今人気の「雑木の庭」。住宅情報誌やオシャレなお庭の代表例としてよく目にします。
風にそよぐ爽やかな雑木をマイホームの庭に植えてみたいけれど、手入れや樹種の選び方など、ちょっとハードルが高いとお感じではありませんか?
こちらの記事では憧れの雑木の庭の「庭づくりの注意点」や「失敗しない剪定や手入れの仕方」に「お勧めの雑木」を、分かりやすく解説したいと思います。
目次
雑木とは?
雑木の庭づくりのコンセプト
雑木の庭のメリット
①天然のオーニング(日よけ)に | ②目隠しにもなります | ③四季の移ろいを楽める
雑木の庭のデメリット
①高木に注意 | ②根っこの破壊力 | ③ご近所迷惑にならないように
雑木の庭づくりの方法とポイントを解説
①雑木の庭の土づくりのポイント | ②雑木が好む日照のポイント | ③植え方のポイント
雑木の剪定方法
①透かし剪定がおすすめ
刈り込みは基本的にNG | 透かし剪定とは | 剪定する場所は?
②剪定に使う道具
剪定手袋 | 作業服 | 剪定バサミ | 庭木バサミ | 剪定ノコギリ | 脚立
狭い庭でも植えられるおすすめの雑木5選
狭い庭におすすめの雑木①アオダモ
狭い庭におすすめの雑木②ソヨゴ
狭い庭におすすめの雑木③常緑ヤマボウシ
狭い庭におすすめの雑木④ヒュウガミズキ
狭い庭におすすめの雑木⑤コハウチワカエデ
まとめ
やっぱりプロに依頼したい方
雑木とは?
雑木(ぞうき)とは、ごく普通の野山に生える樹木のことです。スギやヒノキのように建材にするために植林した樹種ではなく、火にくべる薪にする以外に、これといった利用価値があるわけでもありません。ただ、そこに生えているだけの「役に立たない木」という意味で、雑然と生える木=雑木と呼ばれています。
雑木の庭づくりのコンセプト
そのように価値のないとされる「雑木」を、現代のマイホームの庭や玄関アプローチに植える意味は何なのでしょうか。商材として役に立たないから「価値がない」と言われている雑木ですが、本当に価値がないわけではありません。
里山の風景は、昔から人々の暮らしの身近にありました。里山を離れ、都市部で暮らすようになって久しい令和の現代人であっても、雑木林の風景は心のふるさととして、誰しもの心の中にあるのではないでしょうか。
ふるさとの雑木の風景が、マイホームの庭にあったなら・・・。ストレスの多い日々を優しく癒してくれそうですよね。
雑木の庭のメリット
すがすがしい緑の香りで、癒しの効果が得られそうな雑木の庭。雑木の庭づくりにより、嬉しい自然の恩恵もあるようです。雑木の庭にはどんなメリットがあるのか見てみましょう。
①天然のオーニング(日よけ)に
雑木は、成長期の春から夏かけて、目にも鮮やかな青葉が茂り暑い日差しを遮ります。庭に木漏れ日を作ってくれる樹木のことを「緑陰樹」といいます。いわば、自然のオーニングなのです。落葉樹なら、秋になり紅葉し、葉が落ちれば、また日差しが空から降り注ぎ、冬の庭を明るくしてくれます。
②目隠しにもなります
雑木でうまく庭づくりすれば、目隠しとしての役割も果たします。庭にあまり人工的な外構物を置きたくないご家庭で、他人の目からプライバシーを守りたい時に、雑木を植えれば天然の目隠しとしての役割をします。
お隣の二階からの視線を遮りたいときも、雑木なら5m~10mの高さで、さりげなく目隠しすることも可能です。もし隣家との境界に、これ見よがしにそびえ立つフェンスを建ててしまうと、相手に威圧感や不信感を抱かせるものですが、雑木なら一見、目隠しに見えないので、角が立たないかもしれませんね。
③四季の移ろいを楽める
雑木には落葉樹が多く存在します。春には、芽吹きの明るい色を、夏には、爽やかな青葉と木漏れ日、そして秋になれば美しい紅葉を楽しめます。冬の落葉後の、幹の美しさも鑑賞ポイントです。花木なら季節の花が咲き、雑木に小鳥たちが集まる庭になるかもしれません。雑木の庭づくりをすると、四季の移ろいを身近に感じられ、大人はもちろんのこと、お子さんの情操教育にも一役買いそうですね。
雑木の庭のデメリット
一方、雑木の庭にはデメリットもあります。樹木なので草花と違い、樹種にもよりますが、かなり大きくなるのでスペースを取ってしまいます。どんなデメリットがあるのか具体的に見てみましょう。
①高木に注意
ケヤキやコナラ、クスノキといった、雰囲気がよくて巨木になる雑木を植えたい場合は、よく考えて、必ず距離を取って植えましょう。巨木になるタイプの樹種を気軽に植えると、後々大変なことになります。
枝葉が屋根の上までうっそうと茂ると、庭が薄暗く、風通しが悪くなり、湿気がこもってカビやコケ、害虫が出やすくなるかもしれません。電線に引っかかるのも心配です。また、数年間剪定せずに放任すると、樹高が高くなりすぎて手持ちの脚立では届かなくなり、枝も硬すぎてご自分で剪定できなくなります。
②根っこの破壊力
雑木が幼苗の時に、建物ギリギリに植えてしまうと、何年か後に大きくなりすぎて、根っこで建物の基礎を持ちあげてしまうこともあります。取り除こうにも建物の基礎を壊さないと伐根できない、などという失敗を起こさないようにしましょう。最低でも建物から2~3mは離して植えたほうがよいでしょう。同様に、狭い花壇に樹木を植えると、大きくなりすぎて伐採・伐根を考えた時に、せっかく作った花壇ごと破壊しないと取り除けなくなってしまいます。
③ご近所迷惑にならないように
また、雑木の庭で一番心配されるのが「落ち葉」の失敗ではないでしょうか。樹木には落葉樹と常緑樹があるのはご存じかと思いますが、常緑樹だからと言って落葉しないわけではありません。道路に枯葉が落ちているくらいでは、近所の方もそこまで目くじらを立てないと思いますが、隣家の敷地内に大量の落ち葉が降ってしまうのは大問題です。
自宅の玄関アプローチの動線を広く取りたいがために、隣地との境界ぎりぎりに植木を植えるのは非常識です。落ち葉だけでなく、向きによっては日照権の問題にも発展しかねませんので、注意しましょう。
雑木の庭づくりの方法とポイントを解説
それでは、雑木の庭づくりの方法とポイントを見てみましょう。庭づくりするのは、あくまでも「雑木(風)の庭」なので、雑木の定義にこだわらず、気に入った樹種があれば、花木でも何でも植えてよいと思います。雑木を植える際にどんな点に注意すればよいでしょうか。
①雑木の庭の土づくりのポイント
まず、雑木の庭づくりの前に、水はけのよい土地なのか大雨の後に見てみましょう。水たまりが数日間引かないようなら、あまり雑木の庭に適していないかもしれません。盛り土や排水工事などして水はけをよくする必要があるので、造園専門業者に土壌診断をしてもらいましょう。
どんな植物でもそうですが、土づくりが肝心です。土壌には「固相(土)、水相(水)、気相(空気)」があり、バランスよく保てていれば、よく育ってくれます。粘土質の土壌の場合は、腐葉土などの有機物をたっぷりすき込んで、通気性と保水性をよくします。また有機物の分解により土の団粒構造が発達すれば、雑木の根張りがよくなるでしょう。
土の状態や土づくりの方法がよく分からない場合は、庭師さんや造園業者さんに相談してみましょう。
②雑木が好む日照のポイント
樹木には、日当たりを好むものと、半日陰でもよく育つものとがあります。森や林に入った時に、幹がずっと天まで伸びて、上のほうに葉を茂らせているのを見たことがないでしょうか。一方ではその株元で、日陰でもいきいきとしている小さい樹木もあります。
日光を好む樹種には、シマトネリコ、シラカバなどがあげられ、日陰にも強い樹種には、カエデ類やジンチョウゲなどがあります。そして、日光は好きなのに、強い直射日光で幹焼けを起こしてしまうトチノキやハナミズキなどもあります。
雑木のほとんどは日照を好みますが、樹種によっては植えるのに適した場所が限られるかもしれません。植えたい樹種の日照の好き嫌いが良く分からない場合も、庭師さんや造園業者さんにお任せした方が安心ですね。
③植え方のポイント
雑木の庭づくりのマストルールは「ナチュラル=自然」であること。不自然にならないようにするのが成功のポイントです。落葉樹と常緑樹をバランスよく配置するのもおすすめです。冬の落葉期に、すべて葉が落ちると寂しい庭になってしまうので、ところどころに常緑樹があるとよいでしょう。
雑木には高木、中木、低木と、樹高が異なる樹種があります。同じ背の高さの樹種を、同じラインにずらずらと整列する様に並べて垣根のようになるのは不自然でNGです。高低差をうまく使いましょう。高木は下枝をすっきりさせて幹を見せ、そこに低木を添えるように植えれば狭い場所でも立体感が生まれます。
樹木を連続して植えるのではなく、フリースペースも設けます。余白部分があることで、よりナチュラルに仕上がり、歩く人の動線も確保でき、日差しも降り注ぎ、風通しもよくなりますよ。
雑木の剪定方法
お気に入りの雑木を選んで、庭づくりが完成したところがゴールではありません。雑木の庭はここからがスタートです。適切な時期に適切な方法で剪定をして、何年経っても美しく維持できるように、上手に管理することが大切です。
①透かし剪定がおすすめ
雑木にはいろいろな樹種があり、初心者は剪定方法が分からず不安になりますよね。実は、樹種が違っても、剪定の基本的な仕方は数パターンしかありません。その中でも初心者でも簡単に、適切に剪定できる方法が「透かし剪定」です。
・刈り込みは基本的にNG
雑木の庭は、ナチュラルな自然樹形が魅力なので、刈り込みバサミで生垣のようにまっすぐに刈りこむと、せっかくの雑木の風情が台無しになってしまいます。あくまでも「ナチュラルに」が、雑木の庭づくりのマストルールです。
また、花が咲く樹木だと、剪定時に「まだ目に見えない花芽を落としてしまうのではないか」と不安になりますよね。花木は枝先に花芽が付くものが多いので、表面を刈り込むと花芽ごと落とし、失敗してしまいます。
・透かし剪定とは?
透かし剪定は、自然の風情を大事にしながら、樹高を抑えるよい方法です。枝の付け根から不要な枝を間引いて透かします。これなら花芽をすべて落としてしまう失敗も防げます。なぜなら、部分的に透かして間引くようにすれば、切る枝と残す枝があるので、すべての花芽を落としてしまう失敗を防げるからです。
透かし剪定や強剪定を行う時期は、落葉後の冬剪定が基本です。常緑樹も冬が停滞期なので同時期に行うとよいでしょう。寒さに弱い樹種では、真冬の厳寒期は避け、12月までか、2月下旬~3月頃に行うとよいでしょう。
まんべんなく透かすことによって、樹木の内側にも風が通り、日の光が差し込むようにすなば花付きもよく健康的に育ちます。向こうの空が少し見えるくらいに、ふところを透かすのがポイントです。
・剪定する場所は?
樹種によって、多少切る場所は変わってきます。たとえば、画像のような「株立ち樹形」が魅力の樹木であれば、人の目線から下の枝は取り払い、すらりとした幹を見せるようにします。
基本的に剪定は、込み合った枝や交差枝、内側に生える内向枝、地面から生えるひこばえ、伸びすぎた徒長枝などの不要な枝を、付け根で切り落として透かしていきます。枝の途中で切ると、そこから不定芽が発生し、樹形を乱しますので、必ず付け根から切るようにしましょう。
針葉樹にはハサミの金属を嫌うものも多く、ハサミで切ると葉が茶色く変色してしまう樹種もあるので、樹形ラインから少し奥まったところで切ると、葉が茂ってくれば、傷んだ切り口を隠してくれます。針葉樹は葉のないところまで深く切ると復活しなくなりますので注意しましょう。
樹種によって個性を生かす剪定をするのが、初心者には少し分かりにくいかもしれません。木をダメにする前に、できれば最初だけでも庭木に詳しい専門業者に剪定してもらい、一緒に見てご自分でもできるか教えてもらうとよいかもしれませんね。
②剪定に使う道具
雑木の庭の剪定を自分で行いたい場合は、まずは道具を揃えましょう。初期費用はかかりますが、長い目で見れば業者に頼むよりも剪定費用を抑えることができるかもしれませんね。ここでは剪定に必要な道具をあげてみます。
・剪定手袋
手のひら側に樹脂コーティングされたものがおすすめです。作業で滑りにくく、ささくれや木の割れによるケガ、樹液かぶれなどを防ぎます。
・作業服
剪定用の作業服を一つ持っておくとよいでしょう。樹種によっては洗濯しても落ちないアクがあります。高所作業では危険を伴うのでケガなどないよう、上着、ズボン、長靴など体に合ったものを選びます。
・剪定バサミ
ペンチのような形をしていて、直径2cmくらいまでの枝を簡単に切ることができます。
・庭木バサミ
細い枝しか切れませんが、刃先が細いので細かい剪定を得意とします。
・剪定ノコギリ
直径2cm以上の枝や、幹を強剪定する時に使うノコギリで、木工用のノコギリとは違い、刃が細身なのが特徴です。
・脚立
背の高い部分の剪定に使います。市販品だと4~5mが限度です。それ以上の高木なら専門業者に依頼しましょう。
狭い庭でも植えられるおすすめの雑木5選
「雑木の庭なんて地主じゃないと無理」と思っていませんか?林や裏山を所有していないご家庭でも、雑木の庭づくりは可能です。しかし、一般的な住宅街では樹高5m前後に抑えたいところです。狭い庭でも植えられる雑木の樹種を5つご紹介します。
狭い庭におすすめの雑木①アオダモ
アオダモは、すらりとしたまだら模様の株立ちの幹が特徴です。高木ですが成長が緩慢なので、2mくらいのものを植えれば、さほど高くならずに樹高をキープできます。
狭い庭におすすめの雑木②ソヨゴ
ソヨゴは、ソヨソヨと風になびく葉と、雌木なら赤い実がなる人気の樹木で、和風にも洋風にもよく合う常緑樹です。生長が遅いので初心者でも管理がしやすい樹木です。単幹仕立てか、株立ちにも仕立てられます。
狭い庭におすすめの雑木③常緑ヤマボウシ
最近人気の常緑のヤマボウシで、初夏に白い花をたくさんつけて見事です。常緑と言っても半常緑で厳寒期に葉を落とすこともありますが、コンパクトであまり剪定しなくても自然に樹形が整います。
狭い庭におすすめの雑木④ヒュウガミズキ
雑木の庭の低木におすすめの花木です。高木の合間に植えると、狭い庭でも雰囲気よくまとまります。ヒュウガミズキやトサミズキは放任でも樹形がまとまりやすいのもポイントです。
狭い庭におすすめの雑木⑤コハウチワカエデ
美しい紅葉を楽しみたいなら、モミジやカエデがおすすめです。中でもコハウチワカエデなら、生長も遅くコンパクトにまとまるので狭い庭でも植えられます。ふっくらした葉がかわいく、和洋を問わず植えられますよ。
まとめ
いかがでしたか?こちらの記事では、憧れの「雑木の庭」の「庭づくりの注意点」や「失敗しない剪定や手入れの仕方」、狭い庭でも植えられる「お勧めの雑木」を、分かりやすく解説してみました。
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2024年1月25日更新