ないリン酸を効率的に吸収する仕組みを持っています。そのためリン酸が多い肥料を与えてしまうと、逆に弱ってしまいます。オージープランツ(オーストラリアンプランツ)やネイティブプランツ専用の肥料を選ぶか、窒素のみの肥料を与えると良いでしょう。
また、セルリアに肥料を与える時期は3〜9月頃までです。9月以降に与えると花がつかなくなることがあります。
植え付けと植え替え
花後の切り戻しを行なった、春〜梅雨の間に行います。成長が早いために根詰まりを起こしがちなので、根の様子をよく観察しましょう。根を触られることを嫌うため、できるだけ根鉢を崩さずに植え替えます。赤玉土や鹿沼土などを配合した水はけの良い土を好みます。元肥入りの用土などはリン酸が多く含まれていることがあるため、避けておきましょう。
セルリアの剪定方法
セルリアは花が終わるかまだ咲いている5月頃に、株元から葉を残して10〜15cmほどの場所でばっさりと切り戻します。太い枝を2〜3本残して、なるべく枝の分岐点の上でカットします。剪定した花はドライフラワーとしても長く楽しめます。夏前に切り戻しを行うことで、花芽をつけやすくなり、蒸れ対策にもなります。
セルリアの花を咲かせる管理のコツ
セルリアの栽培に失敗してしまうケースの多くが、花がついた状態で購入し、長く花を楽しんだ後、切り戻しをしておいたら次の花を待たずに枯れてしまった…という状況ではないでしょうか。セルリアの花を次の年も咲かせるには、水の管理、多湿への対策などが重要なポイントです。
水の管理
セルリアが枯れてしまう多くの原因は、水の管理です。多湿に弱く根腐れしやすいが、水を欲しがる植物であるという、水やりが難しい植物なのです。
鉢を持ち上げてみて軽くなったら、たっぷりとあげます。夏は朝晩の2回、冬は様子をしっかり見ながら水やりをします。夏は気温の高い時間帯にやると鉢の中が蒸れてしまうので、涼しい時間帯にやります。冬は夕方にあげると夜に気温が下がって根が痛むので、朝か昼にあげましょう。
また、あまりに土の乾きが早いようなら根詰まりの可能性があるのでチェックしてみましょう。
日本の多湿への対策
乾燥した地域に自生するセルリアは、日本の多湿が苦手です。長雨に当てないように気をつけ、風通しを良くしましょう。鉢植えをスタンドの上などに置いて、鉢の下にも風が通るようにすると蒸れにくいです。水も流れやすくなり、土の水はけも良くなります。また、ベランダで管理する場合、夏はサーキュレーターを置いて風の回りを良くするのも効果的です。冬に室内に取り込むときにも、風通しの良さに気をつけましょう。
花は早めにカット
セルリアは長い間花をつけるのが魅力のひとつですが、早めにばっさりと切り戻しをすることで次の花芽をつけやすくなります。長期間花をつけておくと株に負担がかかることもあり、できれば5月頃には切り戻しを行うのがおすすめです。
カットするのはもったいない気持ちもありますが、ドライフラワーとしてのセルリアも美しく大変人気です。ドライフラワーにする場合は、花が満開になる少し手前でカットし、1日水につけてしっかり水揚げしてから逆さに吊るしておくと、より綺麗な状態で長く楽しめます。
セルリアの病気と害虫
セルリアには目立った病害虫は見られません。
セルリアの増やし方
セルリアは挿し木で増やします。挿し木は、10cmほどにカットして1〜2時間水につけた挿し穂を作ります。切り口に発根剤をつけて、赤玉土や鹿沼土などの用土に挿します。発根までは用土が乾かないように気をつけましょう。
まとめ
主張し過ぎない優しい色合いと可憐な姿から一度見たらその美しさの虜になってしまうセルリア。最近はドライフラワーに適したネイティブプランツやワイルドフラワーなどの人気が高まり、園芸店や花屋でセルリアを見かけることも増えました。また、オンラインショップなどでも購入できます。栽培難易度はやや高めですが、ぜひ一度挑戦してみてくださいね。
2024年1月24日
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎