「いまさら聞けない玄関アプローチ」シリーズ、今回はエクステリアで人気の「枕木」です。枕木といえば、茶色くて太い角材を想像しますが、枕木っていったい何なんでしょうか?木材を雨ざらしの地面に敷いて腐らないのでしょうか?この記事では「枕木」とは何かを分かりやすく解説したいと思います。
枕木の歴史
枕木の種類
天然木の枕木
中古枕木
天然木の枕木
人工木の枕木
コンクリート枕木
FRP樹脂枕木
アルミ角柱枕木
枕木のエクステリア施工例
立ち枕木による外構施工例5選
①フェンス
②目隠し外構
③郵便受け・インターホン・表札
④パーゴラ
⑤立水洗
敷き枕木による外構施工例5選
①小道
②駐車場
③階段
④花壇
⑤デッキ
枕木と相性のいい素材5選
①レンガ
②芝・人工芝
③砂利
④バークチップ
⑤土間コンクリート
まとめ
枕木とは
枕木は、玄関アプローチのエクステリアとして昔から人気の外構素材なので、皆さんも一度は見たことがあると思います。しかし、枕木って何なのでしょうか?あまりにも当たり前すぎて、本物の枕木をじっくり見たことがない方もいらっしゃるかもしれませんね。
枕木は、英語では「Railroad Tie」、本来は「電車のレールの下に敷く角材」のことを言います。電車の線路には、砂利が敷き詰められた上に、一定間隔で横向きに角材が敷かれ、その上に2本のレールが敷かれています。このレールを支えている角材が「枕木」です。
枕木の歴史
今、線路の枕木を見てみると、コンクリート製の角材が主流となっていますが、かつては、読んで字のごとく「木」が使われていました。この木製の枕木は劣化するので、線路のメンテナンスにより定期的に交換されており、昔はその枕木の廃材を、外構業者が安価に買い取ることができました。ナチュラルでアンティークな雰囲気を醸し出すため、枕木は玄関アプローチなどのエクステリアに大人気となったのです。
ところが、時代の流れとともに木製の枕木は廃れていきました。当時、木の枕木には「クレオソート」というコールタールを蒸留して作られた防腐剤が一般的に使用されており、苦いようなツーンとした独特の香りが特徴でした。防腐・防虫効果は10年以上の高耐久性で、かつてクレオソートを染み込ませた木材は、電信柱など公共的な設備にも利用されていたほどです。
しかし、このクレオソートに発がん性物質が含まれるとのことで、2000年を過ぎたあたりから段々と、クレオソートの使用を中止する動きになりました。また、木製の枕木の劣化による脱線事故などの影響もあって、鉄道の枕木は、次々とコンクリート製の枕木に交換されていったのです。そういった理由で、今は鉄道から木製の枕木の廃材が出なくなってしまいました。
(ちなみに鉄道では、今では木を使用していないので枕木ではなく「マクラギ」とカタカナ表記をするそうです)
日本で木製の枕木が廃止になった後は、国産の中古枕木が希少になり、価格が高騰したこともありました。もし入手できたとしても、今では発がん性物質の染み込んだ枕木を一般家庭に使用することは禁止されています。需要はあるのに、安全かつ安価で入手できなければ一般家庭のアプローチに使うこともままなりませんよね。
そこで、建材業界に「枕木風エクステリア」が誕生しました。天然木に発がん性のない「新クレオソート」防腐剤を染み込ませたものであったり、コンクリートなど木以外の素材で作ったものだったりする外構素材です。玄関アプローチに使うのであれば、雨ざらしでも高耐久でなければなりません。それはウッドデッキの素材選びとよく似ているかもしれませんね。
次の章では、枕木の種類をご紹介します。
枕木の種類
天然木の枕木
中古枕木
本来「枕木」とは鉄道の枕木の廃材を利用したもの。当時は安価に入手できた「中古の枕木」を玄関アプローチに使うのが一般的でした。防腐剤クレオソートの事実上の使用禁止などの時代の流れにより、国産の枕木は廃れ、入手は困難になりました。今では一部、国外から輸入された木製の中古枕木が出回っています。その場合、クレオソート不使用のものを選びましょう。
天然木の枕木
こちらはエクステリア専用に作られた、新品の木製の枕木です。新品ですがアンティーク感を出すためにエイジング加工をしたものもあります。国産天然木、たとえばソフトウッドの杉やカラマツ材などに防腐剤を加圧して染み込ませ、耐久耐候性を出したものなら比較的リーズナブルですが、耐久性に劣ります。防腐剤不使用のウリン材などハードウッドのものなら30年以上の耐久性がありますが、いずれにせよ数年に一回、塗装などのメンテナンスが必要です。
人工木の枕木
コンクリート枕木

【画像引用:楽天 https://item.rakuten.co.jp/tamatebako/makuragi-au675/】
コンクリートで作られた枕木は、カラーバリエーションも豊富で、ずっしりとした質感。品質が安定しているので、玄関アプローチにも使いやすい人工の枕木です。コンクリートなので防虫、防蟻、防腐に優れています。見た目も木に似せているので、ナチュラルな玄関アプローチにも違和感なく使えます。使い込まれたようなアンティーク感を再現したものもありますよ。デメリットは、表面の塗装が剥がれるとコンクリートと分かってしまう点です。
FRP樹脂枕木
FRP樹脂とは、聞きなれない名前かもしれませんが、繊維強化プラスチックのことです。木粉をプラスすれば、かなり本物の木材に近い表情が出せ、人工のウッドデッキ素材にもよく使われています。
コンクリ同様、腐りなし、白アリなしで、耐久性もハードウッドと同じくらいで30年ほどと長持ちします。本物の枕木やコンクリ製に比べて軽量で、施工しやすいのも特徴です。デメリットは、耐荷重に弱い点です。駐車場など、上に重いものが乗る場所に埋め込むと破損してしまいます。
アルミ角柱枕木

【画像出典:YKK AP https://www.ykkap.co.jp】
こちらは、木目調アルミ角柱などと呼ばれ、LIXILやYKK APなどの主要メーカーでも人気のパーツです。岡山の新築住宅でもたまに見かけますよね。一般的な枕木よりスリムなものもあり、フェンスなどと同シリーズで揃えられるので、玄関アプローチに一体感が生まれます。ただし、やはり本物の枕木とは印象が違うため、ナチュラル感よりシャープ感やスタイリッシュさを求める人に向いています。
枕木のエクステリア施工例
枕木の施工には、大きく分けて、地面に立てて使う「立ち枕木」エクステリアと、地面に敷いて使う「敷き枕木」のエクステリアがあります。同じ枕木でもアイデア次第で、色々な外構が造れそうですね。いくつか施工例を見てみましょう。
立ち枕木による外構施工例5選
①フェンス

【画像出典:LIXIL https://www.lixil.co.jp】
こちらの画像は、LIXILのアルミ角柱枕木を使った施工例です。リビングの目隠しを兼ねたフェンスで、必要以上に空間を塞がないので風通しがよいのが特徴です。この画像では、色は黒を使用していますが、細い角柱を使用しているので重くなりすぎず、都会的でスタイリッシュな印象です。
②目隠し外構

【画像出典:YKK AP https://www.ykkap.co.jp】
フェンスほど囲いたくはないけれど、玄関周りやリビングの掃き出し窓の前など、一部分だけ目隠ししたい。でも圧迫感があるのはいや、という方におすすめなのが、枕木による目隠し外構です。日光を必要以上にさえぎらず、風通しもよく、快適なセミクローズドな空間作りを実現します。枕木の目隠しと、シンボルツリーとの組み合わせもおすすめですよ。目の錯覚で敷地が広く見える効果も期待できそうです。
③郵便受け・インターホン・表札

【画像出典:YKK AP https://www.ykkap.co.jp】
枕木は、一本でも、ナチュラルでおしゃれな雰囲気を醸し出してくれるのが素晴らしいところです。エクステリアが予算オーバー気味なのであれば、こういったシンプルかつおしゃれな使用方法も候補に入れてみてくださいね。主要メーカーで出しているアルミ角柱の枕木なら、フェンスと同じシリーズ使いをすれば、玄関アプローチに統一感が生まれます。
④パーゴラ

【画像引用:楽天 https://item.rakuten.co.jp/gardenyouhin/pg-09702/】
こちらはガーデニング上級者の枕木の使用方法で、長尺の中古枕木で設えたパーゴラです。アンティーク感のある枕木を使えば、イングリッシュガーデンによく合います。重量物で作る時はレベル器でしっかり水平を出さないと、倒壊による事故も懸念されますので、信頼できるエクステリア専門業者にお願いするとよいでしょう。
⑤立水洗

【画像引用:楽天 https://item.rakuten.co.jp/jjpro/aks-57085/】
立水洗も、マイホーム建設時の質素なまま、水さえ出ればいいと言った感じで放置になってしまいがちなパーツです。おしゃれな玄関アプローチのアクセントに、枕木の立水洗を設えてみたいですよね。水回りに使う枕木は、コンクリートやFRP樹脂でできた疑似枕木を使うのもおすすめです。中でもFRPは軽量なので女性でも簡単に作ることができますよ。画像のような「枕木風立水洗キット」も販売されています。
敷き枕木による外構施工例5選
①小道
雑木林の木漏れ日の中に続く枕木の小道、高原の別荘地などで見かけ憧れます。これをぜひご自宅の玄関アプローチにも取り入れてみてください。気になるのは「腐らないのか」ということ。枕木は線路に使われていたくらい耐久性はありますが、木なのでいつかは腐るので、定期的な入れ替えが必要です。そこで、腐らないコンクリ製や樹脂製の疑似枕木に注目してみてください。品質も安定しており安心して使用できますよ。
②駐車場
枕木を使いたいけれど、玄関アプローチにスペースがないという方、駐車場はどうでしょうか?もともと上に電車が乗っていたくらいですので、荷重によく耐えます。駐車場全体に敷き詰めるのが無理なら、太い枕木を車止めに使用してみてください。ほんの少しだけでも、アクセントになり良い雰囲気になってくれますよ。しかし、FRP樹脂製の枕木は荷重に弱いので駐車場には使用しないように注意しましょう。
③階段
岡山でも近年豪雨対策のために道路と住宅に高低差を持たせたお宅も増えてきましたが、玄関アプローチが「スロープでは味気ないな」と思う方には、枕木を使った素敵な階段にチャレンジしてみませんか?
枕木や丸太を土留めに使用した階段を、山登りやハイキングの遊歩道で見かけることがありますが、その応用で、砂利やレンガと組み合わせても自然派の玄関アプローチを演出することができます。植物との組み合わせにも意欲が湧いてきそうですね!
④花壇
枕木花壇もイングリッシュガーデンなどでよく見かけるエクステリアです。長尺の枕木を、ただ横にして土に埋め込んだだけでアンティークな雰囲気を醸し出してくれます。また、短く切った枕木を、立てて花壇の縁取りにするのも素敵ですよ。コンクリートや樹脂製の疑似枕木の花壇キットなども販売されていますので、気軽に施工したい人は利用するとよいでしょう。
⑤デッキ
枕木のデッキ、素敵ですよね。カフェや雑貨店などの商業施設で見かけることがあります。デッキにするなら水平を出したり、大量に枕木を使用したり、手間暇がかかります。DIYで仕上げるのはなかなか難しいと思いますので、専門業者に依頼して手配してもらうとよいでしょう。
枕木と相性のいい素材5選
①レンガ

【画像引用:楽天 https://item.rakuten.co.jp/tokyo-gardening/81610002/】
枕木とレンガのコラボレーションは、ぬくもりのある素材同士、合わないわけがありません。枕木も、、白系、黒系、こげ茶色など、少しですがカラーバリエーションがありますので、レンガの色もセンスに合わせて選ぶとよいでしょう。
②芝・人工芝

【画像引用:楽天 https://item.rakuten.co.jp/tokyo-gardening/81610002/】
枕木と芝生のコラボもナチュラル同士でよく合います。枕木をあえて間隔をあけて配置し、芝生や人工芝、また、セダムやヒメイワダレソウなど別のグランドカバープランツと組み合わせてもよいでしょう。
③砂利

【画像引用:楽天 https://item.rakuten.co.jp/tokyo-gardening/81610002/】
枕木と化粧砂利のコラボも鉄板の組み合わせです。そもそも線路では、砂利の上に枕木が乗っていたのですから、合わないわけがありません。こちらもカラーバリエーションがありますので、ご自宅の雰囲気に合わせて様々なパターンが考えられます。砂利の色を選ぶのも楽しみですね。
④バークチップ
こちらはアウトドア施設や園芸店などでよく見られる組み合わせ。砂利との組み合わせと似ていますが、砂利だと人為的な印象ですが、バークチップだと、あたかも自然のままのようなこなれた雰囲気ですよね。アンティークな枕木と調和して、さりげないナチュラルな景色を作ってくれます。
⑤土間コンクリート

【画像引用:楽天 https://item.rakuten.co.jp/kagami/foc2-sle12o0-oak/ 】
一見、合わなさそうな土間コンクリートと枕木の合わせ技ですがいかがでしょうか。土間コンクリートは機能的に素晴らしいのですが、無機質になりがちです。ほんの少し枕木素材をプラスしただけで、温かみのある表情になりますよ。駐車場では車止めに使われることがあるようですよ。ぜひ真似してみてくださいね。
まとめ
いまさら聞けない枕木について、歴史、種類、施工例をあげて解説してみました。かつて大人気だった中古枕木ですが、今ではクレオソート防腐剤を染み込ませた枕木は一般家庭の玄関アプローチには使用禁止となっています。かわりに台頭してきたコンクリート製やFRP樹脂製、アルミ製の疑似枕木をうまく利用して、すてきな、枕木エクステリアを作ってくださいね。
庭.proの安心基準
「庭.pro」では信頼できる地元の専門業者=プロをご紹介するための独自の評価基準を設けています。
お庭づくり、外構、エクステリアなどの専門家職人歴10年以上で造園施工管理技士・造園技能士・ブロック塀診断士・エクステリアプランナー・樹木医などの資格を持つ職人もしくは専門業者のみを厳選しています。
各種メーカー商品の豊富な品揃えとお客様のご要望を丁寧にヒアリングし、予算と美観のバランスの取れた外構・エクステリア・庭づくりを豊富な商品ラインナップ、経験からご提案します。不要なコストは抑えつつ施工次第で品質が大きく変わるお庭づくりに外構エクステリア工事は、安さ!のみではなく、信頼できる施工業者選びが重要です。
多様な趣味思考にも対応可能な職人や施工業者はそれぞれに特長や得意技術、こだわりを持ち合わせたプロ集団なので、どのようなご要望にも対応できるように取り組んでいます。
現地調査、見積無料で信頼できる地元の信頼できる職人をご紹介しますので、まずはご相談ください。
2024年1月26日
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎



