秋には鮮やかな黄色い葉で、私たちの目を楽しませてくれるのがイチョウ(銀杏)の木です。
「枝が複雑に絡まり合っていて剪定できるかな」
「どの枝から剪定したらいいんだろう」
など、イチョウの剪定方法がわからずお困りではありませんか。イチョウの枝は成長が早く複雑に絡まり合うため、剪定方法がわかりにくい庭木です。
そこでこの記事では、イチョウの木の剪定の時期や剪定方法、育て方のコツなどを、プロの庭師が伝授いたします。
正しい方法で剪定できると形が整うため、希望通りの大きさに仕立てられます。ぜひこの記事を読んで、イチョウを剪定する際の参考にしてくださいね。
目次
イチョウ(銀杏)の木の基礎知識
イチョウ(銀杏)の木の特徴
イチョウ(銀杏)の木を剪定する時期は?
イチョウ(銀杏)の木の剪定方法
摘芯(てきしん) | 切り詰め剪定 | 透かし剪定
イチョウ(銀杏)の木を剪定するコツ
イチョウ(銀杏)の木を剪定するときの注意点
イチョウ(銀杏)の木の育て方
ギンナン(種子)の利用方法
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
イチョウ(銀杏)の木の基礎知識
イチョウの木は、夏はきれいな緑の葉を付け、落葉時には黄に色づく庭木です。種子は硬い殻におおわれていますが、熱を加えると食べられます。茶碗蒸しに入っている「ギンナン」と言えばご存知の方が多いのではないでしょうか。
学名:Ginkgo biloba
科名:イチョウ科
属名:イチョウ属
原産地:中国
和名:イチョウ
英名:Ginkgo,Maidenhair Tree
別名:ギンキョウ、ギンナン、ギンナンノキ
開花時期:4月~5月
花色:緑
植付時期:2月~3月、11月~12月
耐暑:強い
耐寒:強い
剪定時期:2月~3月、11月
樹高:30m
常落区分:落葉樹
日照:日なた
記念樹:帯祝い、入学・入社祝い、創立記念などに向いています。詳しくはこちらから。
花言葉:「荘厳」「長寿」「鎮魂」
イチョウ(銀杏)の木の特徴
枝や幹の成長が早いことが、イチョウの木の特徴です。小さく剪定しても、成長の早さに追い越され、大きくなりすぎる可能性があります。剪定する際は、成長の早さを頭に入れながら樹形を整える必要があるでしょう。
また、花粉を出す雄の木と実がなる雌の木があることも特徴です。花粉は遠くまで飛ぶため、一本だけでも実がなる可能性はあります。しかし片方の性別の木だけでは、なかなか実がつきません。イチョウの実を楽しむためには、両方の性別の木を一緒に植えると良いでしょう。
イチョウ(銀杏)の木を剪定する時期は?
イチョウの木を剪定する時期は、芽吹く前の2~3月頃、もしくは落葉後の11月頃が良いでしょう。葉が落ちているために、木全体を見通して剪定できます。
また落葉中は、イチョウが休眠期に入るため、木へのダメージが少なくて済みます。剪定のせいで枯れてしまわないように、落葉中の作業がおすすめです。
イチョウの木も含めた、樹木別剪定時期年間カレンダーを作成しました。興味がある方は、ぜひご覧ください。
イチョウ(銀杏)の木の剪定方法
イチョウの木の剪定方法には、以下の3つがあります。
・摘芯(てきしん)
・切り詰め剪定
・透かし剪定
3種類の剪定方法を使い分けて、イチョウの枝を切り込みます。それぞれについて、くわしく解説します。
摘芯(てきしん)
摘芯(てきしん)とは、上に伸びる幹の芯を切る作業を指します。イチョウの木が今以上に伸びて、高くなることを防ぐ目的があります。
芯が止まると幹が上に伸びることはないので、樹高が管理しやすいです。イチョウの木が、目標の高さに達したら行うと良いでしょう。
切り詰め剪定
切り詰め剪定は、樹形を整えるために行います。長く伸びた枝や、内側に向いた枝など不要な枝を切り詰めます。
木全体を見て、残した枝は根元から切らずに、途中から切ると良いでしょう。外側に向いている新しい芽を残すと、樹形が整いやすいです。
透かし剪定
枝や葉が、混み合っている場合に行う剪定方法で、間引くように剪定し、風通しや日当たりを改善します。摘芯と切りつめ剪定で、ある程度樹形を整えた翌年から行います。
■剪定方法をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
イチョウ(銀杏)の木を剪定するコツ
イチョウの木の剪定のコツは、清潔なハサミを使うことです。切り口から、ばい菌が入りにくくなります。また、晴れた日の午前中に剪定することで、傷口を日光で消毒できる効果が期待できます。
ちょっとした気遣いでイチョウの健康を保てるので、ぜひお試しください。
イチョウ(銀杏)の木を剪定するときの注意点
イチョウの木を剪定するときの注意点には、以下の3つがあります。
・アレルギー性皮ふ炎になる可能性がある
・成長が早く何度も剪定する必要がある
・落とした枝の処分を考える必要がある
イチョウの木は特有の注意点があります。正しく理解して剪定に活かしましょう。
アレルギー性皮ふ炎になる可能性がある
イチョウの種子をおおっている果肉には、アレルギー性皮ふ炎を起こす物質が含まれています。果汁が皮ふに触れると、かぶれる可能性があります。対応策としては、作業時に軍手ではなくゴム手袋を使うことです。
間違っても、作業した手で汗などを拭ってはいけません。剪定の際には皮ふを露出しないよう注意が必要です。
成長が早く何度も剪定する必要がある
イチョウの木は生命力が強く、成長が早いため、毎年のように剪定する必要があります。そのままにしておくと、あっという間に家よりも大きな木に成長するでしょう。
そのため、何度も剪定することを前提に、作業時間の確保や樹形を考える必要があります。自分で作業し続けるのが難しそうであれば、業者へ依頼することを検討すると良いでしょう。
落とした枝の処分を考える必要がある
イチョウの木を剪定した際には、処分が必要な枝が大量に発生します。剪定した枝は、そのままにしておいても、葉っぱと異なり腐りにくく、お庭のスペースを狭くしてしまったり、景観を損ねてしまったりするでしょう。
そのため落とした枝は、専用の処理施設で処分します。処理施設に持って行くには、トラックなどの枝を積める車が必要です。トラックを自分で持っていない場合は、リース料と処理料を合わせた費用を見積る必要があります。
イチョウ(銀杏)の木の育て方
イチョウの育て方を、日当たり・水やり・肥料の面からそれぞれ解説します。
日当たり
イチョウの木は日当たりを好みます。乾燥・耐暑・耐寒に適応できるので、比較的どのような場所でも育ちます。ただし、成長が早く大木となりやすいです。植える際には大きなスペースを確保すると良いでしょう。
水やり
地植えの場合は水やりが不要で、自然の雨のみで育ちます。植えて間もない場合は、乾燥が続くようであれば水やりを行うと良いでしょう。鉢植えの場合は、土が乾いたら水やりを行います。
肥料
イチョウは肥料を多く与える必要はありません。広く根が張るので、広範囲から栄養を吸収できるためです。
肥料を与える場合は、窒素成分の与えすぎに注意が必要です。イチョウの木の特徴である、鮮やかな葉の色が付きにくくなってしまいます。
ギンナン(種子)の利用方法
ギンナンの利用方法は、食用とする場合と、種として利用する場合の2通りがあります。いずれの場合も、ギンナンを扱う場合は直接手で触れないよう、ゴム手袋を着用するなど注意が必要です。それぞれについてくわしく解説します。
食用として利用する
イチョウの種子であるギンナンは、9~10月頃に収穫可能です。食用とする場合は、実がついたまま水につけておきます。実を腐らせ水で洗い流し、乾燥させます。乾燥させたギンナンは熱を加えることで殻が割れ、食用部を取り出すことが可能です。
茶碗蒸しや炊き込みごはんなど秋の味覚として楽しめるギンナン。もっちりとした食感がクセになりますが、食べ過ぎには注意しましょう。ギンナンは食べ過ぎると、中毒を起こすこともあります。けいれんや嘔吐などの症状が起きることもあるので、一度に多くの量を食べるのは避けましょう。特にお子様には注意が必要です。
■参考
ギンナンの食べ過ぎに注意しましょう(日本中毒情報センター)
種として利用する
イチョウの種子は種としてまくことで、苗木から育てられます。種まきの時期は、収穫後に実を取り除いてすぐ、もしくは翌春です。
イチョウの種子は、2本の筋があるのが雄で、3本の筋があるのが雌です。両方の性別の木がお庭にあると実の付きがよくなるので、収量を増やしたい方は雄雌を把握して植えることをおすすめします。
まとめ
非常に観賞価値の高いイチョウの木。しかし、成長の早さと実の匂いに問題を抱える庭木でもあります。
そのため、イチョウが大きくなりすぎないように、木が小さいうちから計画的な剪定を検討したいところです。庭のプロ集団『庭.pro』であれば剪定の相談から枝葉の処分まで、イチョウのお手入れに関することなら全て対応できます。
見積もりも無料ですので、ぜひ気軽にご相談ください。皆様のお庭づくりのお手伝いをさせていただければ幸いです。
2024年1月29日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎