【マツ(松)の木】剪定の基本を庭師が伝授

日本の庭といえば、「マツ(松)の木」ですよね。古風な庭園に綺麗に手入れされたマツ(松)の木は見栄えも良いものです。
ただ、マツ(松)の木の剪定は他の木に比べて最も奥深く剪定が難しい・面倒だと言われます。
実際に剪定を自分で行ったことがある人はご存知かもしれませんが、マツヤニが付いたり、葉先がチクチクと刺さったり、剪定中にマツ(松)の小枝が折れたり・・・植木職人の世界でも「マツ(松)の剪定は難しい」「マツ(松)の木の剪定ができれば一人前」とも言われています。
しかし、素人の方でも自分でマツ(松)の木の剪定をしている方もたくさんいます。
ここでご紹介するマツ(松)の木の剪定方法で、初心者の方でもちょっとしたコツを掴めば簡単な手入れなら可能です。

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目次

マツ(松)の木の剪定が大変な理由
マツ(松)の木の特徴
マツ(松)の木の剪定時期
 作業に入る前の準備
マツ(松)の木の剪定 その①基本作業
マツ(松)の木の剪定 その②上部の剪定
春の剪定・みどり摘み
秋の剪定・もみ上げ
秋の剪定・透かし剪定
マツ(松)の剪定の小技
剪定業者に依頼したときの料金
さいごに
自分での剪定は事故に注意!

マツ(松)の木の剪定が大変な理由

剪定職人の世界でもマツ(松)の木は難しいと言われていますが、その理由はマツ(松)の木の特徴にあります。

例えば
●マツ(松)の木の枝は身体にあたるとチクチクするので、作業の集中力が削がれる。
●作業中にマツ(松)の木の樹脂が服について、洗濯しても落ちない
●マツ(松)の木は小枝が四方八方に伸びているから、一体どこの場所を切ったら良いか見極めが困難。
●一ヶ所からたくさんの芽が出ているため、剪定作業の手間が多くなってしまう。
●強引にマツ(松)の木を刈り込んでしまうと、マツ(松)の木全体の形が乱れてしまったり、場合によっては部分的に枯れてしまう。
などが挙げられます。

チクチクするのは我慢したとしても、形の乱れや枯れてしまうのは避けたいので、ついつい刈り込みバサミやヘッジトリマーなどでで一気に丸くしたくなるところです。

しかし、剪定・手入れをしたその日はそれなりに見た目も整うと思いますが、問題はその後です。

一箇所から膨大な数の芽が出てきて、ゴツゴツした変な形になったり、棒状に切った部分が枯れてしまったり、剪定した断面が茶色く変色したりなど、後々手がつけられない状態になったりします。

マツ(松)の木の剪定にはは木バサミを持ってじっくりと向き合いましょう。

マツ(松)の木の特徴

マツノキの基礎知識

学名:Pinus
科名:マツ科
属名:マツ属
原産地:北半球の寒帯から亜熱帯
和名:マツ(松)
英名:Pine、Pine tree
樹高:高木
常落区分:常緑性
日照:日なた
耐暑:強い
耐寒:強い
開花期:5月
花色:赤紫、黄
植えつけ時期:2月~4月
剪定時期:5月~6月、10月~2月
記念樹:「誕生日祝い」「合格祝い」「敬老・長寿祝い」「成人記念」「開業・開所祝い」に向いています。マツの葉の緑は不変の心の象徴とされ、不老長寿の木として古代より縁起の良い樹木とされています。詳しくはこちらから
花言葉:「不老長寿」「永遠の若さ」

そもそもマツ(松)の木とはどんな木なのか、もちろんマツ(松)の木を知らない人はそんなにいないでしょう。

「マツ(松)の木」とはマツ科マツ属の常緑高木の総称で、明るく乾燥した土地に生えて、樹皮はひび割れするものが多く樹脂も多いです。

日本では「アカマツ(赤松)」と「クロマツ(黒松)」の2種類が広く分布しており、一般的によく見かけるのはアカマツのほうではないかと思います。

アカマツはその名の通り樹皮が赤いためこの名前が付いており、本州・四国・九州・東北・北海道など全国的に幅広く分布しています。

一方、クロマツは樹皮が黒い褐色、長く硬い針葉なのが特徴で、主に本州・四国・九州に広く分布しています。

その他にもゴヨウマツ(五葉松)・ヒメコマツ(姫子松)と呼ばれる種類もあり、庭木としてだけでなく、盆栽としても愛されています。

幹は暗めの褐色をしており、クロマツ(黒松)と違って葉1つごとに、5㎝くらいの長さの5本の針がつくのが特徴です。大きいと15mを超えるものもあります。

マツカサ(松毬・まつかさ)は卵のような楕円形をしています。

 

マツ(松)の木の剪定時期

マツ(松)の木の剪定方法には大きく分けて2種類の方法があります。

一般的には春に「ミドリ摘み」、秋から晩秋にかけて「もみ上げ」という作業を行うのがマツ(松)の木の剪定の基本です。

「ミドリ摘み」は新しくできたみどりの不要な部分を折り、枝がほしいところは軽めに折って残しておく作業のことで、ミドリ摘みに適している時期は地域にもよりますが、4月~5月末頃に行う場合が多いです。

芽摘みは樹勢をコントロールし、樹木全体のバランスを整えるために大切なお手入れです。

この時期に伸びてきた新しい芽を摘んでおくことで、成長する葉を減らすことができるので、秋・冬におこなうもみあげの作業が手軽になります。

「もみ上げ」は夏に伸びた枝を減らし古い葉を手でむしり取る、といったマツ(松)の木特有の剪定方法で、岡山でのもみ上げの作業に適した時期は11月~12月頃です。

棘のような特殊な形状をした古いマツ(松)の葉を手作業でむしり取っていきます。

若い葉と古い葉を見分けながら、若い葉を8対分くらい残すように間引きます。

ミドリ摘み・もみ上げを適切な時期に行っておくことで、慌てて剪定(整姿)をしなくて良くなります。

なかなかそんなこまめに剪定・手入れができないという方は、晩秋に行うのが最適でしょう。

春から秋にかけては新芽が出たり成長したり針葉が落ちたりしてマツ(松)の木の姿が目まぐるしく変わるため、剪定の時の状態を維持できないのと、真冬はマツ(松)の木にダメージを与えてしまうからです。

作業に入る前の準備

マツ(松)の木の剪定を行うためには、まずは必要な道具や作業に適した服装を準備しましょう。

剪定のために必要な道具は、ハサミ、のこぎり、脚立などが挙げられます。

また、服装については汚れても良い長袖、ズボン、防止、手袋、靴を用意しましょう。

マツ(松)の木を剪定すると、必ず服にマツヤニが付着し、洗濯しても落ちないです。

もう着ることのない不要な服があればマツ(松)の木剪定専用の作業服として準備しましょう。

もちろん長袖の服ゴム手袋は必須です。

いわゆるプロの剪定職人は素手で作業することにこだわりますのでゴム手袋などは使いませんが、初心者の方はゴム手袋がないとチクチクして作業どころではないです。

脚立に上って作業をする場合は動きやすい安全な服装をオススメします。

また、脚立や踏み台、足場板などはちゃんと用意して安全に作業できるようにしてください。

足場がぐらついたりすると作業姿勢も悪くなり、すぐに疲れてしまい作業途中で「もうこれでいいか・・・」とか、「面倒だから根元から切ってしまえ」なんてことになりがちです。

せっかくの剪定作業が雑にならないようにするためにも、慣れるまでは小さなマツ(松)だろうと一日で仕上げようとするのではなく、数日かけてじっくり作業するぐらいの気持ちでちょうど良いと思います。

脚立に上って作業をするので動きやすい安全な服装をオススメします。

お手入れでもうひとつ気をつけたいのが、害虫予防です。

マツ(松)の木は「マツ材線虫病」という被害に遭いやすいことで知られています。一般的に「松くい虫」と呼ばれる害虫が害を及ぼすと思われがちですが、

実際には「マツノザイセンチュウ」という1mmにも満たないほど小さな病原菌が「マツノマダラカミキリ」という虫にひっついてマツ(松)の木にやってきて、マツ(松)の葉が赤色になり、そのうち枯れてしまうことを言います。

放置しておくと周りののマツ(松)の木に伝染してしまうので、発見したらすぐに伐採し、切った木を燻製するなどの処置をしなければいけません。薬剤散布をすることで予防が可能です。

マツ(松)の木の剪定 その①基本作業

マツ(松)の木の剪定作業の基本ですが、作業は上から下に向かって行い、奥から手前に向かって行います。

剪定した後の枝や葉が落ちてぶつかってしまったり、引っかかったりすると、枝や葉が折れてしまうことにつながるので用心しましょう。

上から下へいくほど、剪定は楽になります。下のほうの日陰の枝は何もしない、ということもあります。

葉をむしる時は枝の下から手を回して、枝を傷つけないように行います。

マツ(松)の木の葉は細くとがっていますので注意しながら手でむしり取るようにしましょう。

剪定のときには枝と一緒に切り落としますが、樹形が乱れないようになるべく最初から手で取り除くようにしていきましょう。

枝から葉に向かってY字型にそろえていくことがポイントです。

次に上から枝の上の向きを確認し、どの葉を残したらY字になるのか確認します。

下から枝の重なり具合を確認し、遠くから見て全体のバランスを確認します。

マツ(松)の木の枝葉の量を最適な量にするためには2つの方法があります。

①枝を途中で切り、枝の量を減らすことで枝の長さを短くする方法。
「中止め」といわれる方法です。
簡単に葉の量を減らし、枝の長さを短くすることが出来ます。

アカマツ(赤松)はクロマツ(黒松)より性質が弱いため、貧弱な枝では元から枯れることがあるため、この方法を禁じている剪定マニュアルもあるようですが、経験上では、「必ず枯れる」というわけではありません。

アカマツ(赤松)であっても場所によっては致し方ない場合もあります。

②枝を切らずに、下のほうの葉だけをむしりとる方法。

この方法ですと、枝の長さは変わらないものの、柔らかく仕上がるのがメリット、作業が面倒なのがメリットです。

この方法は「もみあげ」と呼ばれる方法で、特にアカマツでは優しく古い葉を取り除くことがポイントです。

手袋を着用していると作業できないので、もみあげをする場合は手袋を外します。

作業を秋に行う時は枝をY字型になるよう残しておくことが重要です。

葉を切らずに、勢いのある枝を切り落とすようにします。

不要な芽をハサミで切り落とし、、葉を20枚ぐらい残してつまみとります。

マツ(松)の木の剪定 その②上部の剪定

マツ(松)の木に限らずですが、木の剪定で重要なのは最上部をきっちり美しく仕上げることです。

上をしっかりと剪定すれば、他の部分に少々粗があっても隠れるといっても過言ではありません。

しかし実際には、一番厄介なのも上部の枝の剪定で、特に長年の間放置していたようなマツ(松)の木はちょっと面倒です。

マツ(松)の木の最上部の剪定で、はじめににすることは次の2つです。

①枝の内側にある小さな芽を傷付けないように気を配りながら、手で簡単に取れる古い葉(茶色い葉、濃緑の葉)を除去する。

②太すぎる枝(親指~小指くらいの太さ)を元の部分から切り取る。

これだけでかなりスッキリして、仕上がりのイメージが湧いてくるはずです。

全体の形は半球のような形で、それぞれの小枝は、「Y字」もしくは「中止め」で剪定していきます。

複数の小枝を揃えるためには、「Yの字」に揃えるのが基本です。

マツ(松)に限らず庭木は放っておくと真ん中の枝にエネルギーが集中しやすく、真ん中だけズンズン太く伸びる傾向があります。

短い枝がたくさんあってこそ庭木の美しさが実現されます。
真ん中の枝だけが元気なのは見た目のバランスが悪くなりますので、これを切ることで見た目をスッキリさせるとともに、成長エネルギーを分散させ、将来的には枝葉を密に成長させることができます。

最上部の枝の剪定では、端の太すぎる枝を元から切り除いて、さらに真ん中の細枝を切って、Yの字を作っています。

上の枝は短めに、下の方や、日陰の枝は長めに残すのが基本です。

ご注意ください!
自分で剪定する際に、
事故が発生しています。
設備不良による転倒や、害虫との接触など、剪定中の事故が発生しています。十分注意の上、怪我のないように、作業を行いましょう。 設備不良による転倒や、害虫との接触など、剪定中の事故が発生しています。十分注意の上、怪我のないように、作業を行いましょう。
事故の事例を見る

春の剪定・みどり摘み

マツ(松)の木の芽は一箇所から数本の芽が出てくるので、長い芽は根本から切り取り、細い芽だけ残しておきましょう。

一ヶ所あたりのミドリの数を2~3本になるように調整します。最後に残したミドリを短くします。

秋の剪定・もみ上げ

もみ上げは夏の間に伸びた枝を減らして、古い葉っぱを手でむしり取る作業です。

木の先端の芽から生えている葉は1/3ぐらい減らして、芽から下に生えている葉っぱは全て取り除きます。

秋の剪定・透かし剪定

枝の数を減らすことで木の幹への日当たりをよくするための剪定方法です。

樹形を整えるのとあわせて、虫などの害虫被害を減少させる効果もあります。

作業時期は10月から1月が適期です。常緑であるマツ(松)の木にとって日光は必要不可欠。

葉が茂っているとひとつひとつの葉が日光浴しづらくなってしまうため、ある程度葉を間引くことで健康的な成長を促進することができます。

透かし剪定をするときは、出来上がった樹形を想像しながら作業します。

Y字型をしている枝の真ん中の枝や、重なり合っている枝などを中心に、不必要な枝だけを切り落とすのがポイントです。

奥から手前に向かって、または、上から下方向に、枝の根元を切り落とします。

ポイントは4つ

①木の上から枝の向きを確認して、枝の重なり部分を確認します。

②木から離れて最終的な樹形を想像します。

③上から下に向かって枝を根元から切り落としていきます。

④奥から手前に向かって、枝を根元から切り落としていきます。

マツ(松)の剪定の小技

初心者・素人ではいくら枝を切り揃えても、なかなか揃わないことがあります。
そんな時に便利な仕上げの小技をご紹介します。

①ほんのちょっとだけ刈り込む
全部を刈り込むのはNGですが、すべての枝に手を入れた後、細い葉が作る形をを揃えるために、木バサミで少しだけ刈り込むと、仕上がりが断然よくなります。

特に最上段の形は揃えたほうが良いでしょう。

切り口は後々少し汚くなりますが最上段であれば人の目線に触れることもありませんので、必要最低限だけ「葉刈り」します。

②垂れている葉は、手でむしりとる
なぜか輪郭がビシッと決まらない。多くの場合は、垂れ下がってしまった疲れた葉が原因です。

「Yの字」に剪定した後、水平より下に垂れ下がっている枝を手でむしり取ると美しく仕上がります。

ただし、やりすぎると全体ボリュームが寂しくなりますので、ほどほどにしておきましょう。

剪定業者に依頼したときの料金

マツ(松)の木の剪定は一般的に年に2回(春、秋)と行いますが、ハサミや電動工具などで簡単に刈り取ることができないため、時間がかかってしまうことが多いです。

庭木・剪定職人のプロ集団『庭.pro』に作業をご依頼いただいた場合の費用は、マツ(松)の木の高さや全体のボリュームにもよりますが、18,000円~ぐらいが大体の目安となっています。

また、川沿いや通り沿いなど、切り枝や葉の落下防止作業等による作業手間の違いや、作業日数や作業人数によっても料金が変わりますので、詳しくは『庭.pro』ホームページ「庭木の剪定料金」をご覧ください。

さいごに

マツ(松)の木は綺麗に仕上げてこその木といえますが、ほんの少しだけ刈手入れをすると仕上がりが見違えるように良くなります。

多くの場合は、垂れ下がった葉が多いので、Y字に剪定し水平より下の枝を手でむしり取ると、綺麗に仕上がります。

是非みなさんもご自宅で実践してみてはいかがでしょうか?

もしご自身での剪定作業に取り組むことが難しいと感じる作業や、時間がかかったり面倒だと感じてしまったりする作業は、庭のプロにお任せするのも上手にマツ(松)の木を育てるコツです。

自分でできることは自分でおこない、できないことだけを任せる。このようにして、賢くマツ(松)の木を立派に育てましょう。作業が難しい場合は、庭のプロ集団『庭.pro』までご相談ください。

綺麗な庭で皆様の暮らしが豊かになれば幸いです。

2024年1月30日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎

ご注意ください!
自分で剪定する際に、
事故が発生しています。

想定外の設備不良や害虫との遭遇など、剪定中の様々な事故が発生しています。

  • 脚立から転落、
    頭をぶつけた 脚立から転落、頭をぶつけた

    庭で植木の剪定の作業をするため脚立で作業中、自分の足元の確認が不十分であったため脚立から転落し下にあった石に頭をぶつけた。
  • 蜂に刺され
    動けなくなった 蜂に刺され、動けなくなった

    樹木の剪定作業中、蜂の巣に気付かず蜂に刺され、まもなく動けなくなった。
  • トリマーの刃で
    右手小指裂傷 トリマーの刃で右手小指裂傷

    トリマーを使い刈り込み作業中、トリマーのエンジンを止めずに置き、刈って落ちた葉を整理していたため、トリマーの刃と右手小指が当たってしまい裂傷した。

引用:厚生労働省職場の安全サイト 労働災害事例(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pgm/SHISYO_FND.html)平成29年5月,7月

危険に遭遇した際には、思ったように体が動かないものです。
樹木の状態や周囲の状況に合わせた道具や準備で十分注意の上、怪我のないように作業を行いましょう。

自分でやるのは不安・・・
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そんな方は「庭.pro」にお問合せ下さい。

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