シラカバ(白樺)は、北海道や信州に多く分布する樹皮の白い高木です。北八ヶ岳の東麓に広がる八千穂高原や、北海道十勝の白樺並木などが有名ですね。
シラカバは庭木にとり入れると樹皮の白さや新緑の清々しさ、黄葉の美しさ、冬には葉を落とし日光を地表まで届けてくれるため、一年を通して庭を明るい印象にしてくれる落葉樹です。
反面、成長が早く樹高も高いため、剪定を怠ると大きくなりすぎて手が付けられなくなってしまうことも。テッポウムシの被害にもあいやすく、放置しておくと倒木の危険もあります。また、シラカバは花粉症を引き起こす植物にも該当します。
とはいえ、春には黄色い花をつけ、夏には三角形の美しい葉が生い茂り、樹の下には涼やかな木漏れ日がうまれ、秋には実をつけ黄葉するシラカバは、四季を通して変化を楽しめる庭木です。
このページでは、シラカバ(白樺)の剪定の時期や剪定方法、育て方のコツなどを、プロの庭師が伝授いたします。
目次
シラカバ(白樺)の特徴
シラカバ(白樺)の剪定時期
シラカバ(白樺)の剪定をしてはいけない時期
シラカバ(白樺)の剪定方法
シラカバ(白樺)が枯れる原因
シラカバ(白樺)の肥料
シラカバ(白樺)の病気と害虫
シラカバ(白樺)の増やし方
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
シラカバ(白樺)の特徴
シラカバ(白樺)とはどういった特徴をもつ木なのでしょうか。
分類: 落葉高木
科名: カバノキ科
属名: カバノキ属
原産地: 温帯から亜寒帯地方。日本では本州中部以北、北海道。
樹高: 高木(8〜25m)
葉張り幅: 5m
常落区分: 落葉性
日照: 日なた
耐暑: 弱い
耐寒: 強い
開花期: 4月~5月
花色: 黄、緑(鑑賞向きではない)
果実熟期: 9月~10月
果実色: 褐色(食用ではない)
用途:庭木、シンボルツリー
和名: シラカンバ
学名: Betula platyphylla Sukaczev
英名: White Birch・Japanese White Birch
別名:シラカバ
剪定時期: 11〜2月
花言葉: 「いつまでもあなたを待ちます」「忍耐強さ」「光と豊富」「柔和」
シラカバ(白樺)の、標準和名は『シラカンバ』ですが、一般的には『シラカバ』の呼び名で親しまれています。
自然界のシラカバは山火事や土砂崩れなど、山が傷を負ったときに真っ先に芽吹く生命力の高い樹木です。しかし成長が早い反面、寿命が短く害虫被害にも遭いやすい面もあります。
落葉樹のシラカバは、春になると開花と同時に5〜8㎝ほどの丸みのある三角形の葉を茂らせ、秋には成熟した実と葉が落ちます。葉の黄葉は美しく魅力的。ですが、高原ならではで、平地の住宅地で庭木として美しく色付くことは難しいと言われています。
園芸品種の中には『シラカバ・ジャクモンティー』など、九州などの暖かい地域でも育ち、若木のうちから幹が白く、自然種のシラカバより少し小ぶりに育つ近縁種もあります。これから平地の住宅地でシラカバを庭木に取り入れたいとお考えの方には、ジャクモンティーがおすすめです。
また、シラカバはアレルギー症状を引き起こす点にも注意が必要です。シラカバ花粉の飛散時期は4~6月、アレルギー体質の方は気をつけましょう。
シラカバ(白樺)の剪定時期
シラカバ(白樺)の剪定は、冬季(11〜2月)が適期です。葉が落ち休眠期に入ってから剪定を行うことで、木への負担が少なくてすみます。
庭木として楽しむときは、シラカバは成長が早いうえに樹高が高くなる性質があるため、管理できる高さで早めに芯を止めましょう。その後は芯の切り替えをして樹高を低く抑えていきます。
シラカバ(白樺)お手入れカレンダー
月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
開花期 | ● | ● | ||||||||||
果実熟期 | ● | ● | ||||||||||
植え付け | ● | ● | ● | ● | ● | |||||||
植え替え | ● | ● | ||||||||||
肥料 | ● | |||||||||||
剪定 | ● | ● | ● | ● |
シラカバ(白樺)の剪定をしてはいけない時期
シラカバ(白樺)の剪定に不向きな時期は、多くの樹木と同じ真夏です。夏は樹木が成長するためにエネルギーを消費していることに加え、高温多湿で雑菌の繁殖が活発な時期です。
落葉樹のシラカバは、多くの葉を茂らせる夏場、幹の栄養を枝葉に分散させています。夏に剪定をおこなうと幹の体力が落ちてしまいます。また、切り口が塞がりにくいシラカバに雑菌は大敵。夏の剪定は控えましょう。
シラカバ(白樺)の剪定方法
シラカバ(白樺)は、自然の樹形を楽しむのが良しとされていますが、庭木として育てる時は大きくなり過ぎないよう毎年整枝することが大切です。自然の樹形を残しつつ、樹芯の高さをおさえるためには、短い樹芯を残して長いものを切り落とし、芯を切り替えながら育てます。
剪定は、ふところに向かって伸びる伸びる逆さ枝や、混み合っている枝、絡み枝、伸びすぎた枝を切り落とし、枯れ枝を払う程度にして、樹冠が卵型になるよう整枝します。枝を切り戻すときは、1/4程度が目安です。
また、下向きの枝を残すと木の勢いが衰えてしまうので気をつけましょう。根元近くから出た枝や、剪定後に徒長枝が出ていたときも切り落とします。
枝を切る時は枝分かれしている枝の付け根いっぱいで切りましょう。枝が太るにつれて切り口がふさがってきます。
切り口には必ず保護剤を塗るようにしましょう。
シラカバ(白樺)が枯れる原因
シラカバ(白樺)はどのような土地にでも生え、成長も早い樹木ですが、剪定で枯れ込むデリケートな側面も持ち合わせています。また、塩害や煙害にも弱い性質があり、台風などの影響で枯れてしまうことも。
剪定をおこなう面では、切り口が塞がりにくく雑菌が侵入しやすいため、切り口から腐ることがあります。強剪定が不向きなので、幹を剪定する場合は直径5㎝以下のときにおこない、切り口には必ず保護剤を塗りましょう。
シラカバ(白樺)の肥料
シラカバ(白樺)は肥沃な土地を好みますが、山火事や土砂崩れなど、山が傷を負ったときにでも育つ生命力の強い樹木です。火山灰地や砂地でも育つことができ、それほど土質を選ばず植えられます。
肥料は特に必要ありませんが、若木のうちは油かすなどを少量与えても良いでしょう。
シラカバ(白樺)の病気と害虫
シラカバ(白樺)の天敵はなんといってもテッポウムシです。テッポウムシはカミキリムシの幼虫で、産卵時期は6~10月。産み付けられた卵は1週間ほどで孵化し、幹の内部の柔らかい部分を食い荒らします。1~2年かけて木の内部を食べながら成長し、5~6月頃成虫になります。樹木内部の食害のため発見しにくく、見つけたときには刻すでに遅しなこともあるので注意が必要です。
株元に木屑のようなものが落ちていないか、枯れ枝が急に増えていないか、木屑の付着した穴がないか、日頃からよく観察しましょう。食害を見つけた場合、市販のテッポウムシ用殺虫剤で駆除できます。
しかし、食害が進行してしまっている場合、強風などで倒木の心配があります。専門家に駆除依頼&樹木の健康診断依頼をおすすめします。
シラカバ(白樺)の増やし方
シラカバ(白樺)は種から増やすことができます。シラカバは成長すると花を付けるようになります。花は春に咲き、秋に熟して枝にぶら下がります。カラカラに熟した実を採取してタネを採り、土にまいて薄く土をかぶせ落ち葉などをかぶせます。極端な乾燥を避け生育させると、翌年4月以降に発芽し、秋には20㎝程の高さに育ちます。また、園芸品種は接ぎ木で増やせます。
苗木を購入し植え付ける場合、植え付けの適期は2月中旬~3月です。苗木の背丈が大きい場合は支柱を添えましょう。シラカバは細根がやや少なめで移植を嫌うため、植え付け場所ははじめにしっかりと計画しましょう。一度根付いてしまったら、植え替えは難しい樹木です。
まとめ
シラカバ(白樺)は、樹皮の白さが際立つ美しい木です。北海道や高原に自生する姿に憧れを抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、シラカバは高木になりやすく枝張りもしっかりボリュームがあるため、狭小地の庭木にはあまりおすすめできません。裏を返せば、広大な土地にはよく似合い、気持ちの良い木漏れ日を作ってくれます。雑木林のような、大らかなお庭をご検討されるときに、植栽をご検討してみてはいかがでしょうか。
お庭に植える樹木選びから、剪定やお世話などまで、庭のプロ集団『庭.pro』までご相談ください。綺麗な庭で皆様の暮らしが豊かになれば幸いです。
2024年1月29日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎