香りも葉も花も楽しめるオージープランツ!|【メラレウカ】の育て方のコツをプロの庭師が伝授します
香りの良い葉が年中楽しめて、さらに花も咲くという魅力いっぱいのメラレウカ。ティーツリーの名でも知られ、アロマでも人気のオージープランツ(オーストラリアンプランツ)です。この記事では、丈夫で育てやすいメラレウカの種類や基本の育て方、剪定のコツを解説します。
目次
メラレウカの基本情報
メラレウカの特徴
メラレウカの主な品種
メディカルティーツリー/メラレウカ・アルテルニフォリア(Melaleuca alternifolia)
スノーインサマー(Melaleuca linariifolia)
ブラックティーツリー/メラレウカ・ブラクテアタ(Melaleuca bracteata)
レッドジェム(Red jem)
レボリューションゴールド(Rvolution Gold)
その他
メラレウカの育て方
メラレウカの病気と害虫
メラレウカの剪定方法
メラレウカの増やし方
まとめ
メラレウカの基本情報
分類:フトモモ科メラレウカ属
学名:Melaleuca
英名:Melaleuca、Paperbarks、Honey-myrtles
和名:コバノブラシノキ
別名:ティーツリー
原産地:オーストラリア
樹高:2〜5m(品種による)
葉張り:1〜3m(品種による)
常落区分:常緑低木〜高木(品種による)
耐寒性:品種による
耐暑性:強い
開花期:4〜6月
花色:白、ピンク、紫など
用途:庭木、シンボルツリー、生垣、ハーブ、ドライガーデンなど
剪定時期:5〜7月(品種による)
花言葉:清潔、力強い味方
メラレウカの特徴
世界に300種ほどの品種があるフトモモ科メラレウカ属です。樹高が1m程度の低木から、20mを超えるような高木までさまざまです。園芸用に出回るのは矮性のものが多く、樹高3m前後が主流です。
オージープランツ(オーストラリアンプランツ)なので乾燥に強いと思われますが、沼地や湿地で自生するため、水が大好きです。品種によっては雨季にはしばらく水浸しになるような地でも育つので、根腐れよりも水切れに注意が必要です。
ティーツリーという名前
ティーツリーという名は大航海時代、オーストラリア先住民がこれらの葉をお茶にして飲む様子を見て、キャプテンクック一行が名付けたという話が有名です。ティーツリーと名前がつく植物はレプトスペルマム属、クンゼア属などにもありますが、現在「ティーツリー」という名前で精油に使われているのはメラレウカ・アルテルニフォリア(メディカルティーツリー)です。
ただし園芸種では、メラレウカ属の総称としてティーツリーという名称が使われています。メディカルティーツリー以外のメラレウカも「ティーツリー」と表記されて出回っています。
また、メラレウカ属のティーツリーは飲用には向かず、お茶の葉として用いられることはほとんどありません。ちなみにお茶として飲まれたのは、レプトスペルマム属だと言われています。
レプトスペルマムについての詳しい記事はこちら。
香り・花・カラーリーフのシンボルツリー
メディカルティーツリーをはじめ、メラレウカ属の多くは葉から清涼感のある香りがします。品種によっては柑橘系の香り、やや甘い香り、ラベンダーの香りがするものも。また花つきもよく、春頃に爽やかな白い花を咲かせるのも魅力です。剪定などのお手入れもしやすく、病害虫にも強いので、オージープランツ(オーストラリアンプランツ)初心者にもおすすめです。
特徴的な樹皮
現地ではペーパーバークという別名でも知られるメラレウカ。これは、樹皮が何枚も重なった紙のような質感で、成長するとそれが裂けて剥がれる様子を表しています。メディカルティーツリーなどがこのタイプで、成長すると幹がねじれたような模様になるのも見ものです。ほかにも樹皮のタイプはいくつかあり、園芸種の多いメラレウカ・ブラクテアタなどは硬くて粗い樹皮を持ちます。
メラレウカの主な品種
メディカルティーツリー/メラレウカ・アルテルニフォリア(Melaleuca alternifolia)
葉に抗菌作用や抗炎症作用の成分を含んでおり、オーストラリアでは古くから薬用として用いられてきました。5〜6月に白い花が咲き、葉から清涼感のある爽やかな香りを楽しめます。薬用のティーツリーという通称のメディカルティーツリー、学名のメラレウカ・アルテルニフォリアなどと表記されて出回ります。メラレウカの中でも暑さ寒さに強く強健で、育てやすい品種です。
ティーツリー(メディカルティーツリー)の詳しい育て方はこちら。
スノーインサマー/メラレウカ・リナリフォリア(Melaleuca linariifolia)
開花時期は6〜7月頃で、メディカルティーツリーよりも少し小ぶりの白い花を株いっぱいに咲かせます。夏にふわふわと雪が積もったように見えることから、名前をつけられました。学名のメラレウカ・リナリフォリアと表記されることもあります。ティーツリー特有の香りもあり、樹皮は紙のような質感です。
ブラックティーツリー/メラレウカ・ブラクテアタ(Melaleuca bracteata)
学名はメラレウカ・ブラクテアタ(Melaleuca bracteata)で、オーストラリア全土に自生するメラレウカです。春〜夏は葉は緑色で、寒くなると葉がブロンズ色になるのが特徴的です。紅葉しますが常緑樹で、一年中葉の変化を楽しめます。開花時期は春〜初夏です。西日や寒さにも強く、育てやすい品種です。メディカルティーツリーよりやや甘い香りがします。
レッドジェム/メラレウカ・ブラクテアタ(Melaleuca bracteata Red Gem)
ブラックティーツリーから作られた園芸種の一つで、新芽が赤くなるのが特徴です。寒さに当たるとより赤くなり、カラーリーフとして利用されます。5〜6月に白い花が咲き、新芽の赤色とのコントラストが美しい品種です。やや寒さに弱いため冬は葉が痛みやすく、落葉することもあります。上記の品種などに比べて、成長は遅く樹高は低めです。
レボリューションゴールド/メラレウカ・ブラクテアタ(Melaleuca bracteata Revolution Gold)
ブラックティーツリーからできた園芸種で、明るい黄金葉が美しい品種です。周年黄金葉を楽しめ、柔らかい葉の質感と樹姿が庭を明るくしてくれます。寒さに当たるとより一層、黄金色が濃くなります。レッドジェムと同様に、やや寒さに弱く落葉することもあります。こちらもやや成長がゆっくりで樹高も低めです。
その他
メラレウカにはほかにも、精油にされるカユプテ(Melaleuca cajuputi)、ニアウリ(Melaleuca quinquenervia)などがあります。これらは葉がやや幅広で、個性的な草姿で、近年ガーデナーの間で人気急上昇中のリューカデンドロンの葉に似ています。タイムの葉に似たタイムハニーマートル(Melaleuca thymifolia)などは樹高1m前後の低木です。また、日本ではあまり出回りませんが、乾燥地帯のある西オーストラリア原産のメラレウカは育て方が難しく上級者向けです。
メラレウカの育て方
水やり
オージープランツ(オーストラリアンプランツ)なので乾燥気味に育てるように思われますが、メラレウカは水が大好きです。地植えはほぼ降雨で育ちますが、鉢植えは水切れに要注意です。メラレウカのほとんどは沼地や川沿いに生え、雨季には水浸しになる場所でも育つため、根腐れはしにくい性質です。
土の表面が少し乾いたかなと感じるタイミングで、たっぷりと水を与えてください。夏は朝晩の2回与え、鉢ごと腰水につけておくのも良いでしょう。冬は風が強いと意外と乾燥しやすいので、土の様子をよく観察しながら2〜3日に1回水やりします。
ただし乾燥地帯の西オーストラリア原産のメラレウカは、根腐れしやすい性質のものもあります。
日当たりと置き場所
日当たりの良い場所を好み、強健で西日の強い場所でも耐えます。耐陰性もあるので日当たりの悪い場所でも育ちますが、生育はやや弱くなります。横には広がりにくいので、狭い場所にもおすすめです。風通しの良い場所を好みますが、寒さに弱い品種は寒風が当たると枯れこむことがあります。
肥料
基本的に肥料をあまり必要としません。与える場合は、成長期の春もしくは真夏を避けた9月頃までに与えます。緩効性肥料や有機肥料がおすすめです。冬の休眠期に施肥したり、過度な量や液体肥料を与えると効きすぎて株が弱ることがあります。液肥はかなり薄めてあげるか、避けておきましょう。
植え付けと植え替え
春が適期です。成長が早いので根詰まりを起こしやすい植物です。2〜3年に1回は様子を見て、一回り大きな鉢に植え替えましょう。
用土は水はけがよく、水もちの良い土が適します。オージープランツ(オーストラリアンプランツ)だからと水はけのよさばかり重視してしまうと、水切れしやすくなります。赤玉土や鹿沼土に腐葉土や堆肥などを混ぜ込んだ用土がおすすめです。鉢底石を多めにして、市販の培養土も使うのも良いでしょう。
冬越し
メディカルティーツリーやブラックティーツリーは、−5℃前後まで耐えます。そのほかの品種も株が大きく充実すれば、落葉することはあっても多少の寒さには耐えます。冬は株元を腐葉土などでマルチングすると負担を減らせます。
鉢植えは、冬は強い風の当たらない軒下などで管理します。マルチングに加え、寒冷紗で覆うなどの防寒対策を行います。連日霜の降りるような地域では室内に取り込みますが、乾燥しやすいので水やりをしっかり行い、葉水も行いましょう。
メラレウカの病気と害虫
病害虫に強い植物です。ただし、用土の中にコガネムシやカミキリムシの幼虫などが入ることがあります。急に水の吸収が悪くなったり、葉が落ちたりなどしてきたら土の中をチェックしてみましょう。また、風通しが悪いとカイガラムシがつくこともあります。剪定などをして風通しをよくして予防し、ついたら歯ブラシなどでこすりとって駆除します。
メラレウカの剪定方法
来年も花を楽しむには、夏に花芽をつける前の5〜7月頃が適期です。花芽を気にしなければ、真夏と冬の休眠期を避けた3〜9月頃もOKです。萌芽力が強くどこで切っても新芽を出してくれるので、剪定はあまり難しくありません。
生育旺盛なメラレウカは枝が暴れがちで、アンバランスな樹形のままでは風で枝が折れてしまうことも。また、上へ上へと伸びようとして、下部に葉がなくなり寂しく見えることもあります。適度な切り戻しや透かし剪定は、病害虫も予防できます。
剪定のコツ
内側に向いた枝、混み合っている枝を根元から落とします。主幹に日光が当たり、内部まで風が通るイメージで透かし剪定を行います。また、太く強く伸びている徒長枝(とちょうし)などもカットし、全体を同じような太さの枝にするときれいにまとまります。
高さを抑えるときは、暖かい時期に全体の1/2か、2/3ほどの場所で切り詰めます。主幹を芯止めしても側枝が上に伸びてきます。また小さい苗でも、芯止めを行うことで主幹が太くなっていきます。樹形も整い株も充実するので、剪定は毎年行うのがおすすめです。
メラレウカの増やし方
挿し木で増やします。その年に出た枝を10cmほどで切り取り、4〜5枚葉っぱを残して下葉を取り除きます。1〜2時間ほど水につけた後、発根剤を塗って清潔な用土に挿します。発根するまでは用土が乾かないように気をつけましょう。
まとめ
葉が細く柔らかいメラレウカは、カラーリーフとしてさりげないアクセントになり、庭に奥行きも出ます。シルバー系の色合いになりがちなドライガーデンやオージーガーデンにはワンポイントになっておすすめです。また、柔らかな枝ぶりと爽やかな花はイングリッシュガーデンなどにもよく似合います。ほかの植物とも合わせやすいので、お気に入りを見つけてぜひお庭に迎え入れてあげてくださいね。
2024年1月26日
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎