三大銘木をスムーズに剪定するタイミングとコツ
庭木三大銘木のひとつ「モチノキ」は、庭木の定番です。秋になると、鮮やかな赤い実をたわわにつけ、愛らしい光景を見せてくれるでしょう。
「成長がゆっくりなので、剪定をしないまま放置している」という方の声もよく聞きますが、最終的には10mほどの高さになる樹木です。
この記事では、モチノキの剪定のタイミングやコツを紹介します。
目次
モチノキの基本情報
モチノキの特徴
モチノキの剪定のタイミング
モチノキの剪定道具
モチノキの剪定メリット
モチノキの剪定方法
モチノキの育て方
モチノキの病害虫
すす病
カイガラムシ
ハマキムシ
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
モチノキの基本情報
属名:モチノキ属
科名:モチノキ科
学名:Ilex integra
英名:Mochi tree
和名:モチノキ
別名:ホンモチ
原産地:日本、中国、台湾、朝鮮半島
樹高:約5~10m前後
区分:常緑広葉樹
耐暑性:強い
耐寒性:やや弱い
開花期:4月中旬~5月
花色:淡い緑色
果実期:10~11月頃
用途:庭木、生け垣、公園樹、防火樹など
モチノキの特徴
古くから日本に自生してきたモチノキは「庭木三大銘木」に数えられる庭木の定番です。
耐陰性があるので、日陰で目にすることも多く、いっけん地味な印象を持ってしまいがち。ところが、秋には真っ赤な実を一面につけ、その姿は見応えがあります。鳥たちが実を求めて訪れるので、賑やかな季節となるでしょう。
ただし、雌雄異株なので、雌木にしか実をつけないので注意しましょう。
モチノキの名前は、樹皮から「トリモチ」が作れることに由来しています。さらに、葉はマテ茶の原料ともなり、私たちの生活に深く関わりのある木といえるでしょう。
※トリモチとは、粘着性の強いゴム状のもの。日本では、粘着剤として古くから活用されてきました。
成長スピードが緩慢なモチノキ。しかし、いずれは5~10mほどの巨木になるため、定期的な剪定は必要です。
大きくなるにつれ、樹形が整う性質をもっているものの、伸びすぎている枝などの剪定は欠かせません。
また、お庭に地植えにする際には、広いスペースも確保してください。
モチノキは耐陰性がある庭木なので、デッドスペースやシェードガーデンの主役として活かしてあげてくださいね。
モチノキの剪定のタイミング
モチノキの剪定適期は年3回。ですが、成長が緩慢なので、頻繁に剪定を行わなくても問題はないでしょう。木のバランスを見ながら剪定を行うのがおすすめです。
6~7月は、春に芽吹いた葉や枝が伸びているシーズンです。密集して風の通りが悪くなると、病害虫の発生原因となります。
枝葉が混みあっている場所を剪定し、間引いていきましょう。
10~11月は、樹形が乱れていると感じたら剪定を行ってください。
徒長枝や古い枝など、目に付いた場所を軽く剪定するだけでもかまいません。
2月は、モチノキの樹高をコンパクトにするのに向いています。強剪定をするなら、休眠中のこの季節に行うのがベスト。ただし、花や実の付きが悪くなってしまうデメリットもあります。
モチノキを含めた、樹木別剪定時期年間カレンダーを作成しました。興味がある方は、ぜひご覧ください。

モチノキの剪定道具
モチノキの剪定を行うまえに、以下の道具の準備をしておきましょう。
・軍手
・剪定バサミ
・刈り込みバサミ
・ノコギリ
・脚立
・癒合剤
事前に、道具の刃先をアルコール消毒し、刃先から細菌類による病気を感染させないために、忘れずに行いましょう。
また、強剪定した枝には癒合剤を塗っておくのがおすすめ。傷口を殺菌し、乾燥させないためには必須ですよ。
高所作業で脚立を使用する際には、不安定な場所に置かないよう注意しましょう。転倒のリスクを回避し、思わぬケガを防ぐために、ロック機能を活用して安全に作業してください。
モチノキの剪定メリット
モチノキの剪定メリットは、樹高を調整できる点です。
成長が緩慢なモチノキですが、剪定をしないまま放置していると、やがては5~10mほどの巨木になるでしょう。
ご自宅のお庭でそこまで成長してしまえば、手の施しようがありません。そうなるまえに、伸びた枝を剪定しつつ、樹高を調整しておくのがおすすめです。
モチノキの剪定方法
モチノキの剪定は、成長具合によって行いましょう。
ゆっくりと成長していくので、必ずしも「年3回、毎年行わなくてはいけない」というものではありません。
まずは6~7月に、新芽が伸びた枝を見つけて剪定し、風通しよくするのがポイントです。
その後の秋と冬の剪定は、様子を見ながらの判断でかまいません。
モチノキの剪定のコツは、密集しやすい枝葉を間引いていくこと。
内側へ向かって茂っている枝を見つけ、透かし剪定していきます。
日当たりと風の通りをよくすれば、病害虫の発生を抑えられるでしょう。
また、モチノキは大きくなるにつれて、自然樹形でまとまっていきます。ナチュラル感を残したいという方は、伸びた枝を切る程度にしておくのがおすすめです。
樹高を抑えたい方は、2月の休眠期に強剪定し、高さを調整してくださいね。
■剪定方法をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。


モチノキの育て方
モチノキは、日本の風土に古くから馴染んでいるので、育て方も難しくありません。
これからモチノキを育ててみようと考えている方は、こちらを参考にしてみてくださいね。
【日当たり】
モチノキは、耐陰性がある植物です。日影でも充分に成長してくれるでしょう。
強い西日は苦手なので、日差しが差し込まないことをチェックしてから植え付けてください。
また、耐寒性はさほど強くありません。東北南部が限界でしょう。
【水やり】
根を深く張るので、基本的に必要ありません。
乾燥した日や真夏日には、朝か夕方の涼しい時間帯に水をあたえてください。
【肥料】
モチノキへの肥料は、2~3月頃を目安に施します。
寒肥として、緩効性化成肥料や固形の油かすを株元近くへ置きましょう。
【植え付け】
モチノキの植え付けは、春と秋の年2回が適期です。
「4~5月」または「9月中旬~10月下旬」を目安に行います。
真夏の酷暑日や、冬の寒風が吹き荒れる季節は避けてください。
モチノキは肥沃な土壌を好む性質なので、植え付け場所に穴を掘ったら、腐葉土・元肥などをすき込んでおきましょう。
また、根鉢が固まっている場合には、水で洗い流し、軽く根をほぐしてから植え付けるのがおすすめです。
モチノキの病害虫
モチノキは枝葉が密に茂りやすく、風通しが悪くなると病害虫が発生しやすくなります。
注意したい病害虫を紹介します。
すす病
黒いすすのような粉で、葉や茎が変色しはじめたら、カビの一種「すす病」の可能性があります。
カイガラムシなど、害虫の排泄物が原因で発症する病気です。
見た目の悪さのほか、光合成ができずに枯れてしまう場合もあるので、早急に対処しましょう。薬剤散布をし、発症している箇所はすべて取りのぞきます。
カイガラムシ
カイガラムシは、大量発生するまえの早い段階で駆除しましょう。
葉や枝に密集してくっついているので、気付きにくいこともしばしばあります。
幼虫の段階なら、牛乳を薄めたスプレーや薬剤散布での駆除もできますが、成虫になってしまうと、あまり効き目がありません。
成虫のカイガラムシには、歯ブラシやヘラを使ってこすり落とす方法が効果的です。
なお、カイガラムシの排泄物は、すす病の発生原因にもなります。二次被害をおこさないためにも、風通しのよい環境を作る剪定は必要です。
ハマキムシ
ハマキ蛾の幼虫ハマキムシは、モチノキの葉を食害し、弱らせてしまうので要注意です。
糸を吐き出し、葉を2~3枚巻き込んで巣を作ります。巣の中で新芽やつぼみなどを食い荒らしてしまうので、気付きにくく、やっかいな害虫。
春から秋にかけて発生し、とくに梅雨~夏に被害が拡大します。
薬剤散布で駆除するのがおすすめですが、巻き込んだ葉が防御となり、効果がないことも。疑わしい丸まった葉は、切り取って焼却処分する方法も適しています。
■害虫対策をさらにくわしく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。

まとめ
古くから日本に自生してきたモチノキは、庭木の定番として目にする機会も多いですよね。
剪定に手間がかからず、丈夫で育てやすいところがモチノキの魅力のひとつですが、その魅力が最大限に引き出されるのが、秋の果実期です。真っ赤に染まった実は、お庭を可愛らしく彩ることでしょう。雌雄異株の性質を持っているので、実を楽しみたいという方は、雌木を選ぶように注意してくださいね。
モチノキのお手入れで困った場合は、庭のプロ集団『庭.pro』へご相談ください。皆様のお庭づくりのお手伝いができれば幸いです。
2024年1月26日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎







