庭木ヤツデの剪定を覚えてシェードガーデンの主役にしょう!
ヤツデの特徴でもある“天狗のうちわのような大きな葉”は、ひときわ目を引きます。目にする機会が多い庭木かもしれませんね。
ヤツデの葉は厚みと大きさがあるので、枝や幹が隠れてしまい、剪定の仕方が分からず「じつは一度も剪定していない」という方もいるかもしれません。
この記事では、ヤツデの剪定方法に悩んでいる方へ、コツやポイントを紹介するので参考にしてくださいね。
目次
ヤツデの基本情報
ヤツデの特徴
ヤツデの剪定のタイミング
ヤツデの剪定道具
ヤツデの剪定メリット
ヤツデの剪定方法
ヤツデの育て方
ヤツデの病害虫
病気 害虫
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
ヤツデの基本情報
属名:ヤツデ属
科名:ウコギ科
学名:Fatsia japonica
英名:Japanese Aralia
和名:八手
別名:テングノハウチワ
原産地:日本
樹高:約2~5m前後
区分:常緑低木
耐暑性:ふつう
耐寒性:やや弱い
開花期:10~12月頃
花色:白色
果実期:4~5月頃
剪定時期:2月~4月、10~12月
用途:庭木、公園樹など
花言葉:「健康」
ヤツデの特徴
ヤツデは耐陰性があるので、シェードガーデンの主役になる庭木です。
玄関の片隅や軒下の日陰スペースに、庭木として植えられているのをよく見かけますよね。
手のひらを広げたような独特な葉は”天狗のうちわ”に似ていることから、別名「テングノハウチワ」と呼ばれることも。
また、古来より魔物を追い払う力があると信じられてきました。
大胆な葉とは真逆に、花はちいさく可愛らしい印象。お庭の植栽が寂しくなってくる10~12月頃に淡色の花を咲かせます。
耐陰性のあるヤツデだけに、日陰でひっそりと咲いているイメージですが、開花の季節は濃緑と真っ白な花のコントラストを楽しませてくれるでしょう。
そして、翌年の春先になると紫色の実をつけます。
熟して美味しそうに見えるものの、ヤツデの葉・茎・根には「ヤツデサポニン」とう毒性が含まれているので、実は口にしないように注意しましょう。
いっぽうで、乾燥させた葉には薬効があり、咳止めやタンを抑える薬として活用されてきました。また、刻んだ葉を湯に入れたものは、リウマチに効果があります。
ヤツデは、古くから生活のあらゆるシーンで利用されてきたので、家屋に寄り添うような場所に庭木として植えられているのかもしれませんね。
ヤツデの剪定のタイミング
ヤツデの剪定は3年に一度を目安に行います。
一般的な庭木に比べて、剪定の回数が少ないので、手間がほとんどかかりません。
剪定を行うシーズンは「2~4月」または「10~12月」が適しています。
ヤツデの剪定をはじめて行う方は2~4月がおすすめ。この季節の剪定は、表皮がはがれにくく、ヤツデの回復も早いからです。
また、ヤツデは寒さに弱い傾向があります。10~12月の剪定はダメージをあたえすぎないように、葉の枚数を減らす程度にしておきましょう。
ヤツデの枝葉の成長が早い場合には、3年未満でも剪定して整えてくださいね。
■ヤツデを含めた、樹木別剪定時期年間カレンダーを作成しました。興味がある方は、ぜひご覧ください。
ヤツデの剪定道具
ヤツデに負担をかけずに剪定をするためには、適切な道具選びも大切です。
剪定前に、使いやすい道具を揃えておきましょう。
基本の道具は下記のものを用意しましょう。
・軍手
・剪定バサミ(植木バサミ)
・ノコギリ
・癒合剤
刃先から病気が感染してしまわないよう、事前にアルコールで消毒を済ませておきます。
太い枝を剪定した後には、細菌感染を防ぐ癒合剤をしっかりと塗りましょう。
殺菌と乾燥からヤツデを守る必須アイテムです。
剪定道具を選ぶ際は、自分が使いやすく手に馴染むものがおすすめです。
ホームセンターでは豊富な種類が販売されているので、実際に手に持ち、確認して購入しましょう。
ヤツデの剪定メリット
成長とともにバランスが崩れやすいヤツデは、剪定で樹形をコントロールできる点がメリットといえるでしょう。
ヤツデの大きな葉は、樹高を伸ばしながら枝先に茂っていきます。
剪定を怠ってしまうと、上にばかり葉が茂り、足元は”すかすかの状態”になるでしょう。上下のバランスが不均等になると、不格好な庭木へと仕上がります。
ヤツデの個性的な葉を活かした剪定を施し、存在感を際立たせてあげましょう。
また、剪定を怠るとカビが発生する心配があります。大きな葉は風通しを妨げる原因ともなるので、不要な葉は剪定で取り払うのがよいでしょう。
ヤツデの剪定方法
ヤツデのおすすめの剪定方法は「切り戻し剪定」・「間引き剪定」・「葉切り剪定」の3つです。
切り戻し剪定
伸びすぎた枝や幹は、切り戻し剪定で取り払いましょう。
このときに注意したいのは、根元から切るのではなく半分、または3分の1ほどで切り戻すことです。やがて、切り戻した枝先から若葉が芽吹きはじめます。
ヤツデは、枝先に葉を茂らせるので、”頭でっかち”の樹形になりがちです。
理想のバランスを作るためには、切り戻し剪定で整える必要があります。
間引き剪定
古くなった幹は、間引き剪定でスッキリとさせるのがおすすめです。
株立ちするヤツデは、いくつもの茎が分かれて立ち上がる特徴があります。混みあって風通しが悪くなるので、不要な枝や幹は切り落としましょう。
新しい茎を3~5本ほど残せば充分です。無駄な養分を奪われることがなくなったヤツデは、元気に成長していくはずですよ。
葉切り剪定
ヤツデの樹形を抑えたい際は、葉切り剪定がよいでしょう。
葉の枚数が少なくなったヤツデの成長が緩やかになります。
古くなった葉や茂りすぎた大きな葉を切り落とし、3枚ほどの若い葉を残しましょう。それだけで圧迫感を抑えられるはずです。
葉切り剪定の適期は、10~12月がおすすめ。翌年の葉の成長を小ぶりにできるので、樹形もメリハリがつくと思いますよ。
■剪定方法をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
ヤツデの育て方
ヤツデは手間がかからず、育てやすいイメージの庭木です。
育てる際のポイントをまとめたので参考にしてみてくださいね。
日当たり
ヤツデは日陰を好むイメージですが、1日に数時間ほど日が当たる環境を選びましょう。
まったく日の当たらない環境で育てると、貧弱な株に成長してしまいます。
また、乾燥を嫌うので、半日陰で湿り気のある土壌が適しています。
水やり
ヤツデの水やりは、基本的に必要ありません。土が乾いている場合は水をあたえてください。
肥料
とくに肥料をあたえる必要はありません。葉が変色している場合には、油かすなどを施しましょう。
植え付け
ヤツデの植え付けは5~6月頃が適しています。
大きな葉から水分が抜けてしまわないように、事前に葉切りをして植え付けるのがベスト。
黒土をベースに、赤玉土や腐葉土を混ぜ込み、”湿り気のある肥沃な土壌”を作っておきましょう。
ヤツデの病害虫
病害虫に強いヤツデですが、悪環境が長く続くと、病気や害虫が発生しやすくなります。
ヤツデが気をつけたい病害虫を紹介します。
病気
ヤツデが気をつけたい主な病気は「黄色紋羽病」・「黄斑病」・「炭そ病」です。
ヤツデが急にしおれはじめ、葉が黄色に変色しはじめたら黄色紋羽病、葉に斑点があらわれたら黄斑病の可能性があります。
そして、黒く変色した葉が枯れてくる炭そ病。
いずれもカビによる伝染病なので、早急に薬剤散布し、発症している箇所を切り離しましょう。
また、土壌の排水性を確認し、水はけが悪い場合は土壌改良の必要があるでしょう。
カビの発生を防ぐために、大きな葉を剪定し、風通しよくすることも大切です。
害虫
カイガラムシ
どんな植物にも発生しやすいカイガラムシは、ヤツデも注意が必要です。
乾燥が続くシーズンや場所は気をつけましょう。
カイガラムシは、葉や枝に大量発生し、樹液を吸って弱らせてしまうだけでも迷惑な害虫ですが、二次被害の「すす病」を併発させてしまいます。
被害が大きくなるまえに早期発見し、適切な対処を施しましょう。
幼虫には、牛乳を薄めたスプレーや薬剤散布が効きますが、成虫にはあまり効かないので、歯ブラシやヘラを使ってこすり落とす方法が適していますよ。
■害虫対策をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
まとめ
「シェードガーデンの一角に、手間のかからない庭木を探している」という方にヤツデは向いています。
剪定は3年に1度を目安に行うだけなので、一般的な庭木に比べると、はるかにローメンテナンスです。
大きな手を広げたような葉は、人をたくさん招く「千客万来」を意味していると捉えられ、縁起がよい木として親しまれてきました。
ご自宅のお庭の片隅に、縁起を担いで「ヤツデ」を植えてみるのもおすすめですよ。
もしヤツデのお手入れで困った場合は、庭のプロ集団『庭.pro』へご相談ください。
皆様のお庭づくりのお手伝いができれば幸いです。
2024年1月29日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎