庭木カシの樹形を保つ「たった4つの剪定方法」とコツを紹介!
古くから日本に自生しているカシは、公園や防風林として目にする機会が多い木です。どんぐりをつくる木で、種類も豊富なので、高生垣の庭木やシンボルツリーとして利用する人もいるでしょう。
成長スピードが早いカシは、毎年の剪定が必須の樹木です。この記事では「剪定をしたことがないので不安…」という方にも、チャレンジしてもらえるように、カシ(樫)の剪定の時期や剪定方法、育て方のコツなどを、プロの庭師が伝授いたします。
目次
カシ(樫)の基本情報
カシ(樫)の特徴
カシ(樫)の種類
シラカシ(白樫)
アラカシ(粗樫)
ウバメガシ(姥目樫)
イチイガシ(一位樫)
ウラジロガシ(裏白樫)
アカガシ(赤樫)
シリブカガシ(尻深樫)
カシ(樫)の育て方
カシ(樫)の剪定時期
カシ(樫)の4つの剪定方法
1.透かし剪定
2.間引き剪定
3.棒ガシ仕立て
4.寸胴仕立て
カシ(樫)剪定のコツ
カシ(樫)の病害虫
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
カシ(樫)の基本情報
属名:コナラ属
科名:ブナ科
学名:Quercus
英名:Oak
原産地:日本、中国
樹高:約10~20m前後(種類による)
区分:常緑樹
耐暑性:強い
耐寒性:やや弱い(種類による)
開花期:4月~6月頃(種類による)
花色:クリーム色
結実期:9~11月(種類による)
用途:庭木、生垣、街路樹など
花言葉:「勇気」、「力」
カシ(樫)の特徴
カシは、まっすぐに樹高が伸びていく性質があり、成長も早いため巨木になる特徴があります。樹高は約10~20mにもなるため、植え付け場所には、ある程度のスペースが必要です。ただし、カシの種類はとても多く、比較的小型の種類もあります。また、剪定方法によって、高さをおさえることができる庭木です。
木目が美しいことでも知られているカシの木は、木材としても幅広く利用されています。とくに横縞のような模様の「虎斑(とらふ)」や細かい胡麻のような「樫目(かしめ)」模様は、上質で価値のある希少な材木です。その木目の美しさを活かして、高級家具などへと生まれ変わっています。
そして、カシの木は秋になるとたわわなどんぐりの実を付けはじめます。子供の頃に、どんぐり拾いをして、工作に利用した人もいるかもしれません。
堅くて丈夫なカシは、防風林や生垣の庭木にも使われ、材木は日常生活で有効活用されてきました。古くから日本の生活に溶け込んできた、なじみ深い樹木と言えるでしょう。
カシ(樫)の種類
カシと一括りにいっても、種類は豊富にあります。ここでは種類豊富なカシの中でも、代表的なカシの特徴を品種ごとに紹介します。お住まいの地域や環境にあったカシを見つけてみてくださいね。
【シラカシ(白樫)】
耐寒性が強いシラカシは、東北南部~九州までの広い範囲で育てられています。
白い材が名前に由来していますが、樹皮が黒いので、別名「クロカシ」と呼ばれることもあります。葉や樹形が細長く育つのが特徴です。
樹高:約20m

【アラカシ(粗樫)】
関東~関西にかけての温暖な地域で育てられています。
葉の形が荒く、先端がギザギザとしているのが特徴です。新芽は赤褐色で、葉の裏側に軟毛が生えています。
樹高:約10~20m
【ウバメガシ(姥目樫)】
関東南部以西で育てられています。海岸や岩場など、風の強い場所でも自生します。
丸く小さめの葉を持ち、堅い材は備長炭の原料となります。
樹高:約5~20m

【イチイガシ(一位樫)】
関東以南の暖かい地域で育てられ、樹高も高くなります。
葉柄や若い枝に、茶褐色の軟毛が多く生えるのが特徴です。
樹高:約8~30m
【ウラジロガシ(裏白樫)】
中部地方で植栽されることが多いウラジロガシは、白い葉裏が特徴です。
葉の先は鋭くとがり、いっけんシラカシに似ている印象ですが、ウラジロガシの葉の方が大きくなる傾向があります。
樹高:約10~20m
【アカガシ(赤樫)】
関東以南の暖かい地域で育てられるアカガシは、日本のカシ類のなかで、一番大きな葉を持っています。
葉はギザギザとせず、滑らか。先端のみ鋭くとがっています。
樹高:約15~20m
【シリブカガシ(尻深樫)】
寒さに弱いシリブカガシは、関西以西の温暖な地域に向いています。
葉は、全縁もしくは先端に波状のうねりが入るのが特徴です。
樹高:約10~15m
カシ(樫)の育て方
日当たり・管理場所
カシは日当たりのよい場所を好みます。
やや日陰でも成長しますが、風通しのよい場所を選んで植え付けをしましょう。
水やり
植え付け直後は、土の表面が乾いていたら水をあたえましょう。
水はけのよい土壌を好むので、カシが根付き安定してきたら、水やりの必要はありません。
肥料
肥料はとくに必要ありません。
葉の状態を確認し、元気がないようなら1~2月に寒肥として、鶏糞などの有機肥料を施しましょう。
植え付け
カシの植え付け適期は「5~6月」または「9~10月上旬」です。
細根が少ないカシは、移植が難しい植物です。やむを得なく植え替えをする際には、枯死しないように『根回し』を行いましょう。
カシ(樫)の剪定時期
カシの木を剪定するタイミングは、年に1~2回を目安に覚えておきましょう。
剪定の適期
は「5月下旬~7月」と「10~11月」です。
成長したカシの樹形バランスを整えるには、太い枝を短く切りつめたり、多くの枝や芽を切り落とすような強剪定を行う必要があります。
大がかりな強剪定は、カシへの負担が大きいため「6月下旬~7月」の暖かい季節に行うのがおすすめです。成長していない若木の強剪定は、避けておくのが無難でしょう。
寒さが厳しくなる前「10~11月」の剪定は、カシにダメージをあたえてしまうこともあるので注意が必要です。
強剪定は避け、古い枝や徒長した枝を剪定する程度にしておきましょう。
カシの成長速度を見ながら、強剪定と剪定にチャレンジしてみてくださいね。
カシの剪定方法
カシの木は成長が早いので、定期的に剪定し樹形を整える必要があります。
伸びすぎた枝が混み合っているところを透かすように剪定する『透かし剪定』や樹木などの枝が多く密集した部分の枝を何本か切り、枝の密集率を下げる『間引き剪定』は、古い枝やバランスの悪い枝を除去します。枝が密生している箇所を見つけて、余分な枝も取りのぞきましょう。
この作業を行うことで、カシの日当たりと風通しがよくなります。そして、病害虫の予防にも繋がるので、欠かせません。
カシの自然樹形を保ちつつ、バランスのとれた姿で育てられる、おすすめの剪定方法です。
『棒ガシ仕立て』は、横に成長する枝を剪定し、株立ちにする方法です。余計な枝がない分、葉の生育も早くなり目隠しになるでしょう。また、シンプルな樹形になるので「植え付けスペースを確保できないけれど、カシの木をシンボルツリーにしたい」という方に向いている方法です。
『寸胴仕立て』は、カシの木の樹高をおさえたいという方におすすめです。主幹を好みの高さで剪定し、カシの木の成長をストップさせます。主幹とのバランスを見ながら、横枝も短く刈り込みましょう。
カシの木は、比較的丈夫な種類が多いので、強剪定の適期を間違わなければ、枯れることはほとんどありません。剪定に少しずつ慣れていき、美しい樹形のカシを育てていきましょう。
カシ(樫)剪定のコツ
枝葉の多いカシの木を美しく整えるコツは、一枝に葉を三枚ほど残して枝先を切り詰める『三つ葉透かし』という方法です。
内芽の先で切り詰めてしまうと、立枝が伸びて混み入ります。
外芽の先から剪定し、不要な枝葉を間引いていきましょう。
ひとつの枝に葉を三枚ほど残して枝先を切り詰めるイメージです。
少々難易度が高く、手間がかかるので大変な作業になりますが、美しく満足のいく仕上がりになるはずですよ。

カシの病害虫
カシは枝葉が茂りやすいため、定期的に剪定を行わないと風通しが悪くなり、病害虫が発生しやすくなります。
カイガラムシやアブラムシが大量発生しないように『透かし剪定』や『間引き剪定』を行いましょう。
さらに、カシの害虫で心配なのが『カシノナガキクイムシ』です。
1cm足らずの昆虫ですが、カシの樹幹へと侵入し、フェロモンで仲間を集めます。
集団で菌を伝搬し、カシを枯死させてしまうほど迷惑な害虫です。若木のうちは心配いりませんが、直径20cmを越えるカシの木は要注意です。早めに薬剤などを使用し対策をとりましょう。
また、カシの木は「すす病・うどんこ病・紫カビ病・円斑病」など、葉に異変がでる病気にかかりやすい特徴があります。
葉が茂りすぎて風通しの悪い場所や、病気の葉は剪定し、被害が拡大しないように焼却するのがおすすめです。

まとめ
秋になると可愛らしい実「どんぐり」をつけるカシの木は、庭木として人気の樹木です。
剪定にも強く「自然樹形」、「シンプルな株立ち」、「コンパクトな樹高」、など、さまざまな姿で楽しめるので、植え付け場所にあわせて育てられるでしょう。
古くから日本に自生しているカシは、日本の風土にも適しています。丈夫で育てやすいカシの木をぜひ、育ててみましょう!
お庭に植える樹木選びから、剪定やお世話などはぜひ、庭のプロ集団『庭.pro』までご相談ください。綺麗な庭で皆様の暮らしが豊かになれば幸いです。
2024年1月30日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎








