コブシは桜より一足先に咲いて春の訪れを告げるため、コプシの開花を農家の方たちは、別名「タウチザクラ(田打ち桜)」、種蒔桜、田植桜などと呼ぶ地域もあります。またコブシの花の咲き具合を見て、「花が多くつけば豊作」「上向きに咲けば雨風が少ない」など、その年の農作物の出来を占う習慣もあります。またコブシには悲しい話が伝えられてます、壇ノ浦の決戦に敗れた乎家の落人が逃れ熊本の山奥まで来た時の朝、目を覚ますと辺り一帯の山に無数の白旗がはためいていました。それを見た落人たちは、もはやこれまでと思い、自刃して果ててしまいます。しかし、源氏の追っ手の白旗に見えたのは、実はコブシの花だったそうです。それほどまでに、コブシの花は、一夜にしてパッと満開になるくらい早く開花するそうです。ちなみにコブシの花言葉は「友情」「友愛」
和名のコブシは漢字で「辛夷」と書きます。「辛夷」という言葉は中国ではモクレンのことを言い、漢方薬にも配合されています。花の姿は中国原産のハクモクレンによく似ていますが、コブシは日本原産の植物で、中国には自生していません。
コブシという名は、つぼみ、実の形が、幼児の挙(こぶし)に似ているところからきているといいます。高さは10~15メートル位いになり、3月~5月の春の季節に、枝先に純白の花を咲かせます。葉が出る前に花が咲きます。
目次
コブシの基本データ
コブシとハクモクレンの見分け方
コブシの剪定
コブシの栽培環境
コブシの害虫
まとめ
自分での剪定は事故に注意!
コブシの基本データ
分類:モクレン科モクレン属
樹高:高木、10m~15m
常落区分:落葉性
学名:Magnolia kobus
別名:タウチザクラ/望春花/迎春花/ヤマアララギ/コブシハジカミ/イモウエバナ/タネマキザクラ/ヤマモクレン
開花:4月上旬
花色:白
成長:やや遅い
耐暑:強い
耐寒:強い
移植:根が荒く、やや難しい
用途:花木/シンボルツリー/公園
記念樹:「合格祝い」「豊作・大漁祈願」「出版記念」に向いています。コブシは、「握りこぶし」を意味し、「幸せをつかむ」という縁起の良い木とされています。詳しくはこちらから
花言葉:「友情」「友愛」「歓迎」
コブシとハクモクレンの見分け方
コブシとハクモクレンが似ている理由は、コブシとハクモクレンは同じモクレン科モクレン属に属する花だからです、簡単に言うとコブシもハクモクレンもモクレンという花の仲間だからです。
【コブシとハクモクレンの見分け方】
①花の形
コブシの花の形は花が完全に開花していて、ハクモクレンの花の形はチューリップのように半開きになっています、花が完全に開花しているか半開きになっているかという違いがあります。
②花の向き
コブシの花は横向きに花が咲くのに対して、ハクモクレンの花は花が上の方向へ向いて咲くおが特徴です。花の咲く向きが上向きか、横向きかという違いがあります。
③花びらの厚み
コブシとハクモクレンの花びらの厚さを比べてみるとコブシの花びらは薄く繊細な印象に対してハクモクレンの花びらは少し厚く力強い印象です。
④花びらの枚数
コブシとハクモクレンで花びらの枚数に違いがあり、コブシの花びらは6枚なのに対してハクモクレンの花びらは9枚となっています。見た目はコブシの花は6枚なのが開花しているので分かりやすいですが、ハクモクレンは花が半開きなので分かりにくいです。
【コブシの花】
【ハクモクレンの花】

コブシの剪定
コブシはとても強い木です。樹木でいう成長期の8月~10月でなければ、しっかり剪定しても剪定が原因で枯れることはほとんどありません。
コブシの特徴でもある花をしっかり咲かせたい、でもあまり大きくなりすぎて枝先まで届かなくなるまで大きくしたくない、そんな場合は剪定がやはり必要になります。そこでポイントは剪定をする時期と、どの枝を剪定するかになります。まずは時期ですが、コブシの開花は4月でその後、花芽が出来てはっきり花芽が確認できるのが7月ごろです、これで花芽を残して剪定することが出来るようになりますが、最初に書いた通り8月~10月に剪定してしまうと枯れる可能性もあるためおすすめ出来ません。そこで剪定のおすすめ時期は花芽と葉芽の区別がしっかりできる葉っぱが落ちた11月~3月(多少地域差はあります)までの冬期がコブシの一般的な剪定時期です。次にどの枝を剪定するかですが花芽を残して剪定するんですが、花芽は葉芽に比べると少し膨らみが大きく枝先についています。その花芽を残しながらおもに込み合った枝を間引くようにして剪定していく方法となります。枝が込み合っていると、風通しが悪く病害虫が発生する原因につながってしまうかもしれません。
剪定には強剪定と弱剪定があり、強剪定は太い枝を切り取り、樹木の形を大きく整えるような剪定方法です。反対に弱剪定は太い枝を切り取るような剪定は行わず、おかしな方向に伸びている細かな枝を切り取る剪定方法のことをいいます。コブシを強剪定で強く切ってしまうとコブシの生命力が強いために、たくさんの枝が生え、形が乱れてしまうことがあります。一気に強剪定するのではなく、毎年定期的に剪定したり、不要な方向に伸びるまえに剪定する弱剪定のほうが良いです。
また、コブシは上側に育ちやすく10m以上に育つような大きな木になるので育てている場所によっては周囲の日当たりを遮ってしてしまうことがあります。しかし、下向きの枝を適度に残しておくことで外側に向くため、高くなりすぎず、花がたくさんつきます。
コブシの栽培環境
大きく育つため、十分に広い場所が必要です。良好に生育させて花を咲かせるためには、日当たりのよい場所に植えつけます。腐植質に富み、水はけのよい土壌が適しています。コブシは根が粗く、細根が少ないので、成木の移植は困難です。将来の大きさを考えて、植え場所を選びましょう。
大きく育つため、鉢植えでの栽培には向きません。
植えつけ後、しばらくの間は乾いたら与えますが、その後は必要ありません。
若木の場合は、成長期の5月、充実期の9月中旬から下旬、休眠期の1月に、緩効性化成肥料や固形の油かすを施します。9月はチッ素分の少ないものを施してください。成木の場合は、5月と1月に施します。
コブシの害虫
コブシは比較的病害虫は少ないほうですが、幹や葉にカイガラムシが発生することがあります。カイガラムシは5月から8月にかけて活動し、排泄物によって葉の上面が黒くなるすす病の原因になる害虫です。寒い時期は貝殻をかぶって越冬するのでマシン油などを噴霧することで窒息死させます。
発生してしまうと生育期は薬害がでる可能性があるので気温が低く休眠期である1月から2月に散布をおこないます。春先にもしも発生してしまったら、歯ブラシなどで削ることで対策可能です。また、3月から11月まではワタアブラムシが葉について、吸汁することもありますが被害が大きくなる事は稀です。
まとめ
花芽を残したり高くなりすぎるのを抑える剪定は少々難易度が高いものです。また、慣れていない方がすれば時間もかかってしまうでしょう。
もしご自身での剪定作業に取り組むことが難しいと感じる作業や、時間がかかったり面倒だと感じてしまったりする作業は、プロの剪定業者に依頼するのも上手にコブシを育て花を咲かせるコツです。
自分でできることは自分でおこない、できないことだけを任せる。このようにして、賢くコブシを育てましょう。
作業が難しい場合は、庭のプロ集団『庭.pro』までご相談ください。
綺麗な庭で皆様の暮らしが豊かになれば幸いです。
2024年1月31日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎








