シンボリックなオージープランツ!個性的な庭木におすすめ|【グラスツリー】の育て方のコツをプロの庭師が伝授します
真っ黒な幹の頭頂部から青々としたグラスを茂らせ、過酷で雄大な自然を物語る姿が神秘的なグラスツリー。オーストラリア固有種のオージープランツ(オーストラリアンプランツ)で、世界中のガーデナーを魅了する植物のひとつです。希少ではありますが、耐寒性があって日本でも育てやすくメンテナンスフリー。シンボリックで建築的な、かっこいい庭木を探している方にぜひおすすめです。この記事では、オージープランツ(オーストラリアンプランツ)のグラスツリーの種類や基本の育て方、剪定のコツを解説します。
目次
グラスツリーの基本情報
グラスツリーの特徴
グラスツリーの主な品種
グラスツリーの育て方
グラスツリーの病気と害虫
グラスツリーの剪定方法
グラスツリーの増やし方
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
グラスツリーの基本情報
分類:キジカクシ科クサントロエア属(ススキノキ属)
学名:Xanthorrhoea
英名:Grass tree、Grass-gum tree、Black boy
和名:ススキの木
別名:ブラックボーイ、バルガ、スチールグラス
原産地:オーストラリア
樹高:1〜3m
葉張り:1m前後
常落区分:多年草
耐寒性:−6℃前後
耐暑性:強い
開花期:夏
花色:白
果実色:黒
用途:庭木、シンボルツリー、観葉植物、ドライガーデンなど
花言葉:率直
グラスツリーの特徴
グラスツリーとは主にクサントロエア属の通称で、オーストラリアに30種ほど見られるオージープランツ(オーストラリアンプランツ)のひとつです。太い幹に細く硬いグラスのような葉を出す姿は、オーストラリアの雄大な自然を感じさせます。また切り花では、葉の部分はスチールグラスという名前で、花はカンガルーテールという名前で流通しています。樹姿が似たキンギアもグラスツリーと呼ばれますが、キンギアとクサントロエアは花の形状が違い、別の植物です。この記事では、クサントロエア属のグラスツリーについて解説します。
シンボリックな樹姿
グラスツリーは、黒っぽい幹の頭頂部から放射線状に飛び出す髪の毛のような葉が魅力的なオージープランツ(オーストラリアンプランツ)で、ドライガーデンのシンボルツリーとしてもおすすめです。幹は古い葉の基部の集積で、葉の四角い断面がきれいに並ぶ様子も魅力的です。山火事によって燃えなければ、古い葉はスカートのように垂れ下がっています。幹の太さや、枝分かれするマルチヘッドなど個体によってさまざまで、ひとつひとつ生命力を感じさせる植物です。品種によっては幹を形成しない品種もあります。
山火事で生き残る特性
グラスツリーはオーストラリアで自然発生する山火事でも燃えず、黒焦げた幹からいち早く新しい緑の葉を出すという特徴があります。古い葉の基部が樹脂によって固まってできた幹は耐火性があり、表面は焼けても内部は生き残って山火事に耐えるのです。幹が黒いものは焼けた証拠で、普通に育てる分には真っ黒にはなりませんが、葉の断面でできた幹はそれだけで十分に面白い質感を魅せてくれます。ちなみに市販で幹が黒いものは、表面をバーナーなどで焼いてあることがあります。
長い花茎
現地では山火事の後、3〜4mにもなる長い花茎を伸ばします。1ヶ月ほどかかって、ぐんぐんと伸びて長い花穂を作って開花し、したたるほどのたくさんの甘い蜜で虫や鳥を呼び寄せます。アボリジニはこの花の蜜を飲用したともいいます。そして焼け野原に種子を落として、繁殖させます。日本での栽培で花茎をつけるまでは何年かかるか定かではありませんが、それが長い時間かけてグラスツリーを育てる楽しみでもあります。
名前と呼び方
かつては黒焦げた幹に長い花穂が、長い槍を持ったアボリジニの少年に見えることからブラックボーイ(Black boy)と呼ばれていました。近年は差別的な意味合いを含むことからグラスツリーという名称が一般的です。学名のクサントロエア、ザントロエア(Xanthorrhoea)などでも表記されます。アボリジニの言葉ではバルガ(Balga)と呼ばれています。
希少なオージープランツ(オーストラリアンプランツ)
グラスツリーの成長はかなり遅く、1年に1〜5cm程度しか大きくなりません。現地では樹齢600歳の個体もあり、オージープランツ(オーストラリアンプランツ)の中でも象徴的な植物のひとつです。また保護による規制や輸入の難しさなどもあり、日本ではかなり希少価値の高い植物です。ただ最近は専門店やオンラインショップなどでの取り扱いも増え、比較的入手しやすくなりました。
グラスツリーの主な品種
園芸品種としてはクサントロエア・グラウカ(Xanthorrhoea glauca)、クサントロエア・ジョンソニー(Xanthorrhoea johnsonii)などが人気です。どちらも日本の気候に似たオーストラリア南東部原産で、中でもグラウカは寒さに強く日本でも育てやすい品種です。グラウカには2種類あり、ブルーシルバー系の葉色の品種もあります。
グラスツリーの育て方
水やり
地植えの場合、大きく根が張った株は降雨で十分です。若い苗は梅雨の長雨などで根腐れしてしまうことがあるので、移動のできる鉢植え管理がおすすめです。
大きい株は乾燥にも強いですが、根が定着していない場合や幹が立っていない小さい苗は水切れしないように気をつけます。水切れですぐ枯れることは少ないですが、葉先が茶色くなってしまいます。夏は用土が乾いて鉢植えが軽くなったら、鉢底から水が出るくらいにたっぷりと水やりします。休眠期の冬はあまり水をあげないほうが良いですが、若苗の場合は様子を見て2ヶ月に1〜2回水をあげます。
日当たりと置き場所
日当たりの良い場所や半日陰の場所を好みます。半日以上しっかり日が当たるところで管理しましょう。根付くと冬の寒さにも強いですが、寒冷地では幹が立ってない若い苗は鉢植え管理にして冬は室内に取り込むと良いでしょう。日照量が足りないと葉のハリも損なわれるため、室内管理の場合は暖かい昼間にたっぷり日光を当てましょう。
肥料
あまり肥料は必要としません。オージープランツ(オーストラリアンプランツ)の多くは多肥を嫌い、特にリン酸が多いと生育が悪くなります。もしやる場合は、リン酸の少ない油粕などの有機肥料をやると良いでしょう。
また、本来グラスツリーが育つ土壌には、グラスツリーの根と共生して水や栄養素の吸収を助ける菌根菌という菌類がいます。この菌のおかげで痩せ地でも育つことができますが、輸入する時に根が洗われるため、菌が少なくなってしまいます。この菌根菌を増やすためには、植え付けの際、菌の栄養になるブラウンシュガーを土に少量混ぜ込むと根の活着が良くなると言われています。またグラスツリーの共生菌自体もオンラインショップなどで販売しています。
植え付けと植え替え
水はけの良い用土に植えて、たっぷり水やりします。保水力の高い土は根腐れの原因にもなるので、なるべく避けます。地植えの場合は、パーライトなどを混ぜ込んで高植えすると良いでしょう。鉢植えは、軽石や川砂に堆肥、赤玉土を混ぜた用土などで植え付けます。
鉢植えの植え替えは、太い根が鉢底から見えてきたら一回り大きい鉢に植え替えます。
グラスツリーの病気と害虫
目立った病害虫は見られませんが、若い苗は根腐れに注意が必要です。水やりの時に水がなかなか染み込まなかったり、土の表面にカビが発生したりしたら根腐れの可能性があります。用土が湿った状態が続かないよう、水はけの良い土で管理しましょう。
グラスツリーの剪定方法
基本的に剪定は必要ありませんが、古くなった葉がスカートのように垂れ下がってきます。葉がもっさりとボール状になったそのままでもグラスツリーらしくて良いですが、現地で定期的な山火事によって葉が枯れ、頭頂の新葉のみになった姿も魅力的です。そのように下葉を幹に沿ってカットすると、幹が見えてスッキリします。下葉をカットする場合は暖かい時期に行いましょう。
グラスツリーの増やし方
種子で増やします。花が咲いた後に種子を採取するか、種子のみの販売も多く見られます。
育苗ポットなどに種まき用土を入れ、種を蒔きます。覆土はせずに、20℃以上の場所で管理しましょう。発芽するまでは水切れしないように、常に用土を湿らせるようにします。種子を採取したタイミングなどにもよりますが、発芽まではとてもゆっくりで、2週間程度から3ヶ月かかることもあります。その後、葉が出てから幹が立ち上がるまでに10年以上かかることもありますが、気長にゆっくりと育てる楽しさがグラスツリーにはあります。
まとめ
グラスツリーは希少価値が高いオージープランツ(オーストラリアンプランツ)で、高価で小さい株は数万円前後、大きい株になると数十万円前後にもなります。ですが、グラスツリーが長い年月をかけて少しずつ大きくなる姿は愛おしく、花茎がついた時の感動もひとしおです。
またグラスツリーは指定保護品種となっており、ライセンス取得者のみが生産・販売を行なっています。希少価値の高い植物でもあるゆえ、保護の観点からも、オーストラリア政府発行の専用輸入タグのついた正規ルートの苗を購入するようにしましょう。
ドライガーデンのシンボルツリーとしてもぴったりなグラスツリーをお庭に迎え入れて、長い年月をかけ大切に育ててみてくださいね。
2024年1月30日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎