優雅で豊かな香りがすることから、人気のラベンダー。でも放置している木質化してしまう成長の非常に早い植物です。
強壮や鎮静、体の不調を整える効果が期待できることから、昔は薬用植物として使われていました。
ラベンダーは種類も多いのでそれぞれ育て方のポイント、お手入れのコツなどをご紹介します。
ラベンダーの基礎知識
学名:Lavandula
科名:シソ科
属名:ラバンデュラ属
原産地:地中海沿岸
和名:ラベンダー
英名:Lavender
開花期:アングスティフォリア系4月下旬~6月中下旬、ラバンディン系6月上旬~7月下旬、ストエカス系4月上旬~6月中旬、プテロストエカス系とデンタータ系:四季咲き
花色:ピンク、白、紫
発芽適温:20℃前後
生育適温:15~20℃
切り花の出回り時期:5~7月
花もち:5〜7日程度
花言葉:「あなたを待っています」「沈黙」
ラベンダーの原産地は、地中海沿岸。原種はおよそ30種類ですが、交雑しやすい食物のため、変種や亜種、栽培品種など多種多様です。数え切れないほどの品種が存在します。それぞれに花の色や茎の長さなど、特徴があります。種類ごとにお手入れの方法が異なりますので、剪定や育成をする場合は、あらかじめ品種を調べておいたほうが良いでしょう。
ラベンダーの種類
先に述べたとおり、ラベンダーには多様な種類がありますが、大まかに分けると以下の5種類に大別できます。それぞれの特徴を知り、自分のスタイルに合う品種を選ぶと良いでしょう。
アングスティフォリア系
ラベンダーの代表格的なグループです。北海道で多く栽培されているので、一般的に「ラベンダー」といえば、この品種を思い浮かべる人も多いでしょう。特徴的な紫色の他に、ピンクや白の花を咲かせる品種もあります。ラテン語で、アングスティは細い、フォリアは葉を意味するとおり、細く、繊細な葉をもつことが特徴です。耐寒性は-15℃と冬の寒さに強いですが、実は高温多湿な環境には弱い点にも要注意。本州の西側で生育させようとすると少し難しいことがあります。
ラバンディン系
香りの良いアングスティフォリア系と、暑さに強くシャープな香りをもつスパイクラベンダーの交雑によって生まれたグループです。長い花穂と花茎が特徴です。成長すると1メートルを超えることもあります。交雑の経緯から寒さに強く、また、高温多湿な環境や病気に強い品種なので、初心者でも育てやすいといえます。
ストエカス系
花穂の先端に、長くてかわいらしい苞葉をもつことが特徴のストエカス系。まるでウサギのような見た目に根強いファンがいる品種です。原産地は、カナリア諸島やスペイン、トルコなどで、フレンチラベンダー、スパニッシュラベンダーの別名があります。開花期間が長いうえ、たくさんの花を咲かせてくれます。暑い地方が原産なので、高温の環境でもよく育ちますが、反面寒冷地での生育は悪く、降雪地帯では注意が必要です。
デンタータ系
四季性があり、年に二回花を咲かせるデンタータ系。花色は紫で香りも強く、また花穂の先にフリンジのような苞葉を付けます。原産地は、アフリカ北部やスペイン東南部、カナリア諸島などで、フリンジトラベンダー、キレハラベンダーといった別名をもちます。暑さにも強く、育てやすい品種です。気温が低くなるにつれて、花色が濃く、美しくなるという性質もあります。ただし、-5℃以下の環境では生育が悪くなります。
プテロストエカス系
まるでレースのような美しい葉が人気の品種で、レースラベンダーとも呼ばれます。美しく、華麗な花を咲かせますが、香りはやや特徴的。好みが分かれるところです。地中海、北アフリカ、アラビア半島西部などに広く分布しています。四季咲き性であるものの、寒さに強くないため、鉢で育て、冬の間は室内に置くといいでしょう。
ラベンダーの育て方
ラベンダーの種には交雑しているものが混ざっているため、種から育てることは、あまりおすすめできません。苗や鉢植えは、ホームセンター、園芸店、街のフラワーショップなどで購入できます。
前述したいずれのグループの品種も、日当たりと風通しがよい場所を好みます。土も水はけのいいものを選ぶようにしましょう。
アングスティフォリア系の育て方
暑さに弱いアングスティフォリア系。なるべく涼しく、風通しの良いところを選ぶ必要があります。他に心がけるポイントとしては
- ●定期的な剪定
- ●枝すかし
- ●日よけ
などがあります。
また、ジメジメした環境を嫌うので、水はけの良い土地に植えるようにしましょう。
ラバンディン系の育て方
暑さに強い品種ですが、暑くてもよく育つという解釈ではうまく育ちません。他の種類と同様に丁寧にメンテナンスをする必要があります。
うまく育つと1メートルくらいに育ちます。強い根を張りますので、他の植物と混植は難しいことがあります。この種類は種ができませんので、もし増やしたいなら挿し木をして増やしていく必要があります。
ストエカス系の育て方
暑い地方が原産であるストエカス系は、暑さには強い一方で寒さには極端に弱い種類です。寒い時期には鉢植えなら室内に入れる、植栽なら軒下に…といった対策も考えておきましょう。また、暑さに強いと言っても直射日光を浴び続けると枯れてしまうこともありますので、それなりに対策は必要です。成長はとても早く育てやすい品種であるといえます。
デンタータ系の育て方
デンタータ系は植栽に向きません。鉢植えならうまく育ちます。寒さに弱い品種なので、鉢植えで暖かい室内や日当たりの良い窓辺などに置きながら育てるのが良いでしょう。
プテロストエカス系の育て方
プテロストエカス系は寒さに弱い品種のため、鉢植えのほうがよく育ちます。デンタータ系と同様に、鉢植えで暖かい室内や日当たりの良い窓辺などに置きながら育てるのが良いでしょう。
ラベンダーを剪定する時期は?
ラベンダーは種類によって開花時期が違います。そのため、あまり開花時期に近いとでき始めた花芽まで剪定することになってしまいます。そのため、ラベンダーの成長が穏やかな秋から冬、春先にかけて行うのが原則となります。
カタチを整えるために実施する強剪定の頻度は、定植後2~3年目ぐらいから行います。生育が早く、根や茎がどんどん太くなっていきますので、あまり放っておくと剪定自体が困難になります。数年おきに強剪定をされることをおすすめします。
ラベンダーの剪定方法
ラベンダーはそのまま成長させると、幹と根に栄養がいきどんどん太くなっていきます。一方で小枝は老化していき、花つきが悪くなる傾向があります。そのため、2年に1回ほど剪定を行うことで、古くなった枝を落とし若々しい状態を維持するようにします。若い枝からは花がよく咲きます。ただし、品種ごとに適切な時期や方法を用いないと逆に弱らせることにも繋がりますので、自分の育てている品種にあったメンテナンスを実施しましょう。
アングスティフォリア系、ラバンディン系
ラベンダーの成長が穏やかな12月上旬〜2月下旬の間に剪定を行います。降雪の多い地方ならこの時期に枝をしっかり落としておけば、雪の重みで枝が折れることもないのでおすすめです。剪定の際は株元から1/3までを残し、園芸用ハサミでカットするようにします。
ストエカス系
成長の早いストエカス系は、その分樹形が乱れがち。ところどころ枝が伸びて樹形が乱れたり、枝が重なり合って風通しが悪くなってきたりしたら剪定を行います。11月上旬頃がもっとも適した時期です。剪定の際は株元から1/2までを残し、園芸用ハサミでカットします。また、成長が早いぶん枝が枯れているところもあるかもしれません。枯れた枝や日照や風通しにの支障なりそうな細い枝は、根元から切り取るようにしましょう。
デンタータ系
本格的に寒くなる前、9月中旬〜下旬の間に剪定を行います。毎年徐々に大きくなっていきますので、それを見越した剪定を実施します。具体的には全体の2/3を残し、園芸用ハサミでカットします。
プテロストエカス系
ストエカス系なので、成長が早く樹形が乱れがちになります。ところどころ枝が伸びるなど、ところどころ枝が伸びて樹形が乱れたり、枝が重なり合って風通しが悪くなってきたりしたら剪定を行います。花が枯れる10月下旬が、もっとも適した時期と言われています。生育が早いので全体の2/3を残し、園芸用ハサミでカットします。
ラベンダーを剪定をするメリット
ラベンダーの剪定のメリットは、二つあります。
一つ目はラベンダーが無事に季節を乗り切れるようになること。例えば開花後の剪定。これは、花を咲かせて疲れた株が暑い夏を無事に越せるように行います。ラベンダーは老化した枝からは多く花を咲かせません。新しい枝を増やして株の老化を防ぐようにすれば、また次回も充実した花を楽しむことができます。
二つ目はサイズをコンパクトに保てること。ラベンダーは生育が早い種類が多いのですが、大きくなればなるほど、育てば育つほど花を咲かせる茎が増え、花を咲かせる力が分散していってしまいます。こうなってくるとサイズが大きいだけで花のボリュームが少ないということになります。そうならないためにも定期的に剪定を実施し、サイズをコンパクトにすることで花を咲かせる力を維持することができます。また、コンパクトに保つことで風通しも良くなり、暑さや蒸れからラベンダーを守ることができます。
2024年1月26日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎