おうち需要が増えたこの機会に、お庭にもこだわりたいという方が増えています。
せっかくのマイホームなら、人と違ったオンリーワンの庭づくりにチャレンジしてみたいもの。でもどんなガーデンデザインが良いのか、色々なスタイルがありますよね。
この記事では、ここまでご紹介した「イングリッシュガーデン」や「ナチュラルガーデン」に次いで耳にしたことのある「フレンチガーデン」についてご紹介したいと思います。フレンチガーデンとは、どんなスタイルなのでしょう。そして、どんな植物がおすすめなのでしょうか?
まずは「フレンチガーデン」の基礎知識から庭づくりのアイデアをご紹介します。
目次
「フレンチガーデン」とは?
■ヴェルサイユ宮殿が有名
■フレンチガーデンの定義はあいまい
■なぜか人は幾何学に惹かれる
フレンチガーデンにおすすめの庭づくり3選
【その①】幾何学風のフランス式庭園を模した庭づくり
▪玄関まで植物でまっすぐ作る庭づくり
▪玄関アプローチの両脇に左右対称の花壇を作る
▪幾何学風フレンチガーデンにおすすめの植物は?
【その②】パリ風のおしゃれな色使いをした庭づくり
▪カラー使いを真似てみる
▪パリ風にリフォームしてみる
▪パリ風フレンチガーデンにおすすめの植物は?
【その③】南プロヴァンス風の庭づくり
▪南欧風(田舎風)ガーデン
▪壁や窓、地面をリフォームしてみる
▪南プロヴァンス風のフレンチガーデンにおすすめの植物は?
まとめ
「フレンチガーデン」とは?
現代ガーデニング用語でいう「フレンチガーデン」とは、「平面幾何学式庭園(整形庭園)」のことを指し、世界各国で共通のイメージを持っています。「平面幾何学式庭園(整形庭園)」と言われても、漢字ばかり多くて何を言っているのかよく分かりませんよね。例えば、玄関を正面にして、通路や植栽が幾何学的な左右対称になっているような庭づくりが特徴です。
ヴェルサイユ宮殿が有名
「フレンチガーデン」は、イタリアのルネサンス庭園から派生したフランス式庭園です。ルイ14世の時代に造園家アンドレ・ル・ノートルが考案した「ヴェルサイユ宮殿の庭園」などが有名です。日本では、19世紀の終わりごろには、赤坂離宮や日比谷公園、新宿御苑などにフランス式の平面幾何学式庭園が造られました。
なぜか人は幾何学に惹かれる
幾何学模様と言うと、左右対称や緻密な計算など、どちらかというと理系のイメージです。細かさや堅苦しさを感じる一方、なぜか人は「幾何学模様を見ると、心が落ち着く」ということが多々あるようです。皆さんの身の回りにも、ネクタイやスカーフの柄や、人気アニメの主人公の緑と黒の市松模様など、身の回りに幾何学模様は溢れています。規則正しく並んだものを見ると、人はなぜかスッキリした気持ちになるのだそうです。
幾何学のフレンチガーデンがもたらす効果としては、この家の住人はきっちりした性格で、規則正しい生活をしていそう、清潔でまじめそう、オープンなイメージなどの好印象を与えることができます。一方で、幾何学ガーデンに枯れた植物をそのままにしたり、雑草などを生やしたりすると、せっかくの規則正しいイメージが台無しになってしまいますので、庭づくりの一環として防草対策もしっかり施しましょう。
フレンチガーデンの定義はあいまい
ところで皆さんは、幾何学的な左右対称の庭を、近所の一般住宅で見たことがあるでしょうか?大きな公共施設や公園でもない限り、見たことがないですよね?実は、日本の一般住宅の「フレンチガーデン」の定義はあいまいで、ベテランのガーデナーであっても「フレンチガーデンとは何を指すのか分からない」と首をひねることもあるほどです。
フレンチガーデンにおすすめの庭づくり3選
それでは、日本の一般家庭における「フレンチガーデン」のイメージにはどんなものがあるでしょうか。
大きく分けて、次の3つがあげられます。
その①幾何学風のフランス式庭園を模した庭づくり
その②パリ風のおしゃれな色使いをした庭づくり
その③南プロヴァンス風の庭づくり
これらの3つを、次の章で深く掘り下げてみたいと思います。
【その①】幾何学風のフランス式庭園を模した庭づくり
本来のフレンチガーデンとは宮殿に見られるような庭園で、左右対称、縦横に道が走り、真ん中に立派な噴水がそびえ立つような外構です。一般家庭ではとても現実的ではありませんが、この記事では、フランス式庭園のような「幾何学的ガーデン(の簡易版)」を、ご自宅の庭に取り入れる場合のご提案をしたいと思います。
(一般住宅でのよい見本画像がなくて恐縮ですが・・・以下の画像の規模を小さくしたところを想像してお読みください。)
■玄関まで植物でまっすぐ作る庭づくり
フランス式庭園を模して、入り口から玄関までまっすぐ垣根で道を作り、垣根で囲った中のスペースに植物を植えたり、菜園にしたりする庭づくりはいかがでしょうか。垣根でなくとも、50cm~1mほどのこんもりとした同じ植物で列をなして植えても構いません。
垣根と言うと、敷地の外周に塀のように作るものという概念があるかもしれませんが、思い切って庭全体を「田」の字(その半分で「日」を横にした形でも可)に分割してしまうのです。例えば、右はご主人の家庭菜園、左は奥様のバラ園といった具合にしてもよいでしょう。キッズスペースや、駐車場とゾーニング分けしてもいいかもしれませんね。
■玄関アプローチの両脇に左右対称の花壇を作る
庭に生け垣で田の字を作る宮殿スタイルは、広い土地をお持ちでないとできないという現実があります。ごく一般的なご家庭の広さで、幾何学のフレンチガーデンを目指すなら、玄関アプローチの両脇に、まったく同じ花壇を線対称に設置してみてはいかがでしょうか。(この画像の正面に玄関があると想像してご覧くださいね。)この時、左右で同じ種類の植物を植えると、きっちりしていて気持ちのよい外構になります。
■幾何学風フレンチガーデンにおすすめの植物は?
生け垣でゾーニング分けするのであれば、洋風垣根の素材「ボックスウッド」「キンメツゲ」また、木立性ハーブ「ローズマリー」で作っても素敵です。花壇タイプなら「ゴールドクレスト」や「エメラルド」などのコニファーを左右対称に植えるのも効果的で、あとは左右対称を意識してお好きな宿根草や季節の一年草を植えるとよいでしょう。例えば、真っ赤なバラをずらりと植えれば、貴族になったような気分を味わえますし、左右対称にチューリップを植えればメル面チックなアプローチになります。
植える場所が日なたなのか半日陰なのか、完全日陰なのかによっても選ぶ植物が変わってきますので、現場を下見に来てもらい、プロと一緒に植物を選ぶことが肝心です。
【その②】パリ風のおしゃれな色使いをした庭づくり
前述の通り、フレンチガーデンとは本来は「平面幾何学的」なフランス式庭園を模した庭づくりのことですが、日本の住宅においては必ずしもそうではないようです。SNSなどで「フレンチガーデン」と言っている人の庭の画像を見ると、幾何学などではなく、ナチュラルガーデンやイングリッシュガーデンに近い雰囲気です。
特徴的なのは、その色使いにあります。イングリッシュガーデンでは植物や自然なアースカラーがメインなのに対し、フレンチガーデンでは、植物や自然の中に、鮮やかなカラーを差し色に使うことがあるようです。
■カラー使いを真似てみる
イングリッシュガーデンが片田舎風なのに対し、フレンチガーデンは洗練された都会風でもあります。フランス人はとてもおしゃれで、ガーデンにもカラーセンスが光ります。例えば、緑あふれるナチュラルガーデンに、このような鮮やかな紫色のガーデンファニチャをさりげなく置くことがあります。日本人の感覚だと「え?」と一瞬、躊躇してしまいますが、これが、以外にもガーデンにマッチしてしまうのです。例えば木製のウッドデッキや枕木の上に、目が覚めるような真っ青のロッキングチェアをポンと置いても、フレンチガーデンならば絵になります。
■パリ風にリフォームしてみる
イングリッシュガーデンがモスグリーンや茶系、ネイビーなど自然に溶け込むトラディショナルな色使いをするのに対し、フレンチガーデンでは、窓枠や板塀などにブルーグレイやクリーミーなパープルなど、自然界にはないようなくすんだパステルカラーを持ってくることがあります。
画像のように、オレンジベージュの壁にブルーグレイを持ってくる感覚は、日本人にはあまりないセンスでとてもおしゃれですよね。外壁や庭のリフォームをお考えの際にはパリジェンヌになったつもりで、配色を変えてみるのも楽しいでしょう。どこか一か所に差し色を追加するだけで、フレンチ風になってくれます。
■パリ風フレンチガーデンにおすすめの植物は?
フレンチガーデンはファニチャだけではなく、植栽に使う植物の花色にもセンスが光ります。花壇を作る時に、日本人の感覚だとつい「鮮やかなら鮮やか系」「パステルカラーならパステル系」と言った具合に、同じような色あいでまとめたくなってしまいますが、フレンチガーデンでは思い切って、鮮やかな色もくすんだカラーも混ぜていろんな色を植えてみましょう。鮮やかな色味は季節の一年草を、くすみカラーはカラーリーフプランツ、例えば銅葉のアジュガやシルバーリーフのガザニアなどを効果的に使いましょう。
花壇に陰影ができて、まるで印象派クロード・モネの絵画のようになりますよ。口で言うのは簡単ですが、ここは植物選びにセンスが光るところです。もし心配でしたら、植物のセンスのよいスタッフがいる専門業者にお任せくださいね。
【その③】南プロヴァンス風の庭づくり
日本における「フレンチガーデン」の概念はあいまいだと申しましたが、ひょっとしたらハウスメーカーの「南プロヴァンス風(南欧風)住宅」に似合う庭づくりのことを指す場合もあるかもしれません。南プロヴァンス風の住宅とは、「輸入住宅風」「かわいい系」のナチュラル系の奥様に大人気の住宅モデルです。例えば、白やベージュの壁に、テラコッタ色やサンド色の洋瓦で、切妻屋根、白い格子の窓、石畳などナチュラルな外構が特徴です。
■南欧風(田舎風)ガーデン
フランスの南プロヴァンス地方は大自然に抱かれた太陽に輝く風光明美なところです。ゴルドやルシヨンといった「フランスの美しい村」はヨーロッパツアーでも人気なので、観光された方もいらっしゃるでしょう。
南プロヴァンス風ガーデンの目指すところは、豊かな自然と美しい景観です。使用する植物はイングリッシュガーデンやナチュラルガーデンと同じように、住宅の景観にマッチするような宿根草やシンボルツリー、季節の一年草など思いのままに植えてよいでしょう。シンボルツリーにオリーブやソテツ、ヤシなどを使えばリゾート風になってくれますよ。
■壁や窓、地面をリフォームしてみる
フレンチガーデンは植物と建物との調和が成功のカギです。庭づくりの一環として、建物の壁や窓をリフォームしてみるのもよいでしょう。窓を白い格子のものに取り換えると、南欧の雰囲気が出ます。上げ下げ窓や、すべり出し窓も南欧風ですね。既存の住宅を南プロヴァンス風にイメチェンするには、壁をコテ塗りにするのも素敵ですよ。コテ塗りとは、職人さんの手により大胆に連波に塗り、あえてコテ跡を残す外壁塗装です。
外構は、南仏の観光都市ゴルドのような石造りや、ルシヨン(オークルという土の産地)のオレンジかかったベージュを意識してリフォームすると、プロヴァンスの雰囲気が出ます。笠木にレンガを使った塗り壁の目隠し(ポスト・表札)、天然石の石畳、アイアンの鋳物や、レンガや枕木の立水洗、コンクリート土間にレンガを合わせた駐車所などがおすすめです。腕に自信があれば、ご自分でDIYするのもよいかもしれませんね。
■南プロヴァンス風のフレンチガーデンにおすすめの植物は?
もし、南プロヴァンスの雰囲気を醸し出したければ、イエロー系の岩で囲った花壇に、南仏が産地であるラベンダーを植えてみるのはいかがでしょう。地中海性気候を好むイングリッシュラベンダーは日本で育てるのはやや難しく、高畝にしたり水はけ良くしたりしたとしても岡山の夏は過酷かもしれません。高温多湿に強く、ウサギの耳のような形をした「フレンチラベンダー(ストエカス系)」を選べば初心者でも安心ですよ。
まとめ
こちらの記事では、フレンチガーデン風のおすすめの庭づくりについて書いてみました。本来のフレンチガーデン(幾何学フランス式庭園)と一般家庭で言われているフレンチガーデンのイメージの違いを感じていただけたかと思います。きっちりしたイメージの幾何学フレンチガーデンも気持ちがよいですが、アバウトにセンス良く作るフレンチガーデンも素敵ですよね。どんなフレンチガーデンをイメージしているのか、専門業者とイメージをすり合わせてデザインを提案してもらって素敵な庭づくりを楽しんでくださいね。