ボタン(牡丹)の剪定!剪定のプロが方法を伝授します
ボタン(牡丹)は中国原産でアジア地域では古くから観賞用や薬用に用いられています。ボリュームのある豪華な艶やかなお花は、「花王」「百花王」と呼ばれ「花の中でもっともすぐれたもの」として珍重されています。
ボタン(牡丹)は、ボタン科ボタン属の植物で、木の仲間(木本)ですが、良く似ている「シャクヤク(芍薬)」は、草の仲間(草本)で、宿根草と樹木ということですが、見た目には、葉の形、蕾の形、お花の散り方が違うので見分けるポイントとなっています。
そんな美しいボタン(牡丹)のお花を咲かせるには、こまめなお手入れと、適切な時期に行う剪定がかかせません。
そんな「お花の中でもっとも美しい」とされているボタン(牡丹)の剪定の時期や剪定方法、育て方のコツなどを、プロの庭師が伝授いたします。
目次
ボタン(牡丹)の基礎知識
ボタン(牡丹)の特長
ボタン(牡丹)の育て方
ボタン(牡丹)を剪定する時期は?
ボタン(牡丹)の剪定方法
ボタン(牡丹)の増やし方
自分での剪定は事故に注意!
ボタン(牡丹)の基礎知識
学名:Paeonia suffruticosa
科名:ボタン科
属名:ボタン属
原産地: 中国(北西部)
和名:牡丹(ぼたん)
英名:Tree peony
樹高:低木 1m~2m
常落区分:落葉性
日照:日なた
耐暑:弱い
耐寒:強い
開花期:4月中旬~5月中旬(春ボタン)、11月下旬~1月中旬(寒ボタン)
花色:白、ピンク、赤、紫、黄
剪定時期:5月頃(花がら摘み)、4~6月頃(芽かき)、9月~10月頃(切り戻し・枝透かし・葉刈り)
記念樹:「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」の通り、優美な花を咲かせ、牡丹をお庭に植えると家が繁栄すると言われている縁起の良い木です。詳しくはこちらから
花言葉:「王者の風格」「高貴」「富貴」「恥じらい」
ボタン(牡丹)の特長
中国原産のボタン(牡丹)は、日本でも古くから「花の王様」と呼ばれている観賞用の庭木ですが、日本には724年に中国から持ち帰ったとされています。当初、ボタン(牡丹)は薬用とされていたようですが、後にその花の美しさから観賞用として普及し、フランス式の品種改良などにより、園芸品種だけでも、300~400種程度あると言われています。現在でも品種改良は盛んに行われており、豪華な大輪のボタンから、可憐な小輪種や一重咲きの品種などもあり、花弁の重なり方や、花の大きさなども様々です。園芸用として広く普及しているものは春咲き品種(春牡丹)ですが、早春と初冬に花を咲かせる二季咲きの牡丹(寒牡丹)などもあります。また、冬牡丹と呼ばれているものは、春牡丹を1〜2月に咲くように温室などで調整したもので、品種としては春牡丹と同じものです。
ボタン(牡丹)の育て方
ボタン(牡丹)を植栽する場合、種はほとんど流通していないので、元気な苗を選びましょう。ボタン(牡丹)の苗は、基本的にはシャクヤクの台木に接木をして育てられた2年生苗を選びましょう。
日当たり・置き場所
ボタン(牡丹)は、日なたを好む植物ですが、春と秋にはしっかりと日が当たり、夏場には半日陰、冬場は冷風が直接当たらない暖かい場所が理想的な環境です。霜や雪が降る環境の場合は、傘で雪除けをしたり、真夏の西日などには寒冷紗などを使い、過酷な夏場を乗り切りましょう。
用土
ボタン(牡丹)は、水はけがと水持ちの良い土を好みます。地植えの場合は植え付け時に堆肥や腐葉土をたっぷりと施しましょう。鉢植えの場合は赤玉土と腐葉土を配合し、1割程度川砂を混ぜれば、水はけが一段と良くなります。
水やり
春以降は、土の表面が乾いたらたっぷり与えましょう。ボタンは根が浅く、夏場の乾燥期には水枯れを起すこともあるので、傘で直射日光を遮ったり、水鉢を作り水やりを行いましょう。
肥料
ボタン(牡丹)は、肥料を好む植物で、3月の芽出し肥えと、花後のお礼肥えを忘れないように与えましょう。ボタンの根は地表近くに張って伸びるので、緩効性化成肥料を株元に施しましょう。また生育の悪い時や悪天候が続いている場合などは、液肥を薄めてミネラルやアミノ酸を与えるようにしましょう。尚、肥料が無い場合は樹勢が弱まったり、元気に育たなくなる場合がありますが、植え付け時から多くの肥料を与えてしまうと、栄養のある環境に依存するようになるため、肥料が切れた際の生長が悪くなる傾向がありますので、最小は成分の少ない肥料を施していきましょう。
病害虫
ボタン(牡丹)は、4~10月頃に、うどんこ病や炭疽病や褐斑病にかかることがあります。害虫ではコガネムシやカイガラムシに注意が必要です。
夏越し
近年の酷暑には、夏場に根が乾燥しないように水苔など用いて、乾燥を防いだり、直射日光が当たる場合は傘などで日差しを妨げるようにして保護を行いましょう。
冬越し
ボタン(牡丹)には、冬に気温が下がることが必要ですから、水はほとんど与えずに、凍結防止として藁などで保護をしましょう。
ボタン(牡丹)を剪定する時期は?
芽かき剪定の時期:2月頃
1年枝の葉芽でふところを向いているものは全てかき取りましょう。古枝の葉芽も幹を増やす予定がなければ、かき取っておきましょう。
台芽かきの時期:4月~6月頃
台芽かきは4月~6月頃に、台木に花芽が付いていたら芽かきを行いましょう。ボタン(牡丹)の苗木は、ほとんどがシャクヤクの台木の接木苗ですから、シャクヤクの台木から芽が出ていたら取り除いておきましょう。
ひこばえの整理時期:4月~6月頃
ひこばえの整理は、4〜6月頃に行いましょう。ボタン(牡丹)は株立ち性の植物ですから、若芽のひこばえが何本も生えてきますから、幹として育てるもの以外は切り取っておきましょう。
摘蕾(てきらい)の時期:5月頃
摘蕾は、5月頃のつぼみが膨らみ、綻びはじめる頃に取り除いておきましょう。つぼみが小さく固いうちには行わず、新しい茎が伸び、つぼみが綻び始めるまで待ちましょう。
花がら摘みの時期:5月〜6月頃
花がら摘みは、5月〜6月頃の開花期間に、開花しないお花や、花の色が褪せたもの、形が崩れかけてきたものを摘んでおきましょう。
芽つぶし(芽かき)の時期:6月頃
芽つぶし(芽かき)は、6月頃のお花が終わった後に行いましょう。
切り戻し剪定の時期:9月下旬〜10月下旬頃
苗木の場合は9月下旬〜10月下旬の植え付け前に行いましょう。植え付けから1〜2年以降の株は、葉が黄色に変わってくる9月下旬〜10月下旬頃で、葉刈りの後に行いましょう。
枝すかし剪定の時期:9月下旬〜10月下旬頃
葉が黄色に変わってくる9月下旬〜10月下旬頃に、切り戻し剪定と同時に行いましょう。
葉刈り剪定の時期:9月下旬〜10月下旬頃
葉が黄色に変わってくる9月下旬〜10月下旬頃の、切り戻し剪定の前に行いましょう。木の活動期の葉刈りは、木を傷める原因となるので、行わないようにしましょう。
ボタン(牡丹)の剪定方法
ボタン(牡丹)を剪定するときは、できるだけ植物の切り口が乾きやすい晴れた日の午前中に行いましょう。また、ボタン(牡丹)は、「切り戻し剪定」「枝すかし剪定」を行った際は、樹木の保護剤(キニヌールやトップジンMペースト等)を木の切り口に塗り、細菌の侵入を防いでおきましょう。
また、剪定道具なども、良く切れる清潔な剪定鋏を使用しましょう。
芽かき剪定の方法
ボタン(牡丹)の剪定で注意すべき点は花芽を残すということです。幹の低い位置で花を咲かせるために、「芽かき」の際には、葉柄の付け根に出てきた芽のうち、ひとつの枝につき株の基部に近い2〜3芽だけを残し、他の芽は全て取り除いておきましょう。
台芽かきの方法
台芽かきは4月~6月頃に、台木に花芽が付いていたら芽かきを行いましょう。シャクヤクの台木から芽が伸びてきたら、シャクヤクの芽を土の際で切り取りましょう。その芽がボタンの芽かシャクヤクの芽か判断が付かないときは、葉が開くのを待ち、葉の形で判断を行いましょう。葉先がギザギザであればボタン(牡丹)、丸みがあればシャクヤクです。
ひこばえの整理の方法
ひこばえの整理は、4〜6月頃に行いましょう。ボタン(牡丹)は株立ち性の植物で、成長期に複数の若芽が生えてきます。幹として残す芽以外の芽は、土の際で切り取ってしまいましょう。ひこばえの整理の適期が過ぎてしまったら、秋に不要枝として剪定しておきましょう。
摘蕾(てきらい)の方法
摘蕾とは、蕾のうちに花を摘みとり、花数を減らして、株の栄養が消耗されることを防ぎ、花や実る果実を大きく、育てることですが、若木のうちは、花を咲かせるよりも株の生長を優先した方が良い場合は、全ての蕾を摘み取ってしまう場合もあります。摘蕾の方法は、株の大きにもよりますが、1株につき10~20程度の花芽を残し、それ以外の蕾は摘み取りましょう。そうすることで、隔年結果(かくねんけっか)を防ぐことができます。
花がら摘みの方法
花がら摘みは、5月〜6月頃の開花期間に、木の体力を消耗させないように、花の色が褪せたり、形が崩れてきた、散りかかりの花がらを切り取ります。 花がらの摘み方は、花のすぐ下の1枚葉の下で切り取ります。
芽つぶし(芽かき)の時期:6月頃
芽つぶし(芽かき)は、6月頃のお花が終わった後に、葉柄の付け根に出てきた葉芽のうち、株の基部に近い2〜3芽だけを残し、他の芽はピンセットでつぶします。芽つぶしの時期には、枝を剪定したり葉を切り取ることは避けましょう。
葉刈り剪定の方法
ボタン(牡丹)の葉刈り剪定は、葉が黄色に変わってくる9月下旬〜10月下旬頃の、切り戻し剪定の前に行いましょう。葉刈り剪定とは、葉を全て切り落とすことですから、葉と茎をつなぐ部分(葉柄)を残し、剪定ばさみをで切り取ってしましましょう。
切り戻し剪定の方法
ボタン(牡丹)の切り戻し剪定は、苗木の場合は9月下旬〜10月下旬の植え付け前に行います。植え付け後1〜2年以降の株は、葉が黄色に変る9月下旬〜10月下旬頃の、葉刈りの後に行いましょう。切り戻し剪定のとは、枝を短く切る剪定のことで、幹の長さを調整するため、残す枝を選び、不要な芽のついた枝を切り落とします。基本的には、枝の付け根の花芽を1~2つ程度残し、その花芽より1cm~2cm程度先を切り落としましょう。
枝すかし剪定の方法
枝すかし剪定は、葉が黄色に変わってくる9月下旬〜10月下旬頃に、切り戻し剪定と同時に行います。枝透かし剪定は不要な枝を付け根部分から切り取っていきます。風通しを悪くしている枝や日当たりの妨げになっているもの、枯れている枝、樹形を乱す枝なども切り取ってしましましょう。
ボタン(牡丹)の増やし方
ボタン(牡丹)は一度植えつければ毎年花を咲かせてくれる庭木ですが、種から育てる場合は、最初の花が咲くまでに5〜10年を要するため、多くの場合は、苗木から育てる方が多いのが実状です。
そんなボタン(牡丹)を、増やすには、種まき、分球(球根に新しくできた子球から発根させる方法)、挿し木、葉挿し、挿し芽、株分け、取り木、接ぎ木などの方法がありますが、早めにお花を見たいのであれば、シャクヤクの台木に接ぎ木という方法が一番確実かも知れません。接ぎ木は、芽のついたボタンの枝を穂木とし、台木にはシャクヤクを使用します。接ぎ木は、8月下旬〜9月下旬頃にチャレンジしてみてくださいね。
2024年1月26日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎