カイガラムシとは
学名:Coccoidea カメムシ目カイガラムシ上科
カイガラムシの体長は1mm~3mmくらいで形状は丸いものや縦長のもの、体の表面が硬いタイプやフワフワしたタイプもいます。分類学上はカメムシの親戚で、これまでに国内で約400種が発見されています。成虫になった時に脚が退化して葉や枝に固着する種類と成虫になっても歩き回る種類がいます。前者には丸い偏平な殻を持ったマルカイガラムシ類、牡蠣の形をした殻を持ったカキカイガラムシ類、お椀のように丸く盛り上がったロウムシ類などがいます。後者は殻がなく体表が白い粉状や綿状の分泌物に覆われている種類でフクロカイガラムシ類やコナカイガラムシ類などがいます。カイガラムシは野菜、果樹、草花、サボテン、観葉植物と様々な植物に発生し、直接的な被害と間接的な被害があります。直接的な被害は付着しているカイガラムシそのものが美観を損ねることと、吸汁されるため生育に悪影響を及ぼすことです。寄生数が多いと新葉の出方が悪くなったり、枝枯れを起こすこともあります。間接的な被害はカイガラムシの排泄物の上に「すす病」が繁殖して葉が黒くなることです。美観を損なわれるだけでなく、植物にとって大切な光合成が妨げられ生育が悪くなります。
葉や枝、幹に白や茶色の点があったり、殻っぽい見た目のものだったり、白っぽいものが沢山ついている場合などはカイガラムシの可能性があるため、疑って何度か確認してみてください。
カイガラムシ発生時期
1年中いつでも発生する可能性がある害虫、カイガラムシ。退治する時期というのも決まっていませんので見つけ次第退治してあげるのが植物にとって一番良い方法です。時期にこだわらず、いつも大事な庭木や植物の様子を観察し、時々は葉の裏側をめくって観察してあげると良いですね。
カイガラムシの予防
一度カイガラムシが発生すると、何もしないとほとんどの場合翌年も発生します。
冬の間に薬剤を使用して翌年の発生を抑制します。冬季は植物が休眠状態にあるため、比較的強い薬剤を使用することが出来ます。
使用するのはマシン油乳剤です。12月~2月の晴れた日を選んで丁寧に散布して下さい。
農薬の一種でマシン油(機械用の潤滑油)が主成分であり、界面活性剤が加えてあります。水で希釈して、カイガラムシ類だけでなくハダニ類などの防除に用いることができます。商品名はマラソン乳剤、クミアイ機械油乳剤などです。毒物、劇物に該当しない農薬なのでホームセンター、園芸店などで普通に購入できます。多くの殺虫剤が害虫の神経系に作用して効果を表すのに対して、マシン油乳剤は害虫の呼吸口を物理的に封鎖して窒息させることにより効果を表します。なので害虫に薬剤耐性が生じる心配はないとされています。マシン油乳剤は成虫で越冬中のカイガラムシにも効果が期待できる薬剤です。
駆除の方法
基本的な駆除方法は捕殺です。
苦手な方にはかなり勇気のいる作業ではありますが、薬剤の効きにくい成虫に対しては最も効果的です。
枝や幹に付着しているカイガラムシを、ヘラやブラシを使ってこすり落として下さい。傷ついたカイガラムシからは体液が出てくるので、手袋を装着して作業を行います。
剪定可能であれば、カイガラムシが密集して発生している枝ごと剪定してしまうのもひとつの方法です。
成虫を見つけたらこすり落とす作業を繰り返すことになります。
幼虫であれば薬剤が効くので幼虫の発生時期は種によって異なりますが、おおむね5月~7月の時期に一度は産卵し羽化します。この時期に薬剤を使用することによって、カイガラムシを幼虫の時期に駆除することが出来ます。
薬剤としては5月~7月の間に2~3度、オルトラン水和剤(高い浸透移行性により、作物のすみずみに行き渡り、害虫をむらなく防除します。効果の持続期間が長く、省力的な害虫防除ができます)アクテリック乳剤(接触およびガス効果により速効的に効果を示す有機りん殺虫剤です)、アプロード水和剤(殺虫作用は脱皮阻害であり、幼虫の齢末期~脱皮時に死亡させる。殺成虫力は全くないが、産卵を抑制したり、ふ化しない卵を生ませることで次世代の増殖を少なくし、密度抑制に寄与する)などがあります。
2024年1月30日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎